コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■宍道湖の夕日を見るコツは? あきらめない チャンスを逃さない

 夕日百選に選ばれた宍道湖。多くの人は訪れたら、きれいな夕日を見ることができることを期待しているはず。お天気に恵まれ、頻繁に見ることができるからこそ、百選にも選ばれたのだと思っていました。実は、晴れることが少ない地域だと判明。夕日を見るコツなどはあるのでしょうか?

■島根県立美術館:夕日の見える美術館 アクセス&見どころ

上記より独立させました。

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■夕日で有名な宍道湖、しかし夕日はなかなか見えない?!

〇夕日の名所は、晴れが多い?の思い込み

「日本の夕陽百選」に選ばれた宍道湖の夕日

美しい夕日の写真もたくさん、目にします。行けば、夕日を見ることができると思ってしまいがち。しかし天候は、運まかせ。晴れる日もあれば、雨になることも・・・・

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「夕景」を見ることはできましたが、「夕日」を見ることはできませんでした。夕日と夕景の違いを、この時、認識しました。

 

〇3日滞在すれば、1日ぐらいは晴れるはず

始めて島根を訪れたのは8月末、2泊3日の予定で、出雲、松江の旅を計画。さすがに3日間滞在すれば、いずれかで夕日を見ることはできるものと思っていました。

旅行日程は、流動的に組んでおき、いつでも、お天気に合わせて変更できるようにしていました。島根県立美術館は、一番、お天気のよい日にあてる計画でした。それでも、「夕日」を見ることができず、見れたのは「夕景」で、最後の1日だけでした。

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美しい夕空ですが、夕日はお目見えせず・・・ 

 

10月に再訪した時は、3泊4日でした。この時も、最終日にかろうじて空がうっすら赤味を帯びた「夕景」が見えたという感じです。 

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旅行記から見える山陰のめまぐるしい天気

出雲や松江など山陰地方の天候がいかに変化しやすいのか、以下、3回の旅行を振り変えると、晴れることの方が少ないことが見えてきます。これらの実体験をもとに、山陰の気候の特徴を理解すると、夕日は見えたらラッキーと考えていた方がよいことが見えてきます。

確かに1日で天候が目まぐるしく変化していました。出雲地方の夕日鑑賞は、雨が降ったからと言ってあきらめない。また晴れているからと安心もしないということがポイントです。

 

以下、旅行記を兼ねつつ、島根のお天気の変化を紹介します。(旅行記録も兼ねているので、お天気意外の部分も含まれるため、助長しておりますが悪しからず)

下記の旅行記部分を移動しました。

■1回目 島根旅行:夏(2019年8月)  ⇒移動

■2回目 島根旅行:秋(2019年10月末) ⇒移動

■3回目 島根旅行:冬(2020年2月)  ⇒移動

▼こちらに移動

 

 

 

合計11日間、島根の旅をしましたが、始めて雲のない空の夕日と遭遇しました。また、マジックアワーの魅惑的なカラーグラデーションにも見ることができ、海も同じ色に染まっていました。 

そうかと思えば、野外彫刻が雪に覆われ、荒れる宍道湖にも遭遇

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目まぐるしく変わるお天気、雨、曇り、雪、晴れ間、すべてを体験しました。

関連:■島根県立美術館と夕日・・・・3回目の島根のお天気

 

 

■夕日・夕景鑑賞はあきらめない チャンスをみつける

〇雨でも、夕日を求めて

旅程の第一日目から、台風の影響で、土砂降りの雨でした。全く窓の外は見えません。

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1日目は、出雲大社まで行き、夕日スポットの日御碕まで足を延ばす予定でした。

どしゃぶりの雨の中、あえて夕日を見に行く!こんな天候の時に、わざわざ好き好んで行く人はまずいないはず。だからこそ行く意味があると言い聞かせて・・・ 

そういう時だからこそ、普段、見ることができない何かに遭遇ができることもあります。雲が切れれば・・・・ 風がひと吹きすれば・・・・ 太陽は顔をのぞかせる可能性は十分あります。

そんなケースに、幾度か遭遇しました。その時の選択は感慨もひとしおです。そんな経験があって、あえて行こうと思えるのでした。

 

〇わずかな可能性に期待

私は、運が強いと思い込む。きっと、行けば何かに遭遇できる。そんな期待と暗示をかけて、訪れるのもコツかなと思っています。残念ながら、見えないこともありますが、他の部分でプラスに転じればいいかなと・・・・

夕日の鑑賞は、あきらめない。ころがっているチャンスを見つけ出すことが大事。

 

〇雨の楽しみ方

雨も多いことがわかった出雲地方。そんな時の楽しみ方の提案もされています。

松江観光協会 - モデルコース|もっと知りたいコアな松江|松江散策モデルコース|縁雫・縁結びコース (松江に降る雨は「縁雫」)

縁雫を巡る旅(開催期間:平成31年4月1日(月)〜令和2年3月31日(火)201)

 

 

■夕日、夕景を見るコツ

〇日出、日没の前後、30分はマジックアワー

日没時間というのは、太陽が地平線に完全に隠れる時間のこと。その、前後の30分は、光の色彩変化が加わりとても素敵な光景に遭遇できると言われています。

 

参考

www.youtube.com

 

〇日没時間 地形や雲の影響によるずれ

そこで、日没時間を把握し、それに合わせて心づもりをしていても、山の稜線によって、結構、早く沈んでしまうことがあります。下記の場合など、山の高さがあるため、日没時間よりも、結構早い、日没でした。

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大津プリンスから琵琶湖の夕日  

また、雲が厚く垂れこめている時も、雲の部分が地平線となって沈んでいきます。日没時間を調べておいても、場所の地形や雲の状態で、日の入り時間が変わることを考慮しておく必要があります。

 

〇日没時間よりも早い時間に見える天使の梯子

天使の梯子と言われる光景は、日没時間よりも、早い時間に見られます。

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光が上から雲間通して差し込む必要があるため。 

 

〇日の出後に見える光景

日の出のシーンも、かなり太陽が上がってからでも見ることができます。雲の状態によって、鏡餅のような太陽を見ることができました。

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山の高さ+雲があり、日の出の時間から遅くなりました。日の出時間に、寝過ごしてもこんな光景を見ることができます。

 

〇雲に覆われていてもきれいな夕景は見える

雲が出ていると夕日は残念・・・と思ってしまいますが、雲の状態によって、様々な色や形の夕景に遭遇できます。

「夕日」は見えなくても、きれいな夕景に遭遇できます。

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*雲が立ち込めていても切れ目があればきれいな夕景に

厚く立ち込めていたとしても、どこかに切れ目があれば、素敵な夕景に・・・・ ふっと風が吹いても切れ目はできます。

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〇雲のない空よりも、雲があった方が変化が面白い

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〇地平線に接して沈むまで約5分

これまで定点観察してきて、得られた時間。沈み出したら早い。等間隔に時間を追う時は、こまめに。

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太陽が見えていなくても、光の反射で思わぬ造形を見せてくれる。

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あきらめない チャンスはある の日の出

www.youtube.com

わずかな雲の切れ間。日の出の時間を過ぎてからも見ることができる 。あきらめなければ、このような日の出と遭遇できます。

 

■夕日が見れなくても・・・・

2度目に島根に訪れたのは、開館20周年を記念の企画展「黄昏の絵画たち 近代絵画に描かれた夕日・夕景」(会期:2019年9月4日(水) ~ 11月4日(月・振休)すでに終了)を見るためでした。

その中の一枚の絵に、心がつかまれました。

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《雨の夕》山脇信徳

これも、夕景なんだ‥‥ 雨の降る夕方も夕景・・・・ 「夕日」と「夕景」という2つの概念で展示されている企画でした。

これまで、夕日や朝日を見ながら、雲の中に隠れている太陽を見ようとしてきました。「夕景」も「夕日」として捉えていたことに気づきました。しかしこのような雨の「夕景」の中に、太陽の存在を意識することはありませんでした。

今年は、宍道湖に2回、2泊と3泊で訪れました。その間、夕景らしい夕景を見たのは1日だけでした。夕日が定評のこの地域ですが、夕日を見ることは、実は難しいことだと感じ始めていたところです。

一方で、雨や曇りだったとしもて、一瞬の間隙で顔を出す夕日もある。それを見逃さない。あきらめない。と思っていました。

 

ところが・・・・ 今回は、ザーザー降りの雨の絵画。それを「夕景」として展示された一枚に、これまで抱いていた、夕日、夕景という概念を根底から覆されました。

太陽の存在などみじんも感じられない雨の日の夕方。しかしその背後には、いつもと同じ太陽が存在していることに気づかせてくれました。

見えない太陽を見る。描かれていないものを見る。絵の背景に隠れているものを見つけ出す。そんなことを教えてくれた一枚でした。

 

土砂降りの雨中でも、夕日を求めて日御碕に行こうとしました。もしかしたら、見えない太陽の存在を感覚的にとらえていたのかも・・・・  

光が雲の間からお出ましにならなくても、その裏で照らしている。見えなくても、心で感じる夕日もあること。夕日という捉え方が大きく変わった出来事でした。

そして神話の国、出雲。日本神話の主神、天照大御神の天岩戸の話とも重なりました。時に機嫌を損ねて雲隠れすることもありますが、切望されておでましになる。

 

地平線の下に太陽が沈んだあとは、また別の光が浮かびあがります。

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■付記:見えない幽事を支配(追記:2019.12.30)

〇なぜ神は、出雲大社に集まるのか

神無月、神は出雲大社に集結します。神道最高神天照大御神を祀る伊勢神宮のはず。(⇒〇出雲大社と伊勢神宮 日本の神話

神の相関図や、神話の概略を動画で見て少しずつわかってきましたが、なぜ出雲なのか・・・ そこが理解できません。

 

古事記の「国譲り」の話に由来がある?(所説あり)

今回やっと、わかりました。

大国主大神天照大神に「国譲り」をなさったとき、「私の治めていますこの現世(うつしよ)の政事(まつりごと)は、皇孫(すめみま)あなたがお治めください。これからは、私は隠退して幽(かく)れたる神事を治めましょう」と申された記録があります。

引用:なぜ神様は出雲へ? 出雲観光ガイド 神有月

 

当初「國譲り」の意味がわかっていませんでした。神話の全体が見えて理解に至りました。

(今も、なぜ天照大御神大国主命から出雲を奪おうとしたのかイマイチ理由がわかりません。が、神話は理屈や辻褄が合わない話も多いということもわかってきました)

 

この「幽れたる神事」とは、目には見えない縁を結ぶことであり、それを治めるということはその「幽れたる神事」について全国から神々をお迎えして会議をなさるのだという信仰がうまれたと考えられます。

出雲大社が縁結びの神様と言われる所以もわかりました。

 

県立古代出雲歴史博物館の学芸企画課長、品川知彦氏によると、出雲に集まるのは諸説あり、神社によって異なるそう。(参考:なぜ10月? “神在月”に出雲に神々が集まる理由は… (3/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

その中の一つの説に、納得しました。

「たとえば出雲大社の祭神の大国主神(おおくにぬしのかみ)が目に見えない幽事(かくりごと)を支配するため、その下知を受けに出雲大社に集まるという説です」

 

〇見えないものが見えてくる土地柄

出雲を訪れた人に共通するのは、「神さまを身近に感じる」という感覚だそう。目に見えないものに守られている感じを受けると・・・・

松江を散策していてもよく耳ににしたのは「出雲の神様のおかげ・・・・」という言葉でした。私の中で、松江は出雲ではないと思っていたので、最初は意外に感じていました。

しかし、神話や土地柄、そこに根付いている口承などを知ると、理解できるようになってきました。

 

そして、出雲地方の天候と夕日のことをまとめていたら、見えない夕日が、天照大御神と重なりました。見えていないけども、見えているものの存在を意識させられました。

 

それは、五十数代続く九千(まんくせん)神社の錦田剛志宮司の言葉にも重なります。

「日本人は本来、目に見える世界と目に見えない世界のバランスの中で生きてきたはず。だけど、都会での目に見える生活の中でバランスを崩してきました。出雲は、神話では黄泉の国への入り口。つまり、暗闇を感じることができます。そのため、出雲に来るとそのバランスを取り戻すことができるのではないでしょうか」

出雲は、黄泉の国の入り口で、暗闇を感じることができる。まさに、夕日を求めながら、雨で見えない暗闇と同じような感覚がそこにはありました。見えない太陽を思い浮かべることに意識的になっているのを感じていました。

 

そして、八百万の神々が、出雲に集まるのかわかりました。

現世の政事は「天照大御神」が・・・・
幽れたる神事は「大国主命」が・・・・

目に見えない様々なことを司っていたのが出雲大社大国主命で、八百万の神とともに、相談をしながら、いろいろなものを見えない糸で結んでいる。

 

最後に「目に見えないものを見る」ということを決定づけてくれたのが、今回の展覧会であり、宍道湖、出雲地方の夕日でした。このご縁、去年の神在月の会議で、結びつけておいてくれたのかもしれません。

 

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宍道湖の夕日

■宍道湖周辺の夕日スポット 
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■島根旅行記:松江・出雲 3回訪れて見えた目まぐるしく変わる山陰のお天気

 

島根県立美術館

■島根県立美術館:夕日の見える美術館の見どころ(無料開放を中心に) 
■島根県立美術館:アクセス おすすめは徒歩&バス便利用時の注意
■島根県立美術館:野外彫刻(岸公園)
■島根県立美術館:野外彫刻 『WAVING FIGURE』 建畑覚造 
■島根県立美術館:宍道湖うさぎ 噂を追いかけてみる

 

【企画展】

■島根県立美術館:黄昏の絵画たち 近代絵画に描かれた夕日・夕景
■島根県立美術館:柳宗理デザイン 美との対話