コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■島根県立美術館:柳宗理デザイン 美との対話

島根県宍道湖のほとりにある島根県立美術館では、2020年3月23日(月)まで、「柳宗理デザイン 美との対話」が開催されています。日本民藝館の館長をつとめた柳宗理の、多岐にわたる仕事を、インターネットミュージアムでレポートしました。

島根県立美術館「柳宗理デザイン 美との対話」 | インターネットミュージアム

以下、展覧会の補足情報や、島根県立美術館の見どころなど紹介します。

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島根県立美術館は、観覧券がなくても楽しめるスポットがいっぱいです。 

■座ってみよう

ビーフロアには、柳宗理による椅子が展示されています。これらは実際に座って体験きます。座り心地を確かめてみましょう。

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こちらは、代表作のバタフライチェア 曲線が優美

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一体成型のエレファントスツール 

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お気に入りはどれですか?

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実際に購入ができるものばかりです。 

 

 

■使ってみよう

レストランで提供されているデザート、おぼれバニラ。柳宗理ディレクションした飯碗と、ティースプーンでいただけます。

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おぼれバニラ・・・・ バニラアイスにエスプレッソ アフォガードみたいなものです。

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カフェオレボールにもなりそうな、飯碗。

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 Aランチ スープとサラダ

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Aランチ 主菜 肉

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付け合わせの野菜は焼き野菜なので、見栄えがしませんが、野菜のうまみがしっかりあっておいしかったです。

 

コーヒー&パン

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パンにつける透明なオイルは、ひまわり油 さっぱりしてとてもおいしい。 

 

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入口のメニューボード

 

レストランからの眺め。食事中は、晴れたり曇ったり・・・・

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ところが、食事を終えてしばらくしたら、こんな状況に 

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天候の様変わりに驚かされました 

 

ミュージアムショップ

図録や柳宗理関連図書など扱っています。

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本展限定商品や、カトラリーなどが扱われています。
おぼれバニラの飯碗やスプーンも購入できます。
 

 

■アートライブラリー

中2階のアートライブラリーも自由に利用ができます。

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2日目の夕方にも、こちらに訪れました。ライブラリーをうろうろしていたら、東博の立派な皮張りの美術書が目にとまりました。手にして書架台の上にのせてひろげて眺めていました。皮の重厚な感触が伝わってきます。中世ヨーロッパの豪華皮製本をすっきりシンプルにし、ロゴマークをつけた感じ。昔はこんな装丁の本がで作られていたのだなぁと思って眺めていました。

 

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最終日、企画展「柳宗理のデザイン」に訪れました。展示内で、宗理がデザインしたものだと知り、びっくり!赤の囲のあたりに常備されています。

 

中2階から臨む宍道湖の景色も、見どころです。この日は、一変して、雪景色となりました。 

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島根県立美術館と夕日

3泊4日の松江、出雲の旅。この間、目まぐるしく変わる出雲のお天気を紹介。

〇1日目・・・雲のない晴れた日の夕日

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↑ 雲のない夕暮れは初めてです。

 

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↑  美術館の回りには雪が残っていました

 

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↑ 美術館のガラスに夕日が反射しています  

 

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↑ 美術館前の岸公園の彫刻と夕日を見る人々
 

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↑ 日没の前 周囲をオレンジに染め、雲をはっきり浮かび上がらせます。

 

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↑ 嫁ヶ島の先に、沈みゆく夕日  

 

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↑ 日没後、水平線にそってオレンジの帯を伸ばします。オレンジの帯は、透明感のある明るいブルーへと変化。さらに天に向かうにつれ、階調を濃くして濃紺に。浮世絵の空のグラデーションのようです。

 

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↑ この日は、湖も空と同じオレンジ~ブルーに段階的に変化していました。 何度となく海沈む夕日を見てきましたが、水がこのような色になるのを見たのは初めてです。よく見ると波が穏やかで静かです。この日は、風がないため、海が空の色を映し出す鏡の役割をして、この光景が見えたようです。

 

帰路は、嫁ヶ島からレイクラインバスで松江へ。途中、宍道湖大橋を渡った先の「須衛都久神社前」で下車して、宍道湖大橋をてくてく歩いて渡ることを思いつきました。

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夜の神社は霊験あらたか・・・・ 光や空が神秘的。

神社からは、来た道を戻るかたちで、また美術館に向かって宍道湖大橋を歩いて渡ります。 

宍道湖大橋からの眺めも夕日のビューポイントと聞いていましたが、バスに乗ってしまい橋を歩いて渡る機会がなかなかありませんでした。途中、東屋のようなビュースポットもありました。

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↑ 空には星がまたたき、闇のブルーに包まれました。
沈んだあとの夕日のオレンジ色が赤紫に変わり、かすかに空を染めています。淡いブルーの帯は狭くなり、宇宙につながる濃紺の空が広がります。

 

〇2日目・・・・直線的に伸びる斑雲 

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↑ 斑雲が直線的で空を切り裂いているようです

 

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↑ 美術館の光が薄暮に浮かびます 

 

〇4日目・・・・めまぐるしく変わる天気

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↑ 風が強く宍道湖はこんなにも荒れています

 

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↑ 午後になると一気に雪景色 

 

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↑ モノクロームの世界の野外彫刻 

 

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↑ 雪の中を走る宍道湖うさぎ

 

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↑ 雪は雨に変わり解かしてしまいました

 

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↑ 雲の切れ間から光が差し込みます

 

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↑ 雲間からの光が路面の水に反射して輝きます

 

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↑ またまた風がふきつけ、めまぐるしく天候の変わる一日でした

 

■展覧会を見て

柳宗理は語ります。
これからの芸術は「人間生活のためにある。社会性を持たねばならない」非芸術的と思われていた科学技術を積極的に肯定し新しい美が生まれると。

用即美、機能美・・・
装飾のないとこに真の装飾があります。日本の伝統的な生活環境や日本独自の生活用具、民藝の中にこそ人の原点があり、人間の根源的なものがあると。

 

section4には、世界を旅して集めてきた暮らしの写真が展示されています。その中に、化学実験用の蒸発皿を利用した、砂糖入れの活用が紹介されていました。

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引用:FE-35 磁製蒸発皿 1個 アズワン 【通販モノタロウ】 19955338

 

デザインの神様と言われるイームズのお宅でティータイムに砂糖入れとして提供されており、日常生活に見事に転用されていたそうです。

蒸発皿のフォルムは、実験で使いやすい形を追求し、浄化された究極の形です。これを、アノニマス・デザイン(自然に生まれた無意識の美)というそう。

機能を徹底的に追及した先に、究極のデザインが存在しているようです。宗理は、機械化された科学を受け入れる一方で、デザイン一本のラインにこだわり、手でラインをひき続け、そこから、用の美は生まれるようです。

 世界を旅してその土地に根差した暮らしをカメラに収めた宗理。さまざまなものを見て感じ、考えることが、創作の大きな活力源にしました。

 

■旅を通して (2020.03.26)

宗理も八雲も世界を旅し、そこの暮らしに目を向けながら、日本の美を世界に発信しました。
現代において、よいもの、美しいものとはどういうものなのか、雑誌『民藝』の連載で宗理は示しています。

八雲も、旅を通して、日本の美しさ、そして暮らしに目を向け、理解を示しました。そんな八雲と宗理の父、宗悦は、八雲を日本人よりも日本を愛した芸術家であると認めています。そして、民藝の提唱において、八雲のオープンマインドと共鳴していたようです。

心を開き、様々なものを見る。旅をしながら・・・・ そこで、見て感じたり考えたりすることの大切さを伝えてくれました。

 

■旅人目線でみた松江、山陰を見る

宍道湖のほとりにも、この土地ならでは暮らしを感じさせる景色が点在しています。松江や出雲を旅して、何かを感じた景色を集めてみました。

美術館前の彫刻も、この土地の暮らしを表現しています。

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島根県出身の彫刻家澄川 喜一による《風門》
柱の先端は、しめ縄に下がる紙、四手(しで)を表し、神々の国出雲をイメージさせます。その間にかかる石橋を渡ると、空の高さやそこを通りぬける風を感じられる作品になっています。(この橋、通っていいこと知りませんでした)

 

宍道湖から中海につながる大橋川には、いくつもの橋がかかっています。宍道湖一帯の特有な地形を橋がつなぎ、人の往来を助けます。(一方、連絡ルートが限られるため、夕方のバスは混雑ぎみ。大きな川が流れている町に見られる特徴です。それによって歩くという選択の機会が増え、次第に土地勘もでてきました。行程もその場で急遽変更しアレンジできるようになってきました。バリエーションも増えてきました。)

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湖面に映る街灯り、それを橋上から臨むアングルは新鮮。

 

 急遽、循環バスを降りて神社へ。出雲大社みたいなお社に遭遇。

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宍道湖大橋を渡るためには大通りの地下道をくぐってから、外に上がるという、特殊な構造に遭遇。 

 

夕日を見るために作られた特設ステージ。

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夕日を見るために、ここまで充実した場所を提供をしている所は初めて。専用駐車場まで備えられています。

  

作品を見るだけなく体感し、自然や暮らしからもいろいろな刺激をもらえます。五感を駆使して、美しい造形のヒントを、一杯詰め込めそうな展覧会です。

 

【追記】(2020.03.09)つながる展覧会

〇澄川 喜一「そりとむくり」 横浜美術館 2020.5.24まで

澄川 喜一氏が、島根県ご出身の方だったことを知りました。人と場所も、どこかで何等かの接点があってつながっています。

ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」

2020.07.03~10.11

AFTERGLOW残光 

私たちが日常生活の中で知らず知らずのうちに触れていた、宇宙誕生の瞬間に発せられた光の破片を指すものとして選ばれた言葉

アフターグロウは、光の明るみの後、しかし暗くなる前にやってきます。それは光のインターバルであり、輝く期待であり、ぼんやり光る流れであり、オントシラの充満した流れでもあります。それはまた、存在の茂みと生成のエピソ
ードの間にある間質性のエネルギーです。

引用:ヨコハマトリエンナーレ2020プレイベントエピソード00「ソースの共有」コメント全文テキスト

AFTERGLOW残光 とは、日没前のまだ明るさのある時から、暗闇が訪れる前、光が変化し輝く時間と考えられます。

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(左)光の明るみのあと・・・・
(右)しかし暗くなる前にやってくる

ヨコハマトリエンナーレのメインビジュアルの光の構成の色が、宍道湖で見た夕日の色と同じでした。雲のない夕日は今回が初めてで、遮られるものがなく宇宙とのつながりも感じさせる空だったので、ぞくっとしました。

 

■関連記事

【企画展】

■島根県立美術館:黄昏の絵画たち 近代絵画に描かれた夕日・夕景 
■島根県立美術館:柳宗理デザイン 美との対話 ←ここ

 

島根県立美術館

■島根県立美術館:夕日の見える美術館の見どころ(無料開放を中心に) 
■島根県立美術館:アクセス おすすめは徒歩&バス便利用時の注意 
■島根県立美術館:野外彫刻(岸公園)
■島根県立美術館:野外彫刻 『WAVING FIGURE』 建畑覚造 

 

宍道湖の夕日】

■宍道湖の夕日を見るコツは? 3回の島根旅行からわかったこと 
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