コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■大徳寺龍光院 国宝 曜変天目と破草鞋 400年の時超えて今に至る

 MIHOMUSEUMで行われている特別展大徳寺龍光院 国宝 曜変天目と破草鞋」 大徳寺龍光院拝観謝絶で有名なお寺。そのお寺が所蔵する曜変天目は、めったに見ることができない茶碗です。日本に3つしかない曜変天目が同時公開。2館の曜変天目を見るツアーで訪れ、そのあと個人的にも再訪しました。

 

 

■ブルータスで予習

好評のブルータスを購入し、行きの新幹線と、移動のバス内で、軽く予習。

龍光院には、国宝や重文が多数ありますが、拝観謝絶、観光客を受け入れていません。そして、3つの曜変天目と明らかな違いは、400年の間、誰の手にも渡らずに龍光院に伝わったこと。仏法の中の一つの位置づけと仏の教えを知るための道しるべとしての道具だということ。
 
そして、住職の言葉に息を飲みました。
「何人がその美しさに涙したかでその意義をはかるような展覧会にしたい」
 
大徳寺龍光院曜変天目を見て、果たして涙できるのか・・・ 2年前に一度、見ています。その状況から考えても、そこまでの感情移入ができるのかどうか・・・・
 
そして、「主人公は見に来た方々」と・・・
 

 

 

■ツアーの見学は2時間

奈良国立博物館から移動してMIHOMUSEUMに着いたのは、15時をちょっと回ったところでした。帰りの出発は17:10。余裕を持って16:50には、館を出なければ。2時間を切ってます。

館内で確認をすると待ち時間は40分。閉館間際になれば空くと予測し、常設展のMIHOの曜変天目を見たり、古代の作品を見て、16時頃に並ぶつもりでいました。

見学途中、バスで同席した方と会い「もう見ましたか?」と声をかけられ「閉館間際を狙うつもり」とお話したところ、待ち時間が1時間になっているという情報をいただきまきました。すぐに北館へ移動し、急いで並びに加わりました。

 

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■見学ルートの選択

見学ルートはクイックルート」「ノーマルル―ト」が設定されています。

 

よくある、遠巻きで、中が見えないのとは違い、茶碗に近寄ることができるように考えられいます。先に見た方からも、「クイックルートでも内部まで見ることができるのでそれで十分。奈良国立博物館の藤田の茶碗よりも、ずっとよくみることができます」という話を聞いていました。クイックルートで満足したと言われていましたが、せっかくここまで来たのですから、ノーマルで見たいです。

 

しかし、この動線を編み出すってすごいなぁ… これまでの茶碗は、遠巻きか近くで見るかです。普通ならそれを踏襲した展示を考えてしまうものだと思います。

おそらく、クイック側から見る面は、一番、班紋の少ない面なのだろうと想像されます。でも、誰もが平等に、底も見ることができる動線を生み出すのは、いろいろ試行錯誤があったのだろう思います。こうして結果を見てしまうと、そういうもの・・・と思ってしまいますが、新たな仕組みを生み出すのは大変なこと。

「主人公は、見に来た方々・・・」住職のこの言葉を、受けてあれこれ考えられたのだろうということが想像されます。

 

■40分の並びの時間に目にするものは・・・

〇中庭 

おちついた日本庭園のような庭をながめつつ

 

 

 

〇壁に展示されたパネル

 待ち時間、この写真をじっと見て、目に焼き付けてました。見どころがどこにあるのか、ポイントになりそうな目印を決めて。密と疎 特徴的な部分。青い光彩の多いところなど・・・・

 

龍光院の入口

ここ、国宝展を見たあとに行きました。この空気感、リアル感覚で伝わってきます。

 

これはたぶん茶室・・・

開くか !? 禁断の向こう側。そこは「日本一見ることが難しい国宝」と呼ばれる場所。 | Kazz zzaK(+あい。)

以前、↑ こちらで見ていた茶室ではないでしょうか? 

 

〇ビデオ上映

館長と住職のビデオが2か所で流れています。全てを見ると1時間になります。

並びながら少しずつ断片的にしか見ることができません。

 

「一昨年の国宝展で展示され、今後、いつ展示となるかわからないと言ってたのに、2年でまた登場?」なぜ?

「400年間、ほぼお披露目しなかった曜変天目を、なぜここで?」

「なぜ、MIHO MUSEUMで公開することになったのか・・・・」

 

常設展の会場で、スタッフの方に伺ったところ、「上映しているビデオの中で詳しく説明をしています」と言われました。なんとなく、館長のご縁では?という想像はしていたのですが、そのようなことを匂わせていらっしゃいました。

 

6つの対談がありますが、そのどこで解説がされているのかわかりませんが、お二人の会話を耳にした瞬間、互いに気づいた信頼関係によるものであることが、手に取るようにわかりました。

熊倉館長の研究のご縁でしょうか? というよりも、それを超える何か強い絆のようなものを感じさせられました。熊倉館長のお話が、穏やかで僧侶から説法を聞くように感じられました。住職が引き継いでこられた、禅の世界、信仰の世界を十分ご理解されたうえで、交流を持たれている。そんな印象を受けました。

前館長の辻先生が辞められた時、次の館長のご紹介をされていました。〇〇の研究者で、優秀な人材があとを引き継いでくれたとおっしゃっていたことが思い出されました。

ビデオを全部、見たい・・・ でも、時間が・・・ 茶碗を見終わってからでは、時間がない・・・ 残念。

 

〇書の作品

これは、どのような作品なのでしょう。解説がありません。誰が書いたのでしょうか? 何を意味しているのでしょう・・・ 何か試されているような気が・・・

 

 

 

■やっと展示会場入口に 

 

この入口は、曜変天目茶碗を見るための特設ブースだと思っていたら、中には、龍光院の至宝の展示もされていました。

 

 

■破草鞋って?

タイトルの破草鞋って何だろうと思っていました。勝手に、茶碗の銘だと理解して、そういう名の茶碗があるのだと思っていました。最初に訪れた時は、曜変天目以外の展示は、ほぼ見ることができない状態。見逃してしまったのか・・・・・

そして、破草鞋の解説もなかったような。展覧会のチラシや、ブルータスにも解説がなかったような気がする。見落としているのか?

タイトルの意味もわからずして、展覧会を見たことになる? そこはおさえないとダメでしょ・・・・ということもあり、再訪することに。 

 

2度目でわかりました。入口付近のパネルにありました。1回目の時は、行列の人だかりで、読める状況ではなかったのです。2回目は整理券が配られたので、パネルをじっくり読むことができ、やっとここに解説があったことを理解しました。

また、対談ビデオでも最初に「破草鞋」について解説があったのですが、並びのタイミングでいつ、ここの部分を見ることができるかわかりません。熊倉館長が音声ガイドでも解説されていたようです。

 

「破草鞋=破れわらじ」のことで、役にたたない「無用」なもので「価値がつけられないから誰にも買うことができないくらい素晴らしいもの」 つまり、破れたわらじも曜変天目も同じということを意味するようです。「無用」というのは有用無用を超えた全ての存在がを意味するようです。

 

MIHO MUSEUM 熊倉館長挨拶

 

 

ところで、「破草鞋」というのは、住職の造語なのか、仏教用語なのか、あるいは・・・  どこから来た言葉なのでしょうか? 

 


 

 

そして大徳寺龍光院住職からのメッセージ

 

 

大徳寺龍光院曜変天目を見て

2年前の国宝展で見た時の印象。
見る前は地味。他の曜変天目と比べて見劣りがすると思っていました。実際に目にしたら、印象は変わりました。それは、光の当て方でいかようにも変わる。という理解でした。あれから2年の月日は、逆にその渋さを魅力にとらえつつあります。

いろいろな作品を見るようになると、見た目の派手さよりも、渋さの奥にある何かを見い出したくなってきます。見てわかりやすいことよりも、じっくり見て初めて、何かに気づかさえてくれるような作品に価値や魅力を感ているという変化に気づきました。

 

最初に見たあと、2日後に再訪して3回ほど見ました。同時展示のためにスコープを購入し、曜変天目の斑文の粒子の分布をとらえたいと思っていました。まだ、使いなれていないため、焦点を合わせるのに手間取ってしまいます。1分間という限られた鑑賞時間ではロスタイムが出ることに途中、気づきました。また、スコープで見ると、角度的に見込みの部分が見えにくくなってしまうこともわかりました。

しかし、ピントが合った時に浮かび上がってきた粒子を見た時は、これこれ、これを見るために私は来たのだと思いました。

結局、最後の一周は、スコープを使わず、肉眼だけで見ることにしました。ずっと背伸びをしながら周回すると、藤田美術館曜変天目の時もでしたが、最後に、見込みの部分の新たな七変化に気づかされました。白く光る固まりとは別の、青く光る光彩が斑文を囲っていました。

腰を下げて外側を見ても、あまり変化はみられません。3面を1分で見るということは、大体1面が20秒になります。腰を下げて眺めてしまうと、内部、とくに茶溜まり部分の観察が漏れて、見逃してしまうことがわかり、その部分の変化をあとから気づくことに・・・

 

次回の観察のために・・・・

・まずは背伸びをして、茶溜まり部分を常に視界に入れつつ、全体を把握して一周。
・どこに、どんな見どころがあるかを把握。

・見る前に、パネル写真で、傷や特徴的な斑文、口作りのあたりのマーカー的な目標物をとらえておく。そこからの位置関係で、見るポイントを把握。

 

前回、国宝展で話題になって、肉球のような斑文が認識できなかったので今回こそと思っていたのは、確認ができました。肉球の集まり方、流れ方を事前に把握しておくと、確認がしやすかったです。

 

龍光院曜変天目は地味と言われますが、茶溜まり部分は、強発光しています。外から見た景色、中を覗き込み半分ぐらい見える状態。そして見込みまで見える状態で、見え方が全く違います。

 

ふと思ったのは、龍光院曜変天目は、仏前に茶を献じ、そのお相伴をいただくものだったといいます。となると、茶を入れた時に見える見込みのおちついた風合いから、飲み干した時、最後、発光するような光が見えて仏的なものを感じさせるという効果があるのかもしれません。

 

 

(続)⇒ ■大徳寺龍光院 国宝 曜変天目と破草鞋   主人公は見にきた方々