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コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■MOA美術館:国宝《紅白梅図屏風》2年ごしの再会

年1回だけ、梅の時期に合わせて展示される尾形光琳紅白梅図屏風 国宝ゆえに公開は、限られています。所蔵はMOA美術館こちらの看板作品で、新しいパンフレットの表紙を飾っていて、門外不出とも言われています。ちなみに「MOA」は「モア」ではなく「エム・オー・エー」と読みます。また、《紅白梅図屏風》は「紅白うめず屏風」と思っていたら「紅白ばいず屏風」と読むことを今更ながら知りました。

 

 

 今回で、紅白梅図屏風を見るのは 4回目です。過去2回は、MOA美術館で、そして、2015年、琳派400年の記念の年、門外不出ともささやかれていた屏風が、根津美術館で展示されました。過去2回のMOAでは、音声ガイドを聞きながら鑑賞をしました。しかしさっぱりその価値がわかりませんでした。今年、もう一度、MOA美術館の音声ガイドを借りて、過去に聞いたものと同じかどうか確認してみました。

 

 

■音声ガイドの解説より

〇描かれているモチーフの解説&技法

左隻の白梅、右隻の紅梅を左右にまたがって画面中央を水流が流れています。

 

 (正面写真がなかったので、左右の合成です。迫力が伝わらないのが残念)

左の白梅の幹画面外に広がり、曲がりくねった左枝に点々と咲く花が描かれるのに対して、右の紅梅は幹から若い枝が伸びている様子が描写。長い歳月の中で複雑に曲がり、苔むした幹や枝の姿たらしこみという技法が使われています。

 

苔むした幹、たらしこみの技法で描かれた幹▼

 

     ▲

中央の川の水紋は銀箔を硫黄で硫化し黒色に変色して表現され、画面全体で実に重厚な装飾性を醸し出しています。

 

〇作者:尾形光琳について 

琳派の大成者とされる尾形光琳は、桃山時代に活躍した俵屋宗達に深く傾倒したというのはよく知られていますが、この作品でも紅白梅に水の流れや、画面の左右にモチーフを配する宗達からの作品がの影響が見られます。

 

俵屋宗達 《風神雷神図屏風

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画面の左右にモチーフ

 

尾形光琳 《紅白梅図屏風

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光琳の晩年に描いた江戸期の代表として国宝と認定

 

以上のような内容で、過去に聞いたものと同じように感じました。確認したところ、変わってはいないということでした。下記が作品解説です。

 

▼《紅白梅図屏風尾形光琳 解説

時代:江戸時代 18世紀

 

以前から、日本画において「装飾性」というキーワードが用いられており、どういうことなのか疑問に思っていました。言葉ではうまく表せないのですが、なんとなく感覚的につかめてきたかなぁ・・・という気はしてきています。

 

 

■《紅白梅図屏風》の解釈について

以上のこ解説を受けて、そこから何が読み取れるのか・・・・  それについての解説はありませんでした。今回、音声ガイドを借りて確認したかったのは、そこの部分だったのでした。

 

2015年の根津美術館で展示された《紅白梅図屏風》の音声ガイドでは、上記のような解説に加えて、これらの描かれたものから、何を読み取ることができるか・・・という解説もされていました。

 

 

根津美術館の音声ガイドの解説

根津美術館の音声ガイドも前半は、MOA美術館と同様の解説でした。しかし、一連の解説のあとに、次のような解釈がされているという説明があったのです。

 

たとえば、紅白の梅について

・白梅が光琳、紅梅が、パトロンの中村内蔵助を表しているという説

・両者の関係の間に「さん」という芸妓がいて、それを川で表現した三角関係を表している・・・

宗達風神雷神を模写し、そのオマージュ的として変換されたものという説

・風神、雷神の対比を紅白の梅で表しているとか・・・

・あるいは、梅は中国の詩人「?」が、梅の詩を読み、その梅の特徴を描いた

・あるいは、謡曲からきていて、紅梅は春の到来。白梅はさそがれの倒木を表している・・・

 

 

■《紅白梅図屏風》が理解できなかった理由が判明

最初の2回、MOA美術館の音声ガイドを聞いても、理解できなかったのは、見たままを説明しているだけで、それの何がすばらしいのかが全くわからなかったのでした。

 

描かれたことを元に、それらの絵から、どういう解釈ができるのか・・・・という実例を具体的に示してもらえたことで、絵というのはそうやって見るものなんだ・・・ということをやっと理解したのでした。

 

そして解釈には、どういう説があるのか・・・・ ということを見聞きするようになり、自分なりに考えられるようになってくると、絵を見る面白さということを理解しはじめました。描かれた状態から、何が読み取れるか。それがきっかけとなったのでした。

 

 

■屏風の金や水流の描き方について

さらに、根津美術館の音声ガイドでは、作成にまつわることも紹介されていました。この屏風には金箔は使われていないと言われていたけども、実は使われていたこと。
流水の描き方の解説もされていて、その時は、キャパシティーオーバーで、その話にはついていけませんでした。ただ、描かれた当初の、色合いとは違って、今は変化しているらしいといったことまでは、把握することができました。

 

2015年というと、琳派を知ったばかりで、屏風や琳派のことについて、基本的なことを確認している段階でした。技法にまでは、余裕がなく、そのうち、おいおい理解できればといいと思っていました。が、次第に流水の銀白地は、銀箔が使われているとか、銀箔を硫黄で硫化して黒くなったとか、これまた、いろいろな説があるらしいことがだんだん耳に入ってくるようになりました。

 

▼問題の(?)水流

↑ はっきりと、箔足が確認できます。ただ金箔が重なった時のような盛り上がりがありません。

 

以下のような話もあります。

光琳派とよばれるS字に屈曲し、渦巻模様に図案化された独特の水流部分は、銀箔が用いられていると考えられていたが、2003年の調査によって型紙を使用し(おそらく黒藍色の)有機色料で描かれたと結論

     出典:尾形光琳-主要作品の解説と画像・壁紙-

 

はっきり見える、箔足はどう理解すればいいのでしょうか? MOA美術館の音声ガイドでは、銀箔を硫黄で硫化し黒色に変色と解説されていました。

 

下記はまだ読みこなせていませんが、参考情報としてストック

黒い水流の謎 光琳『紅白梅図屏風』 の描法を再現する

黒い水流の謎

尾形光琳筆 紅白梅図屏風の蛍光X線分析 - 東京文化財研究所

 

 

■絵の見方を自分なりに理解

ずっと、国宝と言われている《紅白梅図屏風》のどこがいいのかがわからずに、何年もたちました。が、2年前にやっと、絵というのは「描かれたものから、いろいろなことが読み取れる」ということを理解できました。(今にしてみれば、当たり前のことなのですが、そのことがわからずに、何年もの間、私には国宝の価値が理解できない。あの有名な《紅白梅図屏風》のよさもさっぱりわからない・・・自分の感覚の鈍さを憂いてきたのでした)

 

作り手が何をそこに込めているのか、何を描こうとしたのか、どういう心境を表しているのか・・・・ そういうことを鑑賞を通して読み取っていくらしいということを理解して、世界が開けた気がしました。それを読み取るためには時代背景の知識、作者の人間関係、生い立ちなどが必要だということを。

 

そのきっかけが、読み取り方の例や、ヒントをちょっとでもいいから、示してもらえたことでした。自分でそれを読み取ることができる時代背景の知識が不足していたので、この時代は、かくかくしかじかだったから、こういう理解できるという、一つの解釈でも示してもらえると、次につながっていくことがわかったのでした。

 

 

■解釈はいろいろ

この屏風には、いろいろな解釈がある。

 

それを知ったことで、どんな人が、どんな解釈をしているのだろうと興味が持てます。専門家は? 美術愛好家は? そして何も知らない私のような人は? あるいは、初めて見る人たちは、みんな、この絵を理解しているのだろうか・・・・ 次第に専門家がいろいろ語っているのを見ても、私はそうは思わない・・・・そんなことも思うようになってきました。

絵の手法や、描かれた状態を解説されただけでは、何も感じることができず、読み取ることも、できなかったのでした。 

 

 

美の巨人たちの解説

〇構図の秘密

訪れる前に美の巨人たちがちょうど、OAされました。そこでは、婚礼用に制作されたという話もありました。さらに構図には秘密があって、左右を逆にしてずらすと、梅の枝がつながるという話

 

  

                      ↓  

画像をずらすテクニックがわからないのですが、右の屏風を下方にずらすと、幹と枝がつながります。いつもなら、無理無理感ない? なんて思ってしまうところなのですが、同じような技法を根津美術館で見ていました。

 

 

俵屋宗達「蔦の細道図屏風」でも同じような試みがされています。

 

根津美術館だったか、参考本でこの解説を見た時は、そんなのたまたま、偶然そうなっただけなんじゃないの? と思って見ていました。友人は、偶然はありえない。デザイナーというのは、そういうことはしっかり計算しているもの。と言っていました。

 

宗達に傾倒していた光琳紅白梅図屏風》で同じような仕掛けをしていた。ただ入れ替えるだけでなく、それをちょっとずらすという一工夫を加えて・・・・ 今回は、偶然じゃない? とは思わなくなっています(笑)

 

 

〇白と黒の対比

また、「黒の水流に対する白の梅の対比」ということが言われていました。しかし、最初から黒だったわけではないはずなのだけど・・・・ 色が変化したということについては、OAでは、言及されていませんでした。この変化がどれくらいかかるのかということまで光琳は把握していたのか? というのがずっと謎に思っていることです。

 

2015年に購入した『和楽 ムック 琳派 最速入門』には、光琳が銀箔が酸化して黒になることを最初から意図していたと言います。すでにその時代、銀が黒変することや、硫黄を使って黒くする方法も伝えられていたそうです。光琳のオリジナルな手法だったのか、偶然の産物だったのか、何かを見て知っていたのか・・・と考えていたのですが、すでにその技術は存在していたもよう。となると意図したのだろうと考えたいという推測でした。

 

 

というように、三者三様、いろいろな解釈が生まれてきます。このように様々な解釈ができるような描き込みがあるということも、名画、国宝たるゆえんで、鑑賞の面白さなのだと思うようになってきたのでした。時代の背景や、古典を知ることで、解説の意味も理解できるようになり、自分のとらえ方というのもできるようになってきます。

 

 

■感想

2年を経て見た《紅白梅図屏風》 その感想は・・・・

 

近い! 目の前にドカン! ちょうど、座った状態の高さで立ったまま鑑賞することができます。今にも手が届きそうです。とにかく、ガラスの透明度が高くて屏風までの距離が近くて、一枚ガラスで継ぎ目状態で見ることができるド迫力。これが噂のガラス・・・・ 

  

でも、根津美術館で見た屏風となんだか違うように感じました。小さいのです。屏風を展示する角度が広がっています。そしてなぜか派手なのです。額装かえちゃったのかしら? 角にあんな金枠なんてあったっけ? 前の方がよかったなぁ・・・ と思ってしまいました。

 

2015年の根津美術館の展示の様子を検索して比較してみました。すると額装は同じでした。人の記憶がいかにいい加減なものなのか・・・・(笑) きっと、クリアになったガラスや(でも根津美術館のガラスだってクリアなのですが)ライティングの違い、あるいは、屏風との距離感で、屏風を囲む額装が、必要以上に目に飛び込んでしまったのかもしれません。あるいは、今回の展示のために、お掃除されたとか? MOAの屏風が小さく見えてしまったのは、根津美術館では《燕子花屏風》と同じケースの中で、ドーンとワイドの広い空間で鑑賞したためかもしません。

 

▼左隻から鑑賞(ガラスがないみたい・・・・)

川の流れがドワーっと流れ出してくる勢いを感じさせられます。確か根津美術館ではこういう角度で見ることができなかった気が・・・・(したのですが、写真を確認すると、自分がそのような見方をしていなかったのかもしれません)

 

▼右隻から

こちらから見ると、今度は、水流ではなく、梅の反り返えりが、自分に向かって激しく覆いかぶさってくる感じがしました。正面で見ている若木の勢いが、より一層、増したように見えました。

 

同じ作品を場所を変えて、違う学芸員さんの展示方法で見るというおもしろさも見つけられました。 

 

 

■水流と枝の重なり

 

  

 

このように水流に枝を重ねて描くというのは、当時の何かの技法だったというようなことをどこかで見たのですが失念してしまいました。

 

琳派400年の高島屋で行われた細見美術館の展示で出品されていた池田 孤邨の「四季草花図屏風」 

水流の上に、描かれた植物を見て、なんだろうこれ? とずっと気になっていました。植物の上から水流を描いたのか、水流の上を貫くように植物を描いたのか・・・・

 

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 出典:ニュースレター'15 美術館の最新情報をお知らせ | 京都 細見美術館

 

これは、光琳が同じような技法を用い、池田 孤邨も同様の描きかたをしています。これこそが琳派の私淑なのでしょうか? 

 

▼こちら元の絵です

      ↓このあたりの水流と植物が重なっています

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▼金泥で塗って、箔足は線で描いたという説があった金の部分

 ↓ かさなり部分に凹凸があります。
   これを描いて表現できたとしたらそれは相当な技術?
   と思ってしまうのは、後出しジャンケンになってしまいますが・・・

                      ↓

    

 

 

2年前は、このような分析によって、いろいろ見解があるらしい・・・というところでうろうろしていましたが、そういう話をもとに、じっくり拡大撮影をしながら、自分なりに鑑賞させていただきました。国宝をこのように、手元で見るかのような鑑賞ができるのはとても貴重なことです。

 

公開は、あと1週間となりました。  3月14日(火)(2017)までです。

 

その他の作品も一見の価値ありの国宝や重要文化財が目白押しでした。

続報の予定です。(続く)

 

 

■関連:専門家の解釈

にわか学芸員の鑑賞日記。: 尾形光琳 紅白梅図屏風

黒い水流の謎 光琳『紅白梅図屏風』 の描法を再現する

黒い水流の謎

尾形光琳筆 紅白梅図屏風の蛍光X線分析 - 東京文化財研究所

 

 

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■MOA美術館:見どころ(個人的なおすすめなのであしからず)

■MOA美術館:国宝常設《色絵藤文茶壺》の新発見!?