《紅白梅図屏風》には真っ黒バージョン《月下紅白梅図》があります。その存在を知ったのは、2015年《紅白梅図屏風》が外遊する前に、MOA美術館で《燕子花屏風》とともに展示されていた写真で知りました。いったいこれば何なんだろう・・・その後、対面することなく今に至りました。やっとご対面。その不思議な世界に魅了されました。
■一体、これは何?
しぶい・・・・ 《紅白梅図屏風》に似せた、なんちゃってかも・・・ なんて失礼なことを思っていました。なんだかよくわからないけどいいなぁ・・・・ あのきらびやさかよりこっちの方が好きかも・・・
《月下紅白梅図》
▼これは、いったいどうやって制作されたのでしょうか?
↑ 説明には、一切、何も作品情報がありません。
■これって描いたの?
杉本氏は、とうとう日本画にまで手を出しちゃったのか・・・・? 出会うたびに全く違う新なジャンルを開拓され、チャレンジをされている方・・・ つかみどころがなくて不思議・・・ ご自身の殻を破って、どこに行くのかわかりません。そんなイメージができつつありました。最初、私がその名を知った時は、写真家だたはずなのに、いつのまにか建築にまでかかわり・・・ かと思ったら今度は絵まで描いちゃうとは? どこまで才能ある人なんだ・・・ と思いながら、見ていました。ところが・・・・
▼右隻
左隻を見ながら・・・・
・箔を張ったあとがある・・・・
・こちらは、銀箔を使い、硫黄で硫化して全体を黒くしたのでしょうか?
・白の梅は・・・ 描いているのか?
・黒は墨で、白抜き? 外隈で描いているわけじゃないわよね。
・梅は、上書きしたみたいに見えるけど・・・・・
近づいてしげしげと見ながら右隻へ移動して、今度は・・・
流水をじっとみていました。
▼右隻
〇水紋が同じ
じっと見ながら、撮影をしていました。あれ? 何かにてる・・・・
この流水、上の階の《紅白梅図屏風》の水の文様と全く同じじゃない?
上の階で《紅白梅図屏風》の水紋の写真を拡大して撮影していました。なんだかほとんど同じ気がするんだけど・・・・ 撮影した写真を並べてみたら・・・
同じ場所を撮影しようと意識したわけではありません。偶然「撮影したい」と思った水紋の場所がほぼ同じだったのでした。
曲線や太さまで、ほぼ似てます。手書きでここまでの再現なんてできるものなのでしょうか?
〇梅も同じ
よくよく見たら、紅梅の枝ぶりも、一緒です!
ここまで完璧な模写ってできるものなのでしょうか?
そういえば、杉本氏は、光琳の《紅白梅図屏風》の「金に対して銀」を使った・・・とか言ってような・・・・ 写真家らしく「銀板」を使ったとか聞いたような記憶がよみがえってきました。
■デジタル撮影しプラチナ・パラジウム・プリント
監視の人に尋ねようと思ったら、学芸員らしき方がいらして、この絵は、白黒写真で撮影したものを、プラチナ原版にうつして拡大したものだと説明していただきました。
「紅白梅図」をデジタル撮影し、最新技術で原寸大に仕上げたプラチナ・パラジウム・プリントの作品という。「紅白梅図が夜の情景の中でどう見えるかに挑戦した」。昨年末の記者会見で杉本はこう話していた。金箔と銀箔(川の部分)による光琳の紅白梅を、プラチナで本歌取り。満月が川面に映り込んでいると想定し、水流をやや明るく輝かせている。
【美の扉】「燕子花と紅白梅 光琳アート 光琳と現代美術」 連綿と流れる琳派の美(3/5ページ) - 産経ニュース
プラチナの部分、聞き間違えたかもしれません。印画紙につかっているようです。
それにしてもこの作品、写真撮影したものだったんだ・・・・
どうりで似ているわけだ(笑)
〇写真のしくみ
銀板、プラチナ、ガラス・・・・ 銀板写真というのは、ある一定以上の人たちなら耳にしたことがあるかと思います。昔は、銀メッキをした銅板に、感光させて写真にしていた。その後、おなじみのネガポジがあって、デジタルに・・ プラチナはどこに使われているのでしょうか? 原版にあたるものかと理解していたのですが、原版ではなく、プリント紙ということのようです。
■琳派の私淑がここに
琳派作品を、写真に撮影して、同じサイズにして夜の《紅白梅図屏風》にしてしまう。現代版琳派の継承? 100年おきにおきている私淑の代表作となるのはどれだろう・・・・と思っていたのですが、私はこの作品を推したいと思いました。
遠目で離れて見ると、梅の花は暗黒の宇宙の中にきらめく星のようであり、流れる川は、天の川といったところでしょうか? 回りの照明をもっと落として、暗闇の中で見てみたい衝動にもかられます。
▼偶然、また同じ水流を撮影
作品を「写真撮影する」ということは、自分が何をみているか・・・ どのように見ているか・・・を知る手がかりになると言われた、キュレーターの方がいらっしゃいました。今回、まさに、昼の紅白梅と、夜の紅白梅、写真撮影された作品と同じ場所を、写真撮影していたという偶然が、おもしかったです。自分が何に着目しているか。そして、どう切り抜き方がほぼ同じだったとう偶然・・・・
■最後に解説
2015年に開催した「尾形光琳300年忌記念特別展 光琳アート 光琳と現代美術」のために、杉本博司氏が国宝「紅白梅図屏風」を撮影し、新たに制作した作品
MOA美術館 | MOA MUSEUM OF ART » リニューアル記念名品展 + 杉本博司「海景-ATAMI」
「紅白梅図が夜の情景の中でどう見えるかに挑戦した」
この作品、どこが所有しているのかなと思ったら、個人蔵とありりました。どんな方が購入されたのだろう・・・と思いを馳せていたら、ご本人が所有されているようです。
■関連
■MOA美術館:見どころ(個人的なおすすめなのであしからず)
2017-03-13 ■MOA美術館:《柳橋図屏風》 あの等伯も描いていた!
2017-03-12 ■MOA美術館:杉本博司 《海景-ATAMI》
■MOA美術館:《月下紅白梅図》 杉本博司 ←ここ
■MOA美術館:国宝 色絵藤文茶壺(常設)の新発見!? ←前
■杉本博司氏の出会い
〇2005年 森美術館 展覧会『時間の終わり』 日本初大きな展覧会
初期の代表作のひとつ「海景(かいけい)」シリーズ
この横で行われていた、『レオナルド・ダ・ヴィンチ展』 直筆ノート「レスター手稿」日本初公開へ 2005年09月15日(木)~11月13日(日)
なぜここで、立ち寄らなかったかを、あとになってずっと後悔。
〇2006年 ベネッセハウス 海景色
〇2012年 松江泰治展 世界・表層・時間 IZU PHOTO MUSEUM 坪庭 棺
〇2016年 ベネッセハウス パーク サイトスペシフィック・ワーク