コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■MOA美術館:《柳橋図屏風》 あの等伯も描いていた!

本日が最終日です。新たにリニューアルした美術館では、これまで目にしていた作品にもたくさんの発見がありました。が、私にとって一番の衝撃は《柳橋図屏風》だったかもしれません。17世紀、桃山時代に描かれた作者不明の作品。名もなき人が、こんなに素晴らしい屏風を描いていたとは! 

 

 

■昼食の前に、さっさっと・・・

この屏風は、展示会場の入り口、冒頭にありました。昼食の予約30分前だったので、まずは、真っ先に見たい《紅白梅図屏風》に気持ちは飛んでいます。とはいうものの、この柳、細かいなぁ・・・・ 誰が書いたんだろう? 作者不詳のようです。もっと見ていたいところですが、ここは、ざっとみるだけにして移動しました。

 

紅白梅図屏風》をメインに2階だけざっと見て、レストランへ・・・ それの後、光琳屋敷に行って、1階の杉本作品、仏像などを見学。混雑が緩和をしたころを見計らって、再度、二階へ移動しました。そして、この《柳橋図屏風》が、どういう作品なんだろう・・・とプレートを確認すると・・・

 

 

 

■露出展示だった?!

ここで、初めて露出展示であることを知ったのでした。

 

そういえば、こんなことを書かれているの見ていたことを思い出しました。

 

最初にガラス無しでこの作品を見せられるから、あとのガラスの向こうの作品も、まるでガラスが無いように見えて、本当にガラスが無いのでは…と疑ってしまうのですね。これも考えられた効果なのだろうか。ほとんどトラップ

 

 出典:熱海『MOA美術館』リニューアルで素晴らしい展示空間に。

      これからは美術館のついでに温泉へ - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

心憎いトラップ・・・(笑)と思っていたのですが、そんなことはすっかり忘れていました。最初に見た段階で、この場をすぐに切り上げて、その後の展示を見てしまったので、ここは、ガラスがないように見えるけど、あるんだ・・・ と思ってしまったのです。

 

 

■ガラスは「ある? ない?」どっちから見る?

そのため、再度、ここに来た時には、すでにここの美術館は、「ガラスがないように見えるけども、ガラスが入っている・・・」という認識ができあがってしまって見ているのです。そこで目にした

 

   露出展示をしています

 

このひとことに、ひょえ~ でした。隣で「これガラスがないように見えるよな」と話している人がいて、「本当にガラス、ないらしいですよ」なんて会話が・・・・

 

ガラスが入っていると思って見る・・・
ガラスがないものとして見る・・・

 

その受け止め方の差もおもしろかったです。

 

 

 

 

 

■屏風は右から見るもの

屏風の見方・・・ 2年前に屏風を見てからというもの、ずっと見方について調べたり、機会あるたびに聞いてきました。屏風の見方には作法、決まりがあるのか。どうやら右から見るらしい・・・ということはなんとなくわかってきたのですが、それを明言されているものが見当たらないのです。

 

やっと、そこの部分を明確に書かれている本をみつけました。それは、子ど向けの名画シリーズ。『琳派をめぐる三つの旅』博雅堂出版でした。四季図屏風絵は、右から左へと時間の流れが表されています

 

 

柳橋図屏風を右から見ていくと・・・  突然の風が・・・

決まりに沿って、右隻から左のすすみました。次第に橋がせまってくるように見えてきます。その変化に驚きます。

  

 

 

さらに、進むと・・・

       ▼たなびく柳     ▼たちこめる雲

この屏風で、急に風が吹き始めたのです。

柳が風にそよいで、たなびいています。その周りには雲が立ち込めていて、雨でも降るのでしょうか? 気のせいか波も、波打っているように見えます。

 

この屏風は、季節の大きな変化ではありませんでしたが、時間の経過の中でおきている自然が描かれていると思いました。

 

 

■屏風から離れていくと 

今度は屏風から離れてみました。

 

▼橋がアーチを描くよう(?)に迫ってきます

 

▼橋の存在が少し不明瞭になりました。

 

 

▼茶色の波のあたりが飛び出す

↑ あるところを過ぎると、橋の存在の主張はなくなり、茶色で描かれた部分(一見、土かと思っていましたが) 波の部分が浮き上がってきたのでした。

 

屏風からの距離によって、橋の迫り方がうすらぎ、下部の波が強調されたのでした。

 

 

 

 ▼波によってみます

 

 

 

■左から見ると

↑左からも、連続性が計算されているもよう・・・  

 向こうから橋がこちらに向かってくる感じ?

 

 

 

■再度右から

 

 

作者不明の柳橋図屏風。何かわからないものかと検索してみるとそこに現われたのは・・・ 

 

 

■過去に展示されていたらしい《柳橋図屏風》

〇2008年 東博にて展示

「染付け−藍が彩るアジアの器」展に行ってきました。 ( 工芸 ) - 楽 道 (旧名称「男着物のすすめ」 - Yahoo!ブログ

ここでの作品名は《柳橋水車図屏風》・・・東博所有

 

 

〇2011年 三井記念美術館でMOAの《柳橋図屏風》が展示されたもよう・・・

「日本美術にみる「橋」ものがたり―天橋立から日本橋まで―」 | フクヘン。- 編集者/美術ジャーナリスト 鈴木芳雄のブログ

 

 

〇無名絵師が描いた柳が似ている?

アトリエ・マイルストン: 無名絵師の「柳に白鷺図」

 

 

 

■そしてそっくりさん登場

長谷川等伯 《柳橋図屏風》 江戸初期

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出典:七尾美術館 長谷川等伯「柳橋水車図屏風」 : 英四郎

 

  

 

〇研究ノート 京都国立博物館蔵《柳橋水車図屏風》について 大原由佳子

アマリリス Amaryllis 2012年度 夏 No.106 静岡県立美術館|Shizuoka Prefectural Museum of Art より

 

  同じ構図で描かれたのは22作品!

 

・「柳橋水車図屏風」は桃山時代後期から江戸時代初期の比較的限られた期間に、
   一定のパターンに則って描かれた作品。

・現在所蔵者不明になっているものも含めて22作品が報告。

 

 

代表作例


◎香雪美術館所蔵のもの(香雪本)・・・等伯の印あり

群馬県立近代美術館(戸方庵井上コレクション)所蔵のもの(以下群馬県近美本)

                  ・・・・等伯の息子宗宅等後の印があり、

東京国立博物館所蔵のもの(東博本)・・・・印のない作例

MOA美術館のもの

 

 

 

柳橋水車図屏風 - 絵画 : 所蔵品一覧 | 香雪美術館より

 

宇治橋にしなだれかかる柳、宇治川の流れと水車・蛇籠、低く懸かる半月。
柳橋水車図」は、所謂「桃山百双」の典型で、同一図柄のものがいくつか現存する。

室町期より生じたこの図柄は、桃山期には各派によって描かれ、別けても長谷川派の格好の画題となった。本図は、一双の両端に「等伯(朱文方印)を有し、また密度の高いその作行からも、長谷川等伯(1539-1610)その人の作と断じられた。長谷川派柳橋水車図屏風のプロトタイプとなった、優作である

 

 

書かれた時代は、長谷川等伯よりも前の時代でした。等伯がこれを見ていたかどうかはわかりませんが、この構図は、いろいろなかたちで描かれていたことがわかりました。

 

 

■関連

■MOA美術館:見どころ(個人的なおすすめなのであしからず)

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2017-03-12 ■MOA美術館:杉本博司 《海景-ATAMI》
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