サントリー美術館の「左脳と右脳でたのしむ日本の美」 「information」と「inspiration」を選んで散策しますが、4階~3階へ移動する途中の吹き抜けは、両方を兼ね備えた空間です。日本の四季を表した映像「uncovered skies」を傘を使って楽しみます。右脳的要素と左脳的要素の融合した空間ですが、その場所で私が見ていたものは・・・・
*ネタばれ注意
■吹き抜けで行われていることは何?
鑑賞ルートは、4階の「白」、または「黒」のエリアから、3階へ移動します。その間の吹き抜けでは、なにやら面白そうなことをしています。傘をかざすと、そこに映像が見えてくるようです。
しばし、上から眺めて、ここで何が起こっているのかを見ていました。どうやら白いシートに光のあたった部分に、傘をかざすと、そこに映像が映し出されるというしかけのようです。
これを見ていたら、頭のスイッチは、左脳側に切り替わっていました。この仕組みは、いったいどうなっているのか。解明してみせる! テクノロジーを使った現代美術に触れると、作品の鑑賞モードではなくなり、どんな技術かを解明することに注力してしまいます。
とは言っても、最初は、作品として楽しむこともしてはいます。そのあと、モードをチェンジして、スイッチを切り替えていました。ところが今回は、最初から、この技術を明かして見せる!と意気込んでいました。
上から見ながら、おおよその仮設を立てていました。
■この映像の仕組みについて予想してみた
まずは床のシートに、見えない塗料で、画像が描かれていると想像しました。
そこに上から4つの光があたっています。
それだけでは何の反応もしませんが、そこに傘をかざすと・・・・
傘は、フィルターの役割をしており、特殊な波長だけを取り出します。そしてその波長に反応する塗料が浮かび上がっているという仕掛けだと予測しました。
それを確認するために、傘をかざしながら、90度に傾けたり、白いシートの外に出したりしてみました。やはり傾けると画像は映りません。
試しに傘を逆さまにしてみました。あれ…… 逆さにしても、映像が見えます(確か)
フィルターカットの役割をしていたとしたら、逆さにしていたら、映像は映らないと思ったのですが‥‥ 光の入射角が変わってしまうから・・・ ところがどうも違うようです。
奥の方に行くと、花火が上がっていました。このシートに描かれた画像は、固定かと思っていたのですが動画だったのでしょうか? それぞれの場所の画像が動いているか確認し始めています。動いていません。どうやら花火のところだけが動いているようです。
画像は床に描かれているのだと思うのですが、どうも違うみたいです。
みんなが映し出される画像を楽しんでいるのに、私だけ実験モード。なんだか異様かも・・・・
と思っていたら、お父さんが子どもに、説明をしていました。「これは偏向フィルターで、プロジェクターがうんたら、かんたら・・・・」妙に詳しい解説。もしや関係者なんだろうか・・・
「偏向」・・・肝となるヒントです。でも悲しいかな偏向の原理、わかってません。偏向報道とかいうから、偏りのこと? そしてプロジェクターがあるの? 床の映像は、プロジェクターから送られているということでしょうか? それはどこ? 捜してみてもプロジェクターらしきものはみあたりません。ダメだ、偏向を理解していないから、これ以上は無理・・・・と思って、傘を返しに行きました。
■解説によれば
壁には説明パネルがありました。
偏向の説明のようですが、イラストだけではわかりません。読まないと・・・・・ でも、今はいいや・・・・
なんとなくこのイラストなら読まなくても理解できます。
映像は、天井のプロジェクターから送られていたようです。あれ?プロジェクターの中に偏向版が入っているの? そしたら、傘の役目は? と思ったら真ん中の図には、偏向板がありません。そして右の図で、傘が偏向板にの変わりしているという説明が図から理解できます。
傘の偏光板で、映像が映し出されるという仕掛け。照明と思っていたのはプロジェクターだったのでした。
このパネルがチラリと見えたので、床に描かれた図柄だと確信。4つのプロジェクターで合成された映像でした。
この映像のどこが区切りになっているのか、どのプロジェクターがどこまでの画像を担っているのかを確認して次のコーナーへ移動しました。
■物の見方が顕著に表れた空間
この空間では、日本の美しい四季の映像を楽しむことを目的とされていたようですが、そちらは全く見てませんでした。とにかく、この技術を自分の力で解明する。それだけしか考えていませんでした。
現代アート、特にテクノロジーを使ったものを見た時に感じていたジレンマを思い出しました。作品を見たあと、その仕組みを解明するモードになってしまいます。そうなると、もう作品として見ることができなくなってしまいます。自分が納得するまで、徹底的に見てしまうのです。
直島の「南寺」 滞在中、3回も見て、視覚について考えていました。
草間弥生展を見た時もそうでした
■最初に立ち止まり、撮影した場所がここ
まず、展覧会は流して見る。その中で、立ち止まったところ、最初に写真を撮った場所が、自分の大きな興味のある場所。と思いながら見ていたのですが、長時間、立ち止まってしまった場所ここでした。
吹き抜けの上の階段で、じっと見ていました。ある程度、仕組みが理解できるまではここを動かない・・・という感じでした。予測がついてやっと下におり、それを確認するように、傘であれこれ試しました。そして最初に撮影したのががこちら・・・・・
この写真です。
偏向の原理がわからない。だから、この仕組みに迫ることができなかった。あとで、読んでちゃんと理解しよう。撮影を後回しにすると、撮り漏れになる可能性があるから、今、ここで・・・・
写真を見たら、床に移る傘の映像を一切、とっていなかったという・・・・
この美術展を見ながら、自分が何に興味を持つのか。どういう見方をしているのか。明確に表れたコーナーでした。そして自分の興味や、モノのとらえ方の基盤が、自然科学にあることを確認させられました。
あとで、理解するために・・・・拡大してここに置いておきます。
■参考
こちらのラジオの32:10あたりから、作品「uncovered skies」の解説があります。
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