コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■国宝の殿堂 藤田美術館展 -曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき- 奈良国立博物館

国宝「曜変天目」三椀同時公開。うち2椀は、見たことがありました。いつか藤田美術館曜変天目をと思っていたところに、大徳寺龍光院所蔵の曜変天目、2椀を巡るツアーが企画されました。千載一遇のチャンス。藤田美術館曜変天目との初対面についてレポートします。

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■軌跡の同時公開記念ツアー

京都駅発着2館周遊バスプランに参加しました。

行程は次のとおり。

〇9:00発   京都駅(都ホテル 京都八条前)
〇(約180分) 奈良国立博物館(入場観光・自由昼食) 優先入館 
〇(約120分) MIHO MUSEUM(入場観光) 
〇18:00頃   京都駅 (都ホテル 京都八条前)

 

このプラン、好評につき追加募集が行われました。集合場所に着くと、人でごった返しています。他のツアーの集合場所にもなっていました。バス3台。総勢120名の参加でした。

この大所帯で移動となると、目的の曜変天目の見学はどうなることやら・・・

 

■館内や周辺情報の事前解説

今回、ご一緒したバスガイドさんの案内は的確でした。方向音痴にとっては、降り立った場所と、美術館との関係が全くわからなくなります。その位置から進む方向と、館内のどこに何があるか。

まずは、今回の目的、曜変天目が、館内入口を入ってどの方向にあるのか。どういう位置関係にあるかのかを、東館、西館といった方角を伴う表現でなく、入って「右」「左」と伝えていただけたことがありがたかったです。

そして関連する展示、見逃してはいけない要チェックアイテムの紹介、おすすめのお土産、昼食のおすすめ場所など、微に入り細に入りの案内がされました。

奈良国立博物館は、離れたところに仏像館があり、地下からつながっているので、そこも要チェックとのこと。

入館チケットも、事前にバス内で配布し、少しでも時間ロスがないような配慮もされていました。(外で配ると、ツアーとは全く関係のない人が、紛れてチケットを入手したりすることがあるそうです)

 

 

■鑑賞計画

〇団体鑑賞の混雑

鑑賞時間は、3時間。昼食を自由に好きなところでとり、13時半には出発できるように戻ります。昼食をとる時間がもったいないので、バスに戻ってから車内でとるつもりで、京都駅で調達しておきました。

博物館からバスの待機場所までの移動時間を考えると、13時15分には、館をあとにする予定でまわらないといけません。

バス3台の総勢120名が、時間差があるものの一気に館内に雪崩混み、曜変天目を目指すことになります。ここで長蛇の列になることは必至。こういう時は、逆行動するのが吉。

 

〇逆ルートの鑑賞はNG

一度、奈良国立博物館は、正倉院展で訪れているので、仏像館の位置関係などは、理解していたので、最初に「仏像館」を見て、行列が治まったころ、曜変天目の鑑賞を計画していました。

仏像館から入館してもいいか確認をすると、基本は、新館から一緒に入っていただきます。と言われてしまいました。団体行動では、イレギュラーな行動はご法度のようです。

 

〇ピークの行列を避ける

このツアーは、奈良国立博物館の優先入館が特典となっていました。入館前の行列は幸いにも全くありませんでした。入口で一旦、まとまってチェックするために待った程度。

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そして向かうは、目的の曜変天目。2号車だったので、すでに1号車の人たちの長蛇の列ができており80分待ちになっていました。さらに3号車の人たちも、ここに流れ込んできます。

曜変天目が展示された東新館は、人でごった替えしています。列の様子を見ながら、空いたところで、列に加わろと思ったのですが、鑑賞できる状況ではありません。

東新館から西新館へと移動。すると、急激に人はまばらになりました。しばらくここ一帯を見学しながら、随時、行ったり来たりして、曜変天目の列の様子をチェック。そのうち待ち時間は、80分から60分、30分と次第に空いていきました。

 

 

曜変天目に備えて

〇ブルータスで

行きの新幹線、バスの移動中に予習。藤田美術館館長と、千宗屋家元の対談。8Kカメラでとらえた写真などの情報を確認。お隣の方も、ブルータスを持っていて、ご覧になっていました。車内で本を広げやすかったです。

 

〇8K映像と解説映像

8K画像が、東館と西館の間のあたりで上映されています。藤田美術館では、8K映像をNHKと撮影し発見があったと聞いていましたが、その映像が、会場で上映されています。館長が茶碗を手にし、じっと眺めているという体の画像です。言葉による解説はありません。

この映像を2回ほど見て、曜変天目の全体像を把握していました。

 

また、西館にも映像があるので合わせて必見。藤田美術館に関する情報は、全くなかったので、どのような美術館であるかがよくわかりました。初代、藤田傳三郎氏が、どのような考えで仏教美術品を蒐集したのかを知ることができました。

 

曜変天目の捉え方

仏教美術廃仏毀釈から守り、世が安定したら必ず心の拠り所となると強い思いを持って集めたものが、今に引き継がれていることがわかりました。コレクションするという使命とともに、仏教美術とお茶の境界をなくしていったそう。茶席に仏教美術を取り込んだといいます。

茶碗は仏教の精神を表すもの。仏教美術品とともに、実際に使いながら、文化を伝えていくとうお考えをお持ちだということがわかりました。とは言っても、曜変天目については、人が口をつけてはいけないという考えがあるようです。これは、岩崎家の曜変天目とも同様。(しかし、岩崎家では曜変天目を中国の鑑賞陶器ととらえ、藤田では茶道具ととらえていたという違いがあるようです。)

 

 藤田美術館の館長が、下記の対談で次のようなことをおっしゃっていました。

 藤田美術館にとって、曜変天目は、特別なものとして扱わない。他の所蔵品と同じ位置付け・・・

 

〇美術品はケースに入れて見るのではない

所蔵されているお茶碗で、お茶を立てる映像が流されていました。凛とされた美しい佇まいに、一瞬、息を飲むような神々しさを感じました。それでいて、美術品は、仰々しく飾り祀られるものではなく道具として使ってこそ生きる。それが特別なことではなく、生活の一部になっている・・・・ うまく表現ができないのですが、お茶の世界を知らない私にも、お茶をたしなむ所作や佇まいから、茶碗とはどういうものなのかを感じとることができました。

 

8Kの映像の中で、茶碗をご覧になる館長の姿には、館長特権。いいなぁ…という単純な羨望のようなイメージで見ていました。そのあとの映像、美術品と思っていた茶碗でお茶をたしなむ姿が、別人のように感じてしまいました。

 

〇藤田家のマインドを知る

 子ども向けのこのような冊子もあります。

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展示をみて、歴史、人物など、人生の楽しみを増やして欲しい。と藤田館長のメッセージがありました。

 

 

■藤田美術展のラインナップ

今回の展示は、明治の大阪で活躍した実業家、藤田傳三郎氏と息子たちが二代にわたり蒐集した藤田美術館の名品の展示となります。その中には、国宝が9件、重要文化財53件を含んでおり、日本と東洋の優れた工芸品がコレクションされています。

 

コレクションは2000件。藤田美術館は現在、2022年のリニューアルオープンに向けて改築中。それらのコレクションの選りすぐりを、奈良国立博物館、全展示室を使って公開するという貴重な展覧会です。

廃仏稀釈で奈良にあった仏教美術は、藤田傳三郎氏によって、流出を免れるために、大阪へ移動させた。100年余の月日を経て、また奈良に戻ったという展示だと藤田氏は語ります。

奈良は仏教美術に注目が集まりやすいですが、わび茶の祖は奈良出身。そして仏教は禅の世界を介して日本に入ってきており、共に伝わった曜変天目は、仏教と茶の湯を繋いでいると、千宗屋氏。

曜変天目だけでなく、それにまつわる仏教美術にも着目して鑑賞しなくてはと思わされました。

 

 

■鑑賞スタート  

〇ウォーミングアップ

実際に見る前に、8K画像を2度見て、大体のイメージをつかみました。 

次に、並ばずに見ることができる鑑賞ルートで下見。立ち止まりながら、ゆっくり見どころポイントをあらかじめ把握しておくようにしました。どのあたりの斑文が見どこなのか。きれいに見えるポジションはどの位置あたりかチェックしておきます。

見ることができる時間はわずか。事前にどのあたりが、ポイントになるか、チェックしておくことは、重要と考え、混雑の様子を確認しにくるたびに、自由鑑賞ルートでチェック。イメージとトレーニング(笑)を3回ぐらいしてました。

 

〇並びながら、パネルの画像を頭に

次第に並びの列は短くなり、待ち時間も、1時間ほどになってきました。もう少し減るのを待とうかと思いましたが、集合時間のこともあるので、そろそろ並んだほうがいいと思い、11時30分ごろ、列に並び始めました。

展示ブースを囲むように並んでいるのですが、展示近くになると曜変天目の真上からの図がパネルになっています。

そこで、図柄を頭に入れるのに、特徴的な模様や傷(?)を基点にして、そこからどういう位置関係にあるかを把握するようにしました。

椀内一杯に広がる曜変模様を目にすると、舞い上がってしまい、どれがどれだかわからなくなってしまいます。そのため、目印をまず認識し、そこからの位置関係で探れるように。

藤田の曜変天目には、縁のあたりに茶色い模様と、少し内側に白い横に伸びた模様があり、これが、すぐに目につく文様です。それに対し、どの方向に、見どころポイントがあるかを把握。

これを最初に把握して、自由見学ルートで、どの方向で、茶碗が展示されているかをあらかじめ把握し、どこで何が見えるかを観察するのもよいかも。

 

〇実際に見たら・・・・

事前に、あれこれと準備したものの・・・・  曜変天目を、スコープで拡大して粒子を見るというのが、今回の大きな、目的でもありました。ところが、まだスコープに慣れていないのです。ピント合わせに時間がかかります。目的の場所を視野にとらえるのも、拡大率が大きいと時間がかかってしまいます。

結局、スコープの調整でちゃんと観れたのかどうか・・・ 消化不良状態となってしまいました。

再度、自由鑑賞ルートでチェック。外に出ると、待ちが30分になっていたので、もう一度、並ぶことにしました。

 

〇2度目の鑑賞

スコープで見るのは、まだ使いなれていないので、時間ロスが大きい。ということを学習。また、肝心の茶だまりを見れいなかったような気がしたので、そちらを中心に見ることに。外側は、自由ルートで、スコープで見ることにして、今回は、内部の観察に徹することにしました。

2度目に見て思ったのは、部分拡大でなく、全体を把握することが大事。言ってしまえば、拡大は、8K画像の方がきれいだし、よく見えます。ただ、どうしても見たかった斑文の粒子の集まり方。そして光彩の光り方を拡大で。そのビューポイントだけ、一点に絞っておいて、そこを見ることに。

あと、スコープを使うと、角度のためか、茶溜まりの部分が見にくい、もしくは、見えない感じがしました。

 

〇最後が見どころ

もう、見てからすっかり時間がたってしまい、どんな様子だかったの記憶も薄れつつあります。メモしたものがみあたらなくなり、写真や画像から、記憶を引っ張りだしてはみるのですが‥‥

最後に向けて、次第に盛り上がるような感じで、クライマックスのオーロラ部分が、どか~んとお出ましたという印象でした。このオーロラのような光彩は、他の曜変天目にはない特徴です。それまでは序曲のようで、この場面に向けての序章のようでした。

そして溜まりの部分も、最後に、七変化する光を見たように思いましたが、スコープで捉える余裕がなく。

 

もう一回並べば、見れる可能性もありましたが、仏像館や、余裕を持って、バスに戻るため断念しました。

 

 

■感想・雑感

最初に見た、藤田美術館曜変天目。これで3椀、コンプリートしたのですが、他の曜変天目と比べ、予備知識が全くないので、どうやってみたらいいのか、よくわからないままに終わったという感じでした。

他の曜変天目もそうだったように、まずは一度見る。そうすると、その周辺の情報が、意識しなくても、入ってくるようになります。そうした小さな情報の集積が、理解につながっていくのかなという気がしました。

まだ、未熟なため、見ても感じるものが少ない気がしました。きっとこれからなのだろうと思います。2022年にリニューアルオープンするとのこと。その時にまた、見ることができると、何かがわかるのだと思います。

 

会期も大詰めとなり、2019年6月9日まで。3館同時展示は、MIHO MUSEUMが終わったので、バスツアーなどはもうないのかと思っていたら、まだ、あるようです。

バスが到着すると、そのお客さんが殺到するので、うまく回避するのも一つのコツ。80分待ちとなることもよくあり、通常は、30~40分ぐらいで見ることができるようです。比較的、夕方は空く傾向にあるようですが、日によっても違うとのこと。

おそらく最終日に向けて、一層の混雑が考えられるかと思います。限られた時間を有効に使うために、事前に自由鑑賞ルートや、8K画像、パネル写真などをうまく利用して、見どころのポイントを押さえておくとよさそうです。

 

こちらの写真、通常ではありえない、全面のピントがあっているそうです。