国立歴史民俗博物館の総合展示 第1展示室が、リニューアルオープンしました。大規模な展示替えは、新たな研究によってわかった年代観で分けられています。今回のリニューアルによって変わった点を、インターネットミュージアムでレポートしました。
国立歴史民俗博物館「総合展示 第1展示室「先史・古代」リニューアル」
上記で紹介できなかった見どころポイントを紹介します。リニューアルは2019年3月19日からで、ひと月とちょっとになります。GWのお出かけなどにいかがでしょうか?
*写真は内覧会にて撮影
■時代区分が変わった!?
最近の年代測定技術によって、これまでの縄文時代と、弥生時代の年代観が、大きく変わったのだそうだ。
しかし、新知見と言われても、これまでの時代区分が、どんな区分なのか理解していないと、そんなこと言われても・・・・ という状態になってしまいます。
じわじわとブームの様相を見せていた縄文が、昨年は、さらに注目を浴びました。映画や、東博で行われた縄文展が、とても人気だったようです。その時、やっと縄文時代がおぼろげにわかりかけたかなと感じていたのですが‥‥
縄文時代の年代感覚を、こんな感じでとらえていました。
「縄文時代」と「弥生時代」は、よく並列で語られます。しかし、同じ時間の物差しの上で示すと、弥生時代は黄色の部分の長さしかなかったのです。そんなことをやっと理解しました。
そして、今、私たちが過ごしている西暦は、緑色の部分にあたります。今の時間の流れと、先史は、全く違うスケールであることが見えてきました。
ところが、その区分がまた変わると言われても・・・・(⇒*1)
新しい年代区分
■何が変わったのか
・縄文時代が約3500年早く始まった。
・弥生時代が約500年早く始まった。
この長いスケールの中の、「3500年」「500年」というのは、誤差のうちに入らないのかしら? なんてことを思ってしまったのでした。
また、これだけ早まることで何が、どう変わるのでしょう?
という疑問はありますが、難しいことは考えず、展示を見ているだけで楽しめてしまいます。
内覧会で伺ったお話から、楽しみ方や、見どころポイントのいくつかをご紹介します。
■模型を活用してわかりやすく
「Ⅰ 最終氷期に生きた人々」のコーナーは、氷期の後半から、縄文時代の初めの人々の様子を展示したコーナーです。時代の境目にスポットをあてています。
〇当時の環境を再現
いきなりナウマンゾウ象が登場。実物大です。
今回の展示では、その時代の環境を再現していることが一つのポイントだそうです。どんな気候の中で暮らしていたか、どんな動物がいたのかなど把握できます。
〇当時の生活を再現
このコーナーは、生態復元模型を用い、当時の生活の様子をリアルに再現されています。
ここでは、道具の使い方を再現しています。
石器を作るために、まずは、石のハンマーで粗削りしたあと、木のハンマー薄く打ち砕きます。黒曜石を叩いて散乱した破片を見ると、黒曜石がどういう形状をしているのかがわかります。
〇感情まで再現
この少年、あと少しのところで完成なのに、2つに割れてしまったという設定だそう。悲しそうに報告する男の子とそれを見守る男性。
リニューアル後の展示は、生活の様子や、そこで暮らした人の感情までも展示しています。耳を傾ければそこで交わされる会話も聞こえてくるようです。
こちらは、弥生時代の戦いの様子の様子でしょうか? ジオラマで表現されています。
柵の隙間から、一緒になってのぞき込んでみましょう。
あるいは、戦いの中に紛れてみたり・・・・
柵の手前には、深い壕が掘られています。
こちらは、縄文時代の建物の内部や造り、そこでの暮らしものぞき込めます
ジオラマで再現された生活に、飛び込んで追体験してみましょう。
〇イラストで表現
このパネルは、縄文人の一生をイラスト使って、年齢ごとに見せています。部分的に縄文人の生活をイラスト化することはこれまでもありましたが、一生を全てを見せるというのは、新たな試みだそうです。
〇実物大で体験
獲物を追い込む落とし穴の上から狙っています。
この下に立つと、等身大の迫力に襲われます。獲物になった気持ちで体験。
■空間で表現された展示
ここはⅣ 倭の登場のコーナーです。
〇カラーで表しているものは海
上からの垂れ幕には、当時の日本のことを書いた中国の記録と、日本で出土した船の模型を重ねてみました。
ブルーの床は東アジアの海を表し、海で繋がる世界を示しています。遠くに見えるのは古代、奈良の都にあった羅城門です。途中、朝鮮半島や日本各地が存在し、モノや情報の交換が海を介して行われ、時代が進んでゆきました。
〇中国までの道のりの途中にあるガラスケースは
青い海の両サイドの独立ケースは、中国から出発して朝鮮半島や、日本列島の各地に至る様子を表しています。中央の青い海を船旅をするというイメージで作られたコーナーです。
〇前方後円墳までの時間
コーナーの終わりには前方後円墳があり、交流を通じた結びつきの先に新しい時代が幕を開けることを示しています。
右手には、「5章 倭の前方後円墳と東アジア」のコーナーに続きます。⇒*2
ここまでが、前方後円墳までの時代の時間を表現しています。
〇当時の姿に復元 時代感を体験
この展示の特徴は、当時の姿を可能な限り、再現して示そうとしていることです。この時代の人が、どんな色、質感のモノを手にし、どんな感覚を持っていたのかを、体感してもらおうという試みです。
通常、目にする銅鐸は緑青色のものが多いと思います。当時はどんな色をしていたのでしょうか・・・・ その様子を見ることができます。これを作るのに素材はどれだけ必要だったのでしょう・・・
漢代は、大きさをそろえた木や竹に文字を書きました。金印を手にした時代の雰囲気を感じて下さい。
〇見るのではなく、感じよう
このケースの上部にある金印から、前方後円墳までが「テーマ4」の時間幅を表しています。このコーナーは、説明を見るのではなく、ケースとケース(地域)を見比べながら、どこ違っていて、どこが同じなのか。感覚でとらえながら、当時の海を渡った人と同じ経験をして楽しんで欲しいとのこと。
■展覧会情報
■感想・まとめ
リニューアルで、大きく変わった歴博。基本的な知識がないと戸惑ってしまうかもしれません。しかし展示の工夫がされているので、見ているだけでも楽しめます。
これまで、歴史は時代を区切ってとらえることに慣れてきました。しかし時代はそこで、すっぱり分かれているわけではないことに気づきだしていたところでした。
江戸から明治に変わった時、ガラリと変化し、江戸と明治は分断されているかのようにこれまでは、感じていました。ところが、変わり目の前後、境界に注目してみると、とても面白いことがわかりました。今、平成から令和へ変化する変わり目の時期です。
古代も境界の変化にスポットをあててみるというのは面白そうです。(⇒*3)
今の変化とは違う時間の流れの中の境界。新しくなった歴史民俗博物館、GWに、訪れてみて、平成から令和の時代とともに体感してみてはいかがでしょうか?
■脚注
*1:■ちなみにラスコーはいつ?
ラスコー展で見たラスコーの洞窟は、旧石器時代、2万年ほど前。
引用:◆ヨーロッパの石器時代の壁画、日本の旧石器時代と縄文時代
ネアンデルタール、クロマニョン人、ラスコー周辺の壁画、高松塚古墳などの関係は・・・ ⇒〇古代の時代感覚
▼人類の進化の流れ
関連:⇒■人類の歩み
各地の有力者は連合し、倭王を立てました。王の地位や勢力は、前方後円墳を代表するの規模や内容が反映されました。
施設型をした埴輪もあります
▼5世紀の生活様式
440年頃の日本各地の出土品
▼時代を変える様々な技術も見られます。
鉄の加工や生産、窯業、馬の利用などが、新たに伝わった技術や文化の広がりを見せます。
「4章」「5章」の配置関係
*3:■「〇〇時代」という区分でなく、年代の推移にスポット
これまでの時代観は、「旧石器時代」と「縄文時代草創期」とに別れていました。今回の展示では、長い大テーマの「旧石器時代」の最終部分に「縄文時代草創期」をもってくることで、縄文土器がどのような環境のもとで出現するのかにスポットをあてています。その時代を「最終氷河期を生きた人々」という区切りで表されています。