コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■横浜美術館:丹下健三の理念を反映したリニューアル 奇跡の瞬間と遭遇

横浜美術館が2025年2月、4年ぶりに再開し6月2日、終了した。建築家・丹下健三が込めた「光の空間」が、グランドギャラリーのルーバー復活で蘇った。年パスを利用し光の競演を追った。横浜という都市の美術館の歴史とともに、鑑賞の歩みを記録。

横浜の開放性が美術館の光と共鳴する

 

 

■自然光を生かした展示空間?  

リニューアルの大きな柱の一つは、大空間、グランドギャラリーに光を取り戻すこと。建築当初、自然光を活用した空間を目指し、ガラスの天井に開閉式のルーバーが取付られていた。ところがいつの頃からか、機能しなくなりルバーは閉じられたままになっていた。

 

〇期待を裏切られたヨコトリ2020

コロナ禍、真っただ中にヨコトリ2020は開催された。光にきらめくニックケイヴの作品がグランドギャラリーを埋め尽くしている。しかし目にした時のガッカリ感は、今でもはっきり覚えている。独学がテーマだったヨコトリ、事前学習し海外展示をいくつも見ていた。

光を受けてくるくる回るモビールの反射、自然光を生かして設計された横浜美術館ならここだけの特別な姿を見せてくれるに違いないという期待。

ところが、見た瞬間、これですか?状態。天候が悪かったのだと気を取り直して、別日に訪れたがそれほど変わらない。その後、調べるとルーバーが壊れていて、開閉できないことが判明した。自然光が売りと掲げた美術館のはずなのに… 残念感でいっぱいだった。 

過去の展示を探ってみた。光が注いでいたこの空間はどんな姿だったのか。いつから開閉できなくなったのか。これまで見てきた記憶とも照らし合わせながら。その過程で、設計者、丹下健三が目指した横浜美術館の本来の姿を知った。

 

丹下健三が目指したこと

丹下健三は、自然光を積極的に取り入れるため、ガラスの天窓にし、開放的な空間を目指していた。そこには開かれた港、横浜の開放性やダイナミズムを象徴として重ね合わせていたのだった。

さらに美術館にも、開かれた場所にするというコンセプトを担わせていた。都市と美術館をつなぐことを考え、港から美術館を直線的で結ぶ計画があったという。

また人が自由に美術館を行き交うことも目指していて「余白」が多くとられた設計になっていた。

  

〇リニューアルで実現 

これらが実現されていたら…と想像していた。すると休館中の大規模修繕では、当初の設計思想を考慮して行われることがわかった。

 

ちょっと横道に逸れるが…

近年、新築される美術館や改修は、鑑賞だけでなく憩いの場を設け、子どもの遊び場を作り、人を呼び込む工夫がされている。その場に留まらせ鑑賞の機会を誘発させる効果を期待しているのだと思われた。

また通り抜けや回遊できるパスを作り、日常的にアクセスできる機能も持たせている。そんなトレンドの中、横浜美術館は建築当時から「誰でも自由に利用できる美術館」という理念が埋め込まれていた。

昨今の美術館建築と基本構想は同じに見える。しかし横浜美術館には丹下健三によって潜在的にその意図が込められていた。そのDNAはどんな形になって花開くのか楽しみだった。

(横浜っ子は、他の地域に先駆けてモノや仕組みを取り入れてきたという歴史に自負を持っているwww)

(空白の広大なフリースペースは当初、展示が優先されたため利用側にとてt「使い勝手が悪い」とされていたという。「横浜美術館の建築を読み解く」で館長が語っていた。リニューアルではスタートに立ち返り、有効な活用を考えたという。)

 

以下は、「おかえりヨコハマ」の横浜美術館に関する展示。ヨコトリ2020で知ったことが資料とともに展示されていた。

↓ 天窓が開いた美術館模型

↓ 港と直線で結ぼうとした計画と横浜博との位置関係

 

↓ 「横浜市美術館(仮称)への期待を語る」記事と美術館模型

  

 

海まで続く光景、ずっと写真を探していてやっとみつけた。(20250609)

 

〇再開後、最初のグランドギャラリー

再開後、初訪問。訪れた日が、曇天の夕方だったためだろうか、明るさに欠けていた。展示の華やかさもない。プレオープンのヨコトリ2023の方が目を引く展示だった。撮影もほとんどしていなかった。

 

ただ、期待した天井ルーバーの開放状態だけは記録に納めた。

 

ヨコトリ2023 テーマは重かったが色やアイキャッチはあった

 

 

■じゆうエリアに降り注ぐ光を追う

年パスを購入し、自然光が注ぐグランドギャラリーの変化を追ってみることにした。天候や日による違い、一日の変化、そして3月から6月という会期中の季節の変化も追う。様々な光の中での鑑賞、定点観測は私の中の一つのテーマでもある。光との関係は一期一会の要素も大きい。

 

〇4月5日 息を飲む瞬間に出会う

ギャラリートークに参加し終了後、目にした光景。ルーバー越しに見える空と燦々と降り注ぐ光。それらが作りだす格子模様が作品を覆っていた。

20250405 14:51

 

影は時間とともに移動。

 

3階の廊下に映し出される影も、くっきりはっきり状態から、陽炎のようにぼんやりふんわりに変化。影の長さも伸びている。この間、たった5分。わずかではあるが刻々と変化していることがわかる。

15:14 ⇒ 15:19

 

この場所で振り返り天井を見た。ルーバーの隙間から太陽がこちらを見ていた。

15:14

 

ちょっと展示室を見てから戻った。影は消えた! 

この間、40分。一瞬の出来事だった。
 

15:27

 

〇4月26日 午後

この日もギャラリートーク。開催前、遠くにまた光の影をとらえた。

20250426 13:41


前回とはまた違う様相

20250426 13:41

 

この影の違いはなぜおこる? 振り返って光の方向を確認。正方形になる要因を探った。影と光を結びその間にあるものは? いくら眺めても考えても結局わからなかった。

 

そして10分後、影が移動している感覚は見ていて感じていた。ギャラリートークが始まる前にあとかたもなく消えた。この様子に気づいて撮影している方もいた。

20250426 13:51

光と作品が作り出したショー。その後、再会することはなかった。天候に恵まれた4月の午後。ギャラリートーク開催は14時から。その前後で遭遇。この時期の太陽の高さが作り出す特有の影なのか。監視の方に聞いてみたが、初めて見たそうだ。

 

 

■自然光の中で見る作品

〇初めてのコンタクト

これまで何度も横浜美術館に訪れてるが、この作品は初めてだった。初見の印象は、自然光の影響があまりない夕暮れ時、革という素材感が際立って見えた。

 

〇光が作る影の中で

それが、こんな状態を見せられ驚く。自然光が持つマジック。丹下健三はこんなことまで予測していたのだろうか?

 

〇スリット越しに見る

作品をガラスのスリット越しに見た。影は見えなくなり素材のツヤツヤ感が伝わってきた。最初に見た時とも違う。

 

少し離れると、今、ここに届いている光を足元まで導いた。

 

〇作品タイトルを知って

ガラスを支える両脇に目をやると…  作品名は…

    I.S.M (光)   石原友明

そのものズバリのタイトルだった。

凸レンズは光を集める。そこに格子状の影。解説には「ISM(主義)」のピリオドは、固定観念を軽やかに超える作家のメッセージとある。この光の瞬間をそのまま受け止めてと言われていると思った。

 

 

■自分だけのベストショットを求めて

〇何度見ても同じ光景はない 

「おかえりヨコハマ」「コレクション展」は5回、訪れた。わざわざではなく近くに訪れた時は、30分でもと足を延ばした。ベストシーンとの遭遇はそんなに頻繁にはおこらない。また再会することもなかった。

 

〇次の企画展、夏に向けて ベストシーン探し

次は梅雨を経て、夏に向かう季節、太陽は高くなり日差しも強くなる。グランドギャラリーはどんな表情を見せてくれるのだろう。一説によると夏はルーバーが閉じたままになるのでは?という話も。またベストタイム11時という情報もある。

自分だけのベストシーンを見つけるのも一興。雨の日には雨の見どころもあるかもしれない。

 

 

■「今、ここ」という実感

小さなサムネサイズの写真を見ていたら… 太陽と私の間に作品が存在している。動かない美術館と、時間によって移動する太陽。その光が私の足もとと直線で結ばれていた。宇宙の中の「今、この場所にいる」という実感を持った。

 

 

閉館時刻の横浜美術館

(左)2月18日(会期開始頃)(右)5月28日(会期終わり頃)

季節の変化を感じさせる

 

横浜に住んでいた縄文や弥生の人たちも、太陽を見上げながら日々の暮らしを送ったのだろう。そう思うと、その時代の人たちともつながったように思えた。

 

 


会期中、みなとみらい駅エスカレーター ジョセフ・コスースの” The Boundaries of the Limitless ” 1997 も見に行った。

歴史は太古からつながっている。

初めて見た時の横浜美術館のポスト 

かつてない「いいね」… 横浜の人は横浜が好き…

 

 

横浜美術館に初めて訪れたのは2017年6月2日。横浜開港記念日で入館料無料の日だった、その8年後のこの日、「おかえりヨコハマ」が会期を終えた。

横浜っ子が「横浜市歌」を口ずさむ。その裏には、横浜美術館愛につながるものがあるのではないだろうか。

 

■参考

【横浜美術館 建築のヒミツ】vol.1「みどころ発見!」編|横浜美術館