コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■建仁寺:レプリカの《風神雷神図屏風》は3つある!?

 国宝 俵屋宗達風神雷神図屏風は、建仁寺所蔵ですが、現在は京都国立博物館に寄託されています。建仁寺には高精細複製品が展示されています。この複製品、実は3種類あり、常時展示されているのは2種類です。この記事はこれらの複製品との出会いについて過去の記録からピックアップしてリライトしたものです。

 

【2016.03.19記】

建仁寺:①2つの風神雷神図屏風  レプリカだっていいじゃない!よりリライト

 

 

■寄託された宗達の《風神雷神図屏風

2015年、琳派400年。風神雷神が三つ巴で、京都国立博物館に展示されました。中でも、別格として扱われているように感じられたのが俵谷宗達の《風神雷神図屏風でした。現在は、台風の被害などを避けるために、京都国立博物館に寄託されていますが、もともとは、建仁寺にあったものです。

 

さらに由来をさかのぼると、京都の豪商・打它公軌(うだきんのり/糸屋十右衛門)が、妙光寺再興の記念に(建仁寺派俵屋宗達に製作を依頼したものが、建仁寺に寄贈されました。

 

 

■《風神雷神図屏風》2つのレプリカ

そんな建仁寺には、2つの風神雷神があります。私が、建仁寺に2つの風神雷神があることを知ったのは、下記のブログででした。   

 

風神雷神図屏風を撮影!建仁寺は紅葉も楽しめる京都最古の禅寺でした

 

2つ風神雷神について、絶妙な描写がされていて、謎解き形式で書かれています。2つの状況をかいつまむと。見学したのは2013年 12月のこと。

 

●第一の風神雷神

入るなりいきなりの風神雷神のお出迎えちょっと古臭い感じ・・・・CMや教科書で見たのとは違う感じ「躍動感がある・・・」と評論家みたいなことを言いたいけど、意外にいかつくなくかわいい 愛嬌がある表情 親しみ深いしっとりした輝きをはなっている

 

 

●第二の風神雷神

また風神雷神が登場・・・・高級感満点のガラスケースの中に展示。こっちが本物っぽいかも・・・前のが偽物でこっちが本物だとしたら、恥さらしもいいとこ(笑)。よくみると金箔感満点のものとは違って布っぽい生地に描かれてる感じ。ちょっと綺麗すぎる気が・・・レプリカじゃないかな? と思いましたが、厳重な展示方法のせいでどっちが本物か見分けがつかない。細かい部分を何度もみて、こっちがレプリカ 最初のが本物だろうという結論に。

 

 

〇上記の状況から真贋を考える

まずは以上の言葉の表現だけを見て、どちらが、本物に感じるでしょうか? 状況から推理してみると・・・・一緒に考えてみて下さい。

 

2013年に、建仁寺で、「本物」と「レプリカ」を展示するというイベントがあったのだと理解しました。風神雷神」が里帰りして、建仁寺で展示されるという企画が行われた・・・なかなか、粋なはからい。しかしながら、そんなことが可能なのか?

 

ところで、この描写から考えて、どっちが本物かを想像すれば、当然、後者であることは明確。布のような質感というは時間の経過を表しているということだと思います。ただ、きれいすぎるというのは、気になるところですが・・・

しかしなんといっても、ガラスケースに入れて展示している。それが、国宝であることのまぎれもない証拠・・・・いくらなんでも、国宝をむき出しで展示をするわけがありません。万が一、その屏風の前で、クシャミする人がいるかもしれません(笑) 万が一、倒れて屏風を破いてしまうことだってあります。子供が、指で穴を開けることだってあるかもしれません。状況的に考えてもガラスケースの方が本物・・・ という推理をしたのでした。

 

〇周囲の人にも推理してもらう

何人かの人に、この状況を説明して「どっちが本物だと思う?」と推理をしてもらいました。すると美術にそんなに興味があるわけではないらしい人でも、すかさず、そのまま出したら、ダメですよね。すぐにかびちゃうから・・・ と生活の知恵の中で判断をしていました。美術作品は厳重な保管をされているもの、重要文化財の展示期間など、厳密に決められている。そういうことを知らなくても生活の知恵で、どちらが本物かを状況判断で導き出していました。

 

その一方で、美術鑑賞が趣味でよく見に行く人でも、最初の方が本物? と思う人もいたり・・・・絵を見なくても判断できる一方で、絵の表現、見え方から判断する人、いろいろで、真贋の判断というのは面白いと思いました。さて、真実はどうだったのでしょうか・・・・・

 

風神雷神図屏風を撮影!建仁寺は紅葉も楽しめる京都最古の禅寺でした

 

〇種明かし

最後の種明かしに、一本とられました。人間の心理をうまくついています。人は、2つの作品を見た時、それをどういうものとして見るのか・・・ということを、如実に表していると思ったのでした。

 

それは、どちらかが本物で、どちらかが偽物・・・と思ってしまうということです。

 

私はガラスケースの方が本物に決まってる! と決めつけていました。ごちゃごちゃ考える以前に、ケースに入れて展示することがそれがそれを物語ってると・・・・こうして、私もこのブログの中で、同じように絵を鑑賞するという体験をしていたのです。

 

しかし、判断した結果は、書かれている状況を見て判断していたただけです。ご自身は、この絵に神々しさを感じたと言われていますが、おそらく何も知らないで見たらそのように思ってしまうと思うのです。2つともレプリカだったというのは一本、とられた感じでした。また、それがわかっていながら、この状況を、このような構成で描写をされた筆者に対しても・・・

 

 

■作品の由来、背景を知ること

ブログで紹介されていたのは、2013年12月です。この当時は、琳派なんて知りませんでしたし、風神雷神が3つあるなんてことも知りません。また、風神雷神図屏風が、本来どこが所有しているもので、どこが保管している・・・なんてことを聞いても、おそらく、それが? ぐらいにか思わなかったと思います。そして、そんな屏風がお寺に戻ってきて展示されるということの価値なども、見いだせなかっただろうなと思います。

 

〇《風神雷神図屏風》の過去の展示

琳派400年を境に、興味を持ちました。風神雷神図屏風》は、過去に、どんな展示がされているのかを調べたりしました。いろいろな興味深い展示がされていたことがわかりました。そういう私が知らない展示の中に、こういうイベントがあったのだと理解していました。当時は、かなり話題になっていたのだろうけど、私には、興味のないことだったから、耳にも届かなかった。こんな貴重な機会を知らなかったなんて残念・・・と思いながら、見ていたのです。

 

ブログの筆者も、私みたいにそこに存在することの価値をあまり認識していなくて、突然、風神雷神の本物を目にしちゃったのね・・・と(笑)もし、今、私が何も知らずに建仁寺を訪れ、突然、2つの屏風を目にしたとしたら、この状況をどうとらえるでしょうかかか・・・・

 

〇レプリカと本物の判断

「《風神雷神図屏風》の本物が、今、ここに来てるの?」でも、そんな話、全然、耳に入ってきていません。本物がお寺で飾られる! ってことになれば、大騒ぎになっていておかしくないはず。そして今なら、その話題を私は見逃さないと思います。しかし、そんな話、微塵も聞いたことがない・・・ ということは、両方とも偽物じゃない? そんな判断ができると思うのです。

 

 

〇真偽の判断は設置の状況から推測

絵の描かれ方、質感、色、筆運びなどから、真偽を判断できる人ってどれくらいいるでしょうか?「国宝」宗達風神雷神図屏風の展示が、どのくらいの頻度で、どのくらいの期間、展示することが可能なのか・・・それは、どのような場所で展示するということについても、規定がありそうです。この前、京都国立博物館で飾られたばかりなのに、もう、展示して大丈夫なのでしょうか? 

 

通気性のよいお寺に飾ったら、いくらガラスケースに入れたとしても、いろんな埃やカビの胞子がついてしまうかもしれません。さらに宗達の《風神雷神図屏風》が、今、ここ建仁寺にあったとしたら、昨今の美術ブームを考えたらここに人が殺到して大変なことになるに違いないありません。

 

お寺に本物の風神雷神を飾る。というのは、セキュリティーの関係でも難しいのではないか。というところまで判断ができるようになっています。以上のことから、《風神雷神図屏風》の本物を、建仁寺に飾るということが可能なのか・・・・

 

絵そのものでなく、飾られ方、周辺状況から、どちらが本物か、あるいは両方とも違うのかを判断することもできるようになってきました。

 

 

【追記】2017.07.06 国宝《風神雷神図屏風》は建仁寺に展示はできるのか?

ずっと疑問に思っていたこと。所有者の建仁寺は、寄託したけども、国宝になってしまったら自らのお寺に展示することができるのか? 建仁寺で展示されることはないのだと勝手に想像していました。国宝は古巣へは戻れない。

 

ところが・・・・
2008年5月8日~14日までの6日間、展示されたことがあったようです。

「風神雷神図屏風」公開/風神雷神図屏風 一般公開される国宝「風神雷神図屏風」=7日午後、京都市東山区の建仁寺

出典:「風神雷神図屏風」公開/京都・建仁寺で8日から | 全国ニュース | 四国新聞社

 

何も知らされずに、いつものように見ていたとしたら、本物だと気づけないような気がします。

 

 

〇レプリカとわかっていても、本物だと思ってみる

レプリカと知らないで見たとしたら・・・・

それが本物かどうか? 自分の感覚や展示の状況などを考慮し、情報を総動員して、見極めようとすると思うのです。しかし、最初からこの屏風が複製品と知ってしまっていたら・・・・

やっぱり、レプリカはレプリカよね・・・・と、わかったように言ってしまうと思うのです。これは、実際に見ている人たちの様子からも伺えました。さらに、美術をかじっていたり、デザイン関係に携わっている方たちは、本物志向が強く、偽物は色眼鏡で見ていて、最初から見ようとしない傾向があるように感じていました。

「どうせ偽物、偽物を見てもしょうがない。私は本物志向だから偽物は見ない」という空気を感じることがあります。

しかし、偽物にも一縷の魂・・・・(笑) 最初から偽物と思ってみるから偽物なのであって、精巧にできた偽物を判断する真贋を、果たして持っているのか・・・・と思うことがあります。

 

何も知らず、わからずに見たら、受け止め方は変わると思うのです。・・・純粋に、自分の持っている知識や感性を総動員して、これは、本物なのか、偽物か・・・・と真剣に向きあう時間を設けることができます。そこで考え抜く時間というのを持つというのも、大事だと思うのです。

 

最初から、決めつけてしまったら、スクリーニングの機会を、逸してしまいます。あるいはあえて、レプリカとわかっていても、それを知らないつもりになって、これは本物だと思い込ませて、鑑賞をしてみる。そこで、何かおかしいと感じることはないか・・・ 

これを繰り返していけば、真偽を判断するファクターを、自分の中に一つ一つ蓄えていくことができると思いました。

 

 

〇レプリカとわかっている《風神雷神図屏風》をリセットしてみる

今回、建仁寺に行こうと思った一つの目的は、2つ風神雷神屏風。両方が、レプリカであるということをすでに私は知ってしまいました。しかし、一度、まっさらな状態にリセットしたら、私の目にはどう映るのかを試してみたいと思いました。

 

本物は京博で見ました。建仁寺の2つのレプリカが、これは本物です。とここに展示されていたと仮定して、私は、それをどう捉えるのか・・・・

偽物だと見抜けるのか・・・・それを試してみたいと思いました。そしてアートの世界におけるレプリカとは何か・・・・を考えてみたいと思ったのでした。

 

そういう意味で、こちらのブログの構成力には脱帽しました。自分が、レプリカを見誤ったことというのはあまり、言いたくないものです。そして最初に答えを示さずに、ストリーを展開していただいたことで、いろいろ、考える機会を与えていただけました。

 

風神雷神図屏風を撮影!建仁寺は紅葉も楽しめる京都最古の禅寺でした

 

 

〇複製品の展示状況について

ちなみに、いつも2つの複製品の屏風が展示されているのかどうかを確認したところ、法事などがあったりすると、見ることができないと言われていました。今回、でかけるにあたって、2つの屏風が展示されているかどうかについて確認はしていませんでした。最初から「ない」ということが事前にわかってしまうと、がっかりしてしまうので、見ることができるかもしれないし、見れないかもしれない。見れなかった時は、運がなかっただけ・・・

 

上記は、下記をもとに書いています

【参考】④琳派における模写・・・・そして複製 ・・・コピー (2015/11/16)

 

 

ところで、2つだと思った複製画は、3つあったことがのちに判明しました。しかし、現在は、この2つのタイプが展示されているようです。

 

 

 

■参考サイト

コロタイプ通信 from benrido collotype atelier 琳派400年:宗達と光琳のふたつの風神雷神図屏風が複製で夢の競演@京都・建仁寺

#風神雷神図 hashtag on Twitter

 

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