三菱を創業し、初代社長をつとめた岩崎彌太郎に続き、彌之助、久彌、小彌太と4代にわたる社長らが集めた文化財。静嘉堂と東洋文庫に収蔵された国宝12点、重要文化財31点等、貴重な作品群100点余りを展示。三菱創業150周年記念の展覧会です。
ブロガー内覧にて *写真は許可の元撮影
■国宝の展示について
国宝の12点の内訳は次のとおり。
それぞれの展示期間は、全期間のものもあれば、前期のみ、後期のみのものもあります。巻物など連続ものは、巻替えや場面替えもあるので、お目当てがある場合は、展示期間を要チェック。
*修正:《太刀 銘 包永》 全期⇒前期 (2021.7.12)
*8点 ⇒ 7点
国宝は前期10点、後期7点(*)の展示です。国宝の点数でいうと、前期が数点多く見ることができます。
■作品みどころガイドや国宝年表が便利
作品の見どころがpdfになっているので参考になります。
⇒三菱の至宝展 みどころガイド
また下記の見どころページの中央に「国宝の年表」が掲載されています。静嘉堂文庫と東洋文庫の国宝と同時代のできごとが併記されており、見やすい年表になっています。
■展示構成
第1章 三菱の創業と発展 ―岩崎家4代の肖像
岩崎家4代の肖像をパネルで紹介。初代彌太郎座像。
彌之助 、 久彌、 小彌太は 海外留学を経験しており、欧米の実業家たちのフィランソロフィー (社会貢献) を学 んだことが文化財保護、芸術家支援、 学術振興といった文化貢献に力を入れる要因となったと考えられています。
収集した茶道具
弥之助は、茶道具の収集も手掛けました。早い例、唐物茶入 《付藻茄子 》
第2章 彌之助― 静嘉堂の創設
幕末下級武士の家に生まれ漢学を学び、米国留学。武家の家に育ち漢学を学んだことは、その後のコレクション形成に影響を与え、刀の収集へと繋がっていったとされます。
1876 (明治9) 年の廃刀令 により刀剣収集から始まりました。
武家文化の基層として漢学を学んでいたことは、中国絵画や漢籍の収集へ・・・
明治時代前半、文明開化による急激な変化がおこりました。既存文化の破壊や流出が進みます。彌之助は廃仏毀釈で衰えた寺院への援助を行い、 その返礼の品も 収集に加わりました。
古美術の収集や保護、内国勧業博覧会出品作への援助も行いました。
(左)橋本雅邦 《龍虎図屏風》(右)国宝 俵屋宗達 源氏物語関屋澪標図屏風
廃仏毀釈による海外流出を防ぐことにも貢献。
明治時代、 彌之助が入手した「太田切」。
『和漢朗詠集』を、華麗な唐紙に、 金銀泥による大和絵風の下絵を加え、 漢詩 と和歌を対照的な書風で書写した巻子の一部。掛川藩主太田資愛が旧蔵したと考えられることから大田切と呼ばれます。
国宝 和漢朗詠抄 大田切
黒田清輝《裸体婦人像》
原撫松 《岩崎彌之助像》 同時代作家の支援を行いました。
第3章 久彌―古典籍愛好から学術貢献へ
1924 (大正13) 年、 財団法人東洋文庫が発足 。 幅広い視点で東アジアを中心とする古典籍から絵画まで多岐にわたり収集。 所蔵は現在約100万冊、 アジア最大級の東洋学術研究図書館となり国際的に高い評価を得ています。
〇世界の視覚化 古地図コレクション
〇信仰に宿る美
八千頌般若經
手前:聖書 奥:コーラン
〇博物学が生んだ芸術
(左)日本動物誌 1833-50年/刊、 ライデン 4冊 刊本 石版筆彩
約820種の動物が4000点 以上の図版
(右)シーボルト『日本植物誌』1835-70年
図版は全部で150点、 石版単色摺り。上から手で彩色
アジアの鳥類
第4章 小彌太 ―静嘉堂の拡充
表千家12代の惺斎宗匠や表千家流久田家11代の宗也に師事。茶道具への関心を深めます。
1587年 豊臣秀吉 が北野天満宮で開催した「北野大茶湯」を350年後の昭和に再現。その大茶会に用いられた茶道具の名品を展示。
大正から昭和にかけ、 小彌太のみならず中国陶磁の収集が行われました。 これは大陸における開発で発掘が進んだこと、 清朝崩壊により文化財が 流出したことが影響しています。
陶磁器の調査に携わった 奥田誠一との交流から東洋陶磁への関心を深め、 唐三彩・宋磁・呉州赤絵など中国陶磁の系統的な収集を行いました。
そしてなんといっても三菱の至宝の中の至宝ともいえる曜変天目茶碗。数ある国宝の中で、特別室があつらえられています。
徳川将軍家より3代将軍家光の乳母・春日局の手を経て、淀藩主稲葉家に伝来。小彌太の手によって静嘉堂へ。そして私たちの目の前にも・・・
曜変天目についてはまた改めて・・・・ (続く)
■国宝と再会して
静嘉堂文庫美術館の国宝は「旅立ちの美術」で2021年6月13日(日)まで展示されていました。同じ国宝ながら、ところ変われば・・・・でこんなにも違う表情に出会えることに驚きました。
美術品は所蔵館で・・・と言われますが、作品が持つ別の顔を知り、奥行が広がりました。また、いつもの三菱一号館美術館の空気までもガラリと変えてしまう様も新鮮でした。
国宝という最高峰の作品が単体でなく、まとまって展示されたことが、歴史ある建物に静嘉堂カラーのベールで包み込んだようでした。東洋文庫には訪れたことがないためわかりませんでしたが、次々にページをめくっていくような効果を加えていたのではないでしょうか?
なぜか、古いのに新しい・・・ 新鮮さ感じたという不思議な感覚。展示ケースや照明の影響でしょうか?
■展覧会概要
会 期:2021年6月30日~9月12日
休館日:月曜休館
開館時間:10:00~18:00
会場:三菱一号館美術館