コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■運慶展:金曜日の混雑状況と「 興福寺僧侶による運慶展ミニトーク」

 

東京国立博物館「運慶展」がなかなか好評のようで、朝から行列もできているようです。混雑を避けるには金曜、土曜日の時間延長の日がおすすめ。そして、金曜日には興福寺僧侶による運慶展ミニトークも行われています。合わせて会場の様子をレポートします。

 

 

■混雑状況の事前調査 

運慶展の混雑状況はどんな感じなのでしょうか? 問い合わせてみると、午前中に行列ができて待ち時間ができているとのこと。しかし、お昼頃になれば待ち時間もなくスムーズに入れるそうです。会場内は混んでいるようですが‥‥

 

朝イチを避ければなんとんかなりそうです。そして一番のおすすめは、金曜・土曜の21時までの時間延長、15時過ぎぐらいから比較的空いてくるとのことでした。

 

こちらで混雑状況、待ち時間などチェックができます。

土日は、午前の並び時間も発生し、混雑が続くようですが、お昼頃には解消されているようです。

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10月13日(金) 14:30 頃の様子
特に並んでいる状況ではありません。

 

 

■「 興福寺僧侶による運慶展ミニトーク」開催

毎週金曜日 15:00~ と17:00~の2回、平成館大講堂で、僧侶によるミニトークが行われています。場所は「運慶展」と同じ平成館の大講堂で行われています。定員は380名です。

 

受付は30分前から・・・・  その前に並ぶ必要がある状態かな? と思ったのですが、毎週行われ、また一日2回なので、30分前に行けば、十分参加できます。定員も多いので、ほぼ時間と同時に定員となるような感じでした。少し余裕をもっていく感じで大丈夫です。残り2回となりました。


  10月20日(金)15時~/17時~各30分間
  10月27日(金)15時~/17時~各30分間

 

 

〇参加チケット

このトークは、運慶展のチケットがなくても。常設展のチケットがあれば参加することができます。また、運慶展のチケットは、再入場スタンプを押してもらっておけば、ミニトークを聞いたあとも再入場できます。(押し忘れてしまいましたが、大丈夫でした) 

 

〇座席と退出の誘導

終了後の退場は、前方、左の一か所の扉になります。一つの入り口に人が集まるので、速やかに退場したい場合は、前方左側の座席にしておくとよいでしょう。運慶展の再入場も一気に人が集まるので、人数の調整がされます。待ち時間を軽減したい場合は、早めに出た方がいいです。(会場では、少し待つだけなので、あわてずに・・・とアナウンスがあります‥‥(笑))

 

 

■テレビ影響はいかに?

10月13日にぶらぶら美術館でとりあげられました。

 

また10月15日は、日曜美術館でも取り上げられています。

混雑が増すこと必至と思い、OA前の金曜を狙って行ってきました。

 

 

■雨の影響は?

10月13日の金曜は生憎の雨天・・・・  この日は朝から並ぶ人もなくスムーズな入場だったようです。若冲展の時は雨でも、変わらずの行列でしたが、この日は寒かったこともあり、人の足は控えられたようでした。18:30過ぎにはとてもみやすい状況でした。

 

 

■再入場可能

混雑している展示ですが、再入場は可能です。入る時に再入場のためのスタンプを押してもらえば、何回も出たり入ったりできます。ただし正門を出てしまうと再入場はできません。

 

 

■途中抜けして、本館の仏像(11)を見るべし!

10月13日は、学芸員によるギャラリートーク「中世の水墨山水画の講座が本館地下教育スぺースで、18:30から行われたので、それにも参加しました。そのついでに、本館の11「彫刻」のコーナーを見てからもどりました。

 

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仏像がいっぱいあるコーナー(エントランス右)  ↑

           

出典:東京国立博物館 - 来館案内 構内マップ 本館

 

 

〇関連展示

「運慶」関連の展示としては、運慶以後の仏師による展示が行われています。

    ⇒東京国立博物館 - 展示 日本美術(本館) 

     運慶の後継者たち―康円と善派を中心に 

 

これまでも、予習がわりにこちらを見ていたのですが、流れがわかっていないと、ここだけ見てもよくわかりませんでした。運慶の系譜を頭に入れておかないと理解しにくいです。

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出典:修行時代2 | 仏像を彫る心

 

 

〇11彫刻コーナー

本館には他にも仏像が展示されているコーナー(11)があり、予習替わりに見ていたのですが、運慶との関連性が全くない展示だなぁ・・・と思いながら見ていました。

 

ところが、ざっと「運慶展」を見てから、このコーナーを見ると、展示の解説の意味がとってもよく理解できることがわかりました。

 

 

■運慶を理解するには

〇運慶の特徴

運慶展を見ていると、運慶の特徴が解説されていて、だんだんわかってきます。

 

〇「衣文の彫りが深い」

〇「運慶は写実性が高い リアル」  

〇「運慶は武士好みの躍動感あふれる動き」

 

言われればそう見えます。しかし、それまでの仏像がどんなだったかを実際に見て、確認してみないと、どれくらい違いがあるのかよくわかりません。⇒【*1】 

 

平安時代の仏像を見るとより深まる

各時代の仏像の特徴をおさえていないと、運慶、こんなにすごいんだぞ! と言われても、ピンとこなかったのです。ところが、途中抜けして、本館の展示を見たら、すっかりその疑問が解決してしまいました。平安時代の仏像が展示されていたのでそれまでの仏像の表情は、衣文の様子など、明らかに運慶仏像との違いが手にとるようにわかるのです。

平安時代

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      ↑ 衣文の彫り浅い

 

鎌倉時代

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      ↑ 衣文の彫り深い

たっぷりした肉付きなど運慶の作品に通じる。運慶周辺の仏師の作と思われる。

 

「運慶展」を見る前にちょこちょこ見ていた時は、このコーナーも運慶関連の展示にすればいいのに・・・・ と思っていたのですが、よくよく見ると運慶関係の展示もありました。鎌倉時代平安時代の仏像の比較ができる展示だったことがわかりました。

 

 

■本館展示でより深い理解を

「運慶展」を見てからここを見るのもいいですが、途中抜けすると、その前の時代の仏像の様子が頭に入り、見る前、見たあとの仏像の見え方ががらりと変わり面白いのでおすすめです。

 

 

■予習は必要

行きの電車の中で予習がわりに、『ニッポンの国宝100』の2号、東大寺 金剛力士立像を見ていました。てっきり私は、金剛力士像が展示されているものと思い込んでいました。

 

金剛力士像を飾っちゃったの?!

こんなもの持ってきちゃったわけ?! そんなことしたらこの期間に、東大寺に行った人には、大ヒンシュクでしょ。もぬけの空になった東大寺南大門の間抜けな姿。 

それにしてもこんな巨大なものどうやって持ってきたのかしら? 展示室に入るのかなぁ・・・と思いながら。

 

〇巨大な金剛力士像の秘密

この仏像、寄木造りだったと知って、なるほど、分解できるわけだ・・・ と妙に納得。そしてミケランジェロのあの有名な手法をすでに使ってるじゃない! って思いました。⇒【*2】 

〇よりリアルな筋肉表現「龍燈鬼  ・ 天燈鬼」の作者は?

キャラクターにもなっている「龍橙鬼・天橙鬼」 この筋肉表現がこれまでにも増してリアリティーがあります。木目と筋肉の方向もあっているし。随分とまた腕を上げた・・・・と思ったら。⇒【*3】⇒【*4

 

〇何も考えずにただ見るだけ

僧侶のミニトークが始まるまで、15分あったので会場を一巡してきました。金剛力士像はどこに展示されているのでしょう? 第一会場にはありませんでした。第二会場にもありません。あれ?・・・・と思ったところで気づくというなんともおまぬけな話。「金剛力士像、どこですか?」と思わず聞きそうになったので、聞かなくてよかったです(笑) ⇒【*5

 

興福寺北円堂の再現

興福寺の北円堂と南円堂を新説に基づいて再現されていました。興福寺がどんなところにあってどんな構成になっているか・・・・ それを知らないと全くこの意味がわかりません。実際に2年前に訪れています。それでもわかりません。2年前、何を見ていたのか・・・・記憶にもありません。

2年前、北円堂の特別観覧で見ていたのですが、全く目に入っていないというか、無著を知らないので、そんなにありがたい人だと思ってませんでした。運慶もよく知らず興福寺が運慶のゆかりのお寺なんてことも知らずに、興福寺見学をしていたのでした。この広さに密集しているなぁ‥‥ 四天王だけ仏像として認識していたので、これは方角と対応しているのだけど、どれがどっちだっけ? 阿修羅像ってここにあるんじゃなかったっけ? そんな記憶しかありませんでした。内部の様子の写真や配置図を引っ張って記憶をたどっているところ
ーーーーーーーーーーーーーーー))】

  

しかし、この何も考えず、タイトルも見ずに一巡したことが、仏像をどう見てるいるかがわかりましたし、そのあとの解説を聞く上で、ざっくり作風を捕らえるのにとてもよかったです。

 

〇運慶の作風の広さについて

運慶は作風がとっても広いという解説に、うん、うん、確かに・・・・ ざっと見た感じでしたが、後半は、全然違うということが私にもわかりました。ところが、あとで展示を見たら、それらは弟子の作品でした。弟子の作品も含めた作風の広さとしてとらえていたのでした。

これまでも作風が広いといわれる作家をいろいろ目にしましたが、それぞれに思うところがありました。弟子の作風を除いたとしても、運慶の作風はバリエーションに富みます。しかし、何も知らず見た時は、弟子の作風の違いも含めて幅と見てしまったことを考えると・・・・ 

 

〇僧侶のトークに出てくる言葉

慶派の仏師の名前や、仏像名、所有寺院の名前、関係する僧侶の名前などポンポンでてきます。仏像の部分の名称なども、「音」だけで聞くので、何がなんだかさっぱりわかりませんでした。終わってから歴史に関する図録や資料を持参していたので、会場の前のテーブルで確認しつつ、平安から鎌倉時代の歴史の復習をしていました。

ひらがなの音で記録した言葉の意味などが次第にわかってきて、あの言葉は、このことだったんだ・・・・ と理解しだした頃に、2回目のミニトークの30分前の受付が始まりました。せっかくなのでもう一度、聞いてみることにしました。

充分、理解できたわけではありませんでしたが、さっぱりわからなかったことが、だいぶ理解できたように思います。

 

 

〇出品作品紹介

仏像名や由来、その周辺の歴史など、基本的なことは知っておいた方がよさそうです。

戻ってから下記のような紹介がされていることに気づきました。 

予習や復習に・・・・・

 

〇復習 新国立博物館 ライブラリーで(2017.10.17)

鑑賞後、六本木に行ったので、新国立博物館で、安藤忠雄展の様子伺いをしつつ、ライブラリーによって「芸術新潮」「Pen」の運慶特集を見て復習をしてきました。予習の段階だと情報過多でちょっと読みこなすのがしんどそうですが、一度展示を見ていると、すんなり入ってきたり、わからなかったことが理解できます。

 

■参考

 

特別展「運慶」公式サイト

興福寺で運慶展の予習 - 1089ブログ

 

【北円堂展示】

興福寺北円堂の仏像配置図や作品一覧は?運慶作の国宝もある! | まったりと和風

国宝『北円堂』特別開扉 - まいにち奈良づけ♪

 

■脚注

*1:■仏像鑑賞の入り口

仏像は、山本勉先生が『仏像のひみつ』を出された時に感化されて、わざわざ京都まで行って見た経験があります。全く仏像を見たことがない人よりは、わかっているつもりでした。しかしリアリティーがあると言われても、そうなのかなぁ・・・という感じで見ていました。まだ仏像の鑑賞経験が足りないからでしょうか? というより、これまで見るポイントが違っていたからだと思いました。当初は「如来、菩薩、天」といった「仏像の階級」が面白くて、仏像の種類、種類による形状を中心に見ていました。時代の変遷、形の変化などには、着目していなかったのでした。(2006年のこと・・・■2006年⇒この年は、直島の現代美術に触れて、美術作品は専門家の解釈なんて関係なく、自分の見たいように感じるまま見てもいいということに気づいた年でした。作品には制作年代というものがあって時代背景があることに気づくのは、まだずっと先のなのでした)

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*2:金剛力士像はミケランジェロと同じ!(2017.10.17)

金剛力士像は短足・・・・ それは巨大な像を真下で見た時のバランスを考えてあえて短くしたといいます。それってミケランジェロダビデ像と同じじゃない! ミケランジェロ:1504年、運慶:1203年 なんとミケランジェロの300年前に、運慶はやっていたのでした。ミケランジェロ金剛力士像を参考にした? そんなことはなくて、きっと見え方の「美」「バランス」を求めていくと同じ手法になるのだろうな・・・と思いました。そしてミケランジェロも運慶もリアリティーを求め、それを芸術的に昇華しました。その形となったものを見比べて、私は運慶の方が好きだって思いました。ミケランジェロのリアリティーの発露は受け入れられなかったけど(⇒■学び:「本質」って何? ①美術館めぐりで見えてきたもの - コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記)運慶なら受け入れられるのです。運慶のシックスパットだってありえない筋肉です。同じあり得ない肉体なのですが、運慶は許容できてしまうというのも不思議・・・・ それはなぜだったのでしょう・・・・ 

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*3:■「龍燈鬼  ・ 天燈鬼」 の筋肉表現

後半に展示されていたこの筋肉表現を見て、こういうことなのよね・・・・と納得していました。木目と筋肉の走り方が一致しています。同じ木から太もも、ふくらはぎ。以前、工芸品の木目をいかに出すかをテレビでOAされていました。美しい木目を出すには、どこで削りをどこでとめるか。ちょっとけずりすぎると狙った表情が一変していまうと言っていました。複雑な身体に合わせた木目の出し方。神がかりです。さすが運慶! すごいわ・・・・ 金剛像の筋肉からさらなる高みに到達・・・・と思ったら、それは子供の康弁作だったわけです。予備知識を持たずに見るのはこういうところが面白いです。

最初から康弁だと思って見てしまったら、親子で作風が随分、違うのね‥‥ と思って終わりだったと思います。筋肉表現のリアリティーをより追求しながら、デフォルメしたバランス。お尻のひきしまった筋肉表現なんて、ミケランジェロの十字架を持つキリストの緩んだ筋肉より明らかに上だわ・・・・(臀部はミケランジェロによるものではありませんでしたが)「邪鬼」は造形的な鍛えあげられた肉体の美しさとともに、ゆがめられていないリアリティーを感じさせられたのでした。

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*4:筋肉を科学する(2017.10.17)

運慶学園のサイトの中で、天燈鬼・龍燈鬼の筋肉を科学するというページがありました。筋肉をアトラスと照らしても、大きな齟齬がありません。デフォルメしたとしても、現実感をはずさない。そして鍛えられた筋肉の形成も現代のひ弱な鍛え方と違う発達のしかた・・・・ ミケランジェロがダメで、運慶OKと思った理由は、こんなところだったのだと思いました。(これは運慶じゃないけど・・・)
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*5:■無著・世親菩薩立像が大きい?! (2017.10.17)

メインビジュアルにも扱われている両仏像。2m超えておりさすがに大きい。存在感が・・・・ともっぱらの噂。しかし、私は全くそうは思わなかったのでした。というのも、8mの金剛力士像はどこに展示されているのか・・・と捜していたため2mの仏像なんて目じゃなかったのでした(笑) 大きな勘違いのためにその存在感が失われてしまったのでした。

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