コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■日本刀の華 備前刀:静嘉堂文庫美術館でディーブな備前刀 初心者でも理解できる工夫

静嘉堂文庫美術館では「日本刀の華 備前刀」が行われています。なにかと注目の刀剣ですが、一般的にはわかりにくいと思われ、美術鑑賞を趣味にしている人の間でも、敬遠する声を耳にします。刀剣をどのように見たらよいのか。初心者にもわかりやすい展示がされていたので、その部分をピックアップしながら、調べたことなどを補足して紹介します。

*写真は、ブロガー内覧会で撮影したもので、許可を得ております。

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■初心者にうれしい配布資料

入館すると、作品リストと一緒に、「図説・刀剣鑑賞の手引き」が配布されます。刀剣を見る上での基本的な知識がまとめてあるので、とても参考になります。

 

また、会場には「刀剣鑑賞はじめの一歩」という、ポイントを3つに絞って解説されたパネルも展示されています。刃文の見方などは図解入りでわかりやすいです。

 

 

さらに、刀剣の前には、どこを見たらよいかがわかりやすい図解も添えられています。

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基本的なことがわからなくても、この図解をたよりに見ていくと、だんだん理解できそうです。 

 

以下は、日本刀の基礎的なことを調べつつ、展覧会を紹介します。

 

■日本刀には主要な製作地がある  

〇五か伝

日本刀には、主要製作地があり、次の5つが有名で五か伝と言われています。それぞれ地域によって特徴があるそうです。

・山城(京都府
・大和(奈良県
備前岡山県
・相模(神奈川県)
・美濃(岐阜県

 

上記の場所を地図で示すとこんな感じになります。
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引用:https://www.hyogo-c.ed.jp/~rekihaku-bo/historystation/rekihaku-meet/seminar/bugu-kacchuu/tk_intro2.html

 

それぞれの産地別の特徴については、またの機会にして、今回は、備前刀を中心に展示されているらしいので、そこにポットをあてて理解します。

 

備前の産地としての条件

備前岡山県南東部)は、これらの産地の中でも生産量も多く「刀剣王国」と言われています。刀剣が作り出される産地の条件としてあげられるのは・・・・

⇒上質な原料がある・・・岡山県地域は、全国有数の鉄の産地 
 上質の鉄資源と、大量の燃料も必要
⇒水運の利に恵まれる・・・吉井川、旭川が児島湾に注ぐ水運を利用して原料を運ぶ
⇒優れた刀工を輩出(平安時代から)

上記のような条件が、圧倒的な生産量を誇り、最も長い歴史があり、今日「刀剣王国」と称されるようになりました。

 

〇産地と歴史

5つの制作地の発祥時期などを調べていくと、刀剣の歴史や、伝播の様子などが見えてきそうです。が、今回は備前中心。地域と歴史の関係については、また追々、理解することにします。(ちなみに、一番古いのは、奈良らしいです。)⇒*1

 

■今回、展示されている刀剣は

備前刀の宝庫として知られる静嘉堂文庫美術館

静嘉堂は、備前の宝庫」として知られています。展示品は、重要文化財4振、重要美術品11振と、在銘作約30振を精選しました。

在銘作とは、刀工の名前、制作の時代が掘り込まれていて、素性が明らかであることを意味します。

そして「うぶ」の展示もあり、大変貴重らしいのです。ところが、初心者にとっては、「うぶ」と言われてもなんだそれ?状態・・・・(生ぶと書くようです)

    ⇒〇生ぶについて

 

 

いずれにしても今回は、備前刀」に特化した特別な展覧会で、普段はあまり見ることができない刀剣が、お出ましするありがたい展示らしいです。こういう時は「わかる・わからない」にかかわらず、なんでもいいから、とりあえず見ておくとよいです。

見ても何もわからないと思っていても、意外にポイントをつかんでいて、あとになって、鑑賞経験が生きてくることがあります。また、いかに、すごいものを見たのかを、のちのちボディーブローのように効いて、わかってくるのも楽しいものです。

 

 

〇蒐集の経緯

岩崎家の刀剣の蒐集は、明治9年(1876年)に廃刀令が出されたのち、明治10年頃から、創始者の岩崎彌之助が始めました。その後、息子の小彌太もそれを広げます。彌之助は蒐集にあたり、刀剣鑑定家の今村長賀のアドバイスをうけ、その結果、備前の古名刀が多く蒐集されたとのことです。

◆今村長賀について⇒*2

 

静嘉堂文庫美術館所蔵の刀剣について

・120振り
・4割が備前
鎌倉時代を中心に南北朝室町時代をカバー
・重文4件、重美12件
・質量ともに充実

 

今回、特化して展示される備前刀について

備前刀の特徴

〇「腰反(こしぞ)り」の力強い姿
〇杢目(もくめ)を主体とした精緻な地鉄(ぢがね)
〇「丁子乱(ちょうじみだ)れ」と呼ばれる変化に富んだ刃文

豪壮にして華やかな作風は、鎌倉武士や戦国武将たちをはじめ、多くの人々を魅了してきました。

 

備前刀の流派

備前刀の、初期の古備前から、下記の流派の作風の展開をたどっています。備前刀の初期から歴史を追った展示ともいえます。

一文字派長船派の歴代(長光・真長・景光・兼光)、直宗派備前三郎国宗)や畠田派鵜飼派(雲生・雲次)吉井派(真則)など、備前物を総覧するような系統だったコレクションが一堂に会しています。

 

しかし、このような解説になってくると、お手上げ状態になってしまいます。 それぞれの刀工の特徴や歴史まで、理解するには、もう少し時間が必要かも・・・・ とりあえず気になったものを中心に見ることにしました。

 

ざっくり、特徴をパネルやHPの解説から流派の解説を抜粋しました。 

古備前【平安10世紀後半~鎌倉初期】にかけて活躍した備前刀初期の刀工の総称で、作風もいろいろ。

一文字【鎌倉初期】に現れ、南北朝期まで続く。後鳥羽上皇御番鍛冶として名をはす

長船【鎌倉中期】組織化された工房で高品質の刀剣を大量注文受け、備前刀の主流になる 

畠田:【鎌倉中期】吉井川東岸、畠田(長船に隣接)に住む一派。

吉井:吉井川西岸、吉井に住む。堅実な刃文、京・大和風の姿、地鉄などが特徴

鵜飼:【鎌倉~南北朝旭川西部、鵜飼荘に居住。雲生(祖)、雲次、雲重など「雲」を冠した刀工で「雲類」とも。

 

以上の流派が消長した歴史を経て今に受け継がれています。

(参考:静嘉堂文庫美術館 | 開催中の展覧会・講演会
    静嘉堂文庫美術館 | 展示作品の紹介 

 

備前刀に特化した展示

一口に備前と言っても、刀工群によって違いがあり、その違いを鑑賞するというのは、かなりマニアックな世界に思えます。

初心者にとっては、ただでさえ、刀剣は同じに見えてしまうのですから・・・・ いろいろな刀剣がある中で備前刀」だけを取り上げ、さらにその中の違いを比較するというのは、ハードルが高そうです。

しかし、一つの産地の「備前刀」だけを集中してみることで、その特徴がつかみやすくなります。それと同時に、同じように見えても微妙な違いというのも、段々、判別できるようになると、見る目も鍛えられそうです。五か伝の一つを徹底して見ることで、刀剣全体への理解が、逆にぐっと、近づくかもしれません。

 

備前刀は古刀といわれるように、刀剣には時代区分があることがわかったので、どのように分けられているのか調べてみました。

 

■刀の時代区分

作られた時代によって4つの区分がされています。「時代」と「区分」の関係は、下記のような感じです。

 

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引用:https://www.hyogo-c.ed.jp/~rekihaku-bo/historystation/rekihaku-meet/seminar/bugu-kacchuu/tk_intro2.html

 

時代区分については、入館時に配布された「図説・刀剣鑑賞の手引き」の中にも記載があります。

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■展示構成

刀剣の部分の展示は、大きく4つに分けられています。

古備前

平安時代から備前に続いた刀工の一群を「古備前(派)」と呼びます。作風はいろいろ。居住地は不明。

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作風の多くは、比較的細身、「腰反(こしぞ)り」の高い姿、映り(杢目)の入った精緻な地鉄、沸えづいた小模様な乱れを焼きます。

 

一文字派

一文字派は、天下一を意味する「一」の文字を刻みました。作風は唯美的です。一門は後鳥羽上皇御番鍛冶として有名になりました。

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拠点とした地名を冠し、福岡一文字吉岡一文字、片岡一文字となり、南北朝時代まで続きます。 

 

長船派

鎌倉中期に登場し、作風は美と実用を兼ね備えます。大規模に組織化された工房で高品質の刀剣を大量注文受け、備前刀の主流となりました。

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吉井川東岸、長船の地のあたりで発達します。

長船派の祖は光忠、次代の兄長光は、蒙古襲来という時期に、工房を組織化し、需要にに備え大量生産に備えて、刀剣の流派の最大の基礎を築きました。長光景光、兼光と嫡流が続き、南北町、室町時代、最も発達します。

室町後期、長浜派はさらに勢力を拡大(末備前)。しかし、桃山時代になると情勢の激変や、吉井川の氾濫などで衰退。江戸時代の新刀期になると、末備前の長船祐定一門が、かろうじてつないでいきました。

作風は長光は、華麗、真長は穏やかで直ぐ調の地味な刀文。中程がたるんだような形の鋩子(ぼうし)が特徴。鋩子は、長光・真長・景光の三工に顕著なことから「三作鋩子」と言われています。

 

〇鎌倉・南北朝名工たち 

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【鎌倉中期】直宗派国宗)、畠田派(守家・真守)
【鎌倉末期】鵜飼派(雲類:雲生・雲次・雲重)吉井派の紹介。

 

■刀剣の見方

解説パネルの「その2」では「刃文を見る」というポイントがあげられています。刃文の見方のコツを具体的みると・・・・

〇いろんな角度から見て、光を刀にあてる

まずは刀をどのように見るか基本動作が、写真で解説されていました

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上記の写真が、とてもわかりやすい解説になっています。刀剣を目の前にすると、そのまま正面から見てしまいがちです。しかし、刀剣の魅力を引き出すには、かがんだり、左右に動いたり、回り込んだりしながら、照明の光の角度を変えて、見えやすい位置を探すことがポイントだったのです。

 

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このようにして刃文を浮かび上がらせることを「照明の光を刀身にもってくる」という表現をされていて、ちょっとカッコいいなぁ…と思いました。

刀剣を見るには、光を見方につけることがコツだということがわかりました。刀剣に当てられている照明の光を、刀身に反射させて自分の目と体で受け止めるということです。そのベストポジションを探すために、体を移動させて探ることが、ポイントなのでした。

体を上下させいろんな角度から見る。刀剣のこと、よくわからなくても、刀の前で体を上下、左右に動かしていれば、よくわかっている通な人に見られるかもしれません。

これ、浮世絵の見方にも共通しています。(⇒*3

 

最初はとりあえず正面から見て・・・・

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姿勢を低くして光をあたりやすくしたり・・・

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切先に光をあててみたり・・・・

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左右に動いてみたり・・・・

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実際に、いろいろ動いていて、コツをつかんでいくとよさそうです。

 

〇見やすい展示場所がある

以上のように、上下、左右と、体を動かして刀を見ようとすると、展示ケースの中でも、見やすい場所というのがあると、日本刀剣保存会の吉川永一幹事が解説されました。

今回の展示でいうと ↓「一文字」の展示のあたりのケース

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ただし、このケースの一番、右端は回り込めないので、見にくいそうです。


そして「一文字派」のケースに続く「長船派」のこのあたり。f:id:korokoroblog:20190419210458j:plain

この並びが一番、見やすいポジションとのことでした。

 

 

また、こちらのケースのように、光の当て方が違うものもあるので、それぞれに適した角度をとらえることがコツとのこと。

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トークショーより

展覧会初日、トークショーが行われました。こちらは、一般の方も参加ができます。
【出席】
・日本刀剣保存会 幹事 吉川永一氏、
静嘉堂文庫美術館 学芸員 山田正樹氏
・ナビゲーター 青い日記帳 Tak氏
 
吉川氏からは、刀の保存について解説がありました。一般的には、油を塗ってさびを止めていると思われています。サビを止めるのは、油を酸化させることで被膜(酸化被膜)を作って、刀身を守っています。そのため油を塗ったままにしておくと、刀身までさびてしまうので、年4回、油を除去してひきなおしするのだそうです。他にも興味深いメンテナンスのお話が盛りだくさん。そして今回展示されている備前刀のこと、岩崎家の刀剣の蒐集の話など、興味の尽きないお話ばかりでした。
 
途中、山田学芸員からは、参加者の刀剣に関する理解度に配慮され「どんどん話が進んでいますが、刃文などは、ご理解されていますか?」と確認される場面もありました。トークショーに参加者された方は、刀剣の基本事項は、ご存知の方ばかりでした。基本事項は、知っているという前提でお話は進んでいきました。
 
 

〇刃文について

刃文については、わからない場合は、入口で配布される資料の中に解説があります。

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また、会場入り口の展示パネルにも解説があります。

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以前、刀剣を鑑賞した時に、東博の刀剣展示の解説をまとめたので参考まで・・・ 
 

〇刃文の模様は偶然生まれるのか?

Tak氏より、吉川氏に質問が・・・・
「刀剣に見られる刃文は偶然にできるものなのでしょうか?」
 

これ、私が今回、一番、知りたかったことでした。

「偶然ではなく、どこにどのような模様を出すか経験によって作られている」とのこと。

 

以前、これらの模様が、どうして刀剣に現れるのか。偶然の産物なのか。だとしたら、それぞれの刃文を、どうやって偶然の一致を起こしているのか疑問に思っていました。調べてみると、どうやらそこには、材料や温度などの化学反応があるようなのです。

 

今でこそ、このような化学、物理反応として解明できるのかもしれませんが、当時の人たちは、化学なんて知らないはずです。それなのに、どうしてこのような刃文を刀剣に作り出すことができたのか不思議でなりませんでした。
 
もう少し詳しく知りたいと思い、吉川氏に展示会場で伺ってみました。
「当然、化学は知っているわけはなく、全ては経験によって作られたもの。そして流派の中で伝承される技術というのもあったと思うので、それぞれの刃文の特徴になっていったと思われます」とのことでした。
 
 

〇生ぶについて

トークショーで解説があった「生ぶ」という貴重だと言われる刀剣。今一つ、言葉だけでは理解ができませんでした。会場で実際に刀剣を目にしながら解説していただきました。
 
◆生茎(うぶかなご)
刀工がつくったままの茎で、もっとも珍重される。
 
「生ぶ」の判断方法として、刀の「はばき」の部分(下図参照)と「刀身」の間に隙間があるかどうかで見分けるそうです。

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刀身は、はばきの下から入れるため、何度も研がれてすり減ると(?)「はばき」との間に隙間ができます。一方、制作されたままの状態で保たれた「生ぶ」の刀剣は、ピッタリおさまっているのだそう。(⇒刀を研ぐということについて*4
 
今回の展示は、あまり目にすることない「備前刀」の展示である上にさらに「生ぶ」という貴重な刀剣に出会える機会となっています。
 
 
 
 

■解説前に鑑賞して感じたこと

トークショー、ブロガー内覧会が 行われる前に、ざっと会場を見学しました。最近は、まずは、予備知識を入れずに、最初に感じたことを大切にするように鑑賞しています。
 
刀剣の鑑賞は、2017年「名刀礼賛-もののふたちの美学」を泉屋博古館で見て以来です。その後、東博の刀剣コーナーで、見るとはなしに、展示室を通ってくるという感じで見ていました。刀剣に関する知識はすっかり忘却の彼方です。
 
展示会場を一巡して、何かわからないのですが、いつもと違う印象を受けました。展示されている刀剣が単調な感じがしたのです。バリエーションがないというか・・・・
 
刀剣には、「太刀」と「刀」があり、その見極めは、刃が上向きか、下向きかで判断するといういうにわか知識を持っていました。
全体を見て、上を向いている短い「刀」は一振りしかありませんでした。(もしかしたら見逃しているかもしれませんが‥‥)このような展示は、見た記憶がありません。
これまで見てきた刀剣の展示では、いろいろな刀がありました。静嘉堂文庫美術館の刀剣は、「太刀」ばかりで「刀」がほとんどないんだ・・・・ なんだか偏ってるなぁと思っていたのです。
 
漠然と感じたことでしたが、解説を聞いて、その感覚的なものは、今回の展示の特徴をとらえていたことがわかりました。「備前刀」に限った展示だったため、単調と感じたようです。
 
また、刀剣の歴史でいうと、室町初期以前は、太刀が主で、刀はそれ以降に登場したと「手引書」に解説があり、「太刀」ばかりしかない。と思ったのも、展示の特徴をとらえていた感覚だったのでした。
 
刀剣は難しい・・・・と思いながらも、東博の本館に行った時には、見るではなしに展示室を通り過ぎるを繰り返していたことが、この展示は、いつもと違うという感覚につながったのだと思いました。
 
何気なく、通り過ぎているだけも、何等かの情報を受け取っていたこともわかり、また、予備知識なしで見たことが、意外にも、展示のポイントをつかんでいることもあると思いました。
 

〇太刀と刀について

刀の種別については、手引書に解説があります。

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また、初めて刀剣を見たあとに「太刀」と「刀」の使い方と、下げる向きについて調べたのがこちら 

 

 ■刀剣鑑賞は難しい・・・・けど

刀剣の鑑賞は、どうしても難しいと感じてしまいます。しかし、わからなくても、なんとなくでもいいから見る機会を作っておくと、少しずつ、何かが蓄積されているのだなということが今回の展示でわかりました。

ちょっとマニアックな「備前刀」だけの展示構成。でも、一点集中で見ておくと、このあと、他の刀剣を見た時に見えてくるものが、また違うような気がしました。

 

吉川氏がおっしゃっていました。

「全部、見る必要はないです。31振りの内、自分で好きな一振りをみつけて下さい。」

つかみどころがなく、望洋と感じていても、その中から自分でみつける。そこから刀剣の新たな魅力が広がっていきそうです。

 

 

■刀剣を理解するための資料 画像

常に基本に戻って確認。ということで、「刀鑑賞はじめの一歩」のパネルの画像を紹介。(部分撮影、掲載許可済)

〇その1 姿を見よう

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〇その2 刃文をみよう 

■刀剣の見方

〇いろんな角度から見て、光を刀にあてる

 

 

〇その3 地鉄をみよう

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■開催概要

会 期:2019年4月13日(土)~6月2日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし、4月29日・5月6日は開館)、5月7日(火)
会 場:静嘉堂文庫美術館

 

■関連

■名刀礼賛:「刀剣の見方」お勉強のための資料 

 

■脚注

*1:

「超・日本刀入門~名刀でわかる・名刀で知る」(静嘉堂文庫美術館) | 戦国王 blog

学芸員さんの解説によれば、刀剣がつくられた地域としてはおそらく奈良が最も古いそうです。

寺社が多いこの地域。寺に伝わる宝物を守るために僧兵や武士も多く、そうした人に提供していたとか。

 

*2:■今村長賀について

士族の刀剣鑑定家、今村長賀が指導をしました。長賀は、古刀が専門のようで、備前刀が好きだったそうです。宮内庁御刀剣係もつとめていました。また小彌太は、昭和天皇の御誕生を祝して太刀を献上しています。太刀が今回は、85年ぶりに里帰りをしました。今村長賀とのご縁は、そのあたりにあったのでしょうか?

(参考サイト:今村長賀 名刀幻想時点

 

〇正宗抹殺論

長賀は「正宗不在説(正宗抹殺論)」を唱えました。
今は、否定されているそうですが、明治ごろの刀剣界で正宗は実在しないと新聞連載をし、賛否両論を巻き起こしたとのこと。正宗が好きすぎた故の発言らしいです。

   ⇒参考: ■おまけ  鎌倉の正宗見学・・・・正宗見学した時の様子

 

*3:■昔、浮世絵はどうやって見た?

浮世絵を見る時も、そこに施された技を見るには、見る人が体を動かして、版画を寝かせた状態で見ているように、腰を下げて下の方から、見上げるようにして見るのがコツと聞きました。さらに体を動かして、光をいろいろな角度から受けるようにして、全体を見ていると、優品には、様々な工夫がされているのが発見できることがわかりました。

「刀剣」と「浮世絵」の見方に共通点がありりました。他にも日本美術に、同じような見方をするものがないかと考えていたら、「屏風」も、腰を下げて坐位で見たり、右から、左から鑑賞します。作品を見る時は、角度を変えて、反射する光を考えながら見る。というコツを知っていると、見え方も広がり楽しめそうです。

 

*4:■刃を研ぐことについて

「刀剣の刃を研ぐ」というのは、てっきり切れ味が悪くなったから(その状況を考えると怖いですが‥‥)だと思っていました。それが繰り返されるうちに短くなったり、細くなったりするのだと理解していました。
ところが、自分が使いやすいように、長い太刀を短くしたり、太刀を刀に変えたりと、いろいろな形に変化しているそうです。それを見極めるのが、なかごの目釘穴の位置や数、銘が掘られた位置でも判断できるそうです。刃が上を向いていたとしても、その元は、太刀であることもあるので、刀剣は、なかなか一筋縄ではいきません。