戌年の東博、人気ナンバーワンは、《朝顔狗子図杉戸》のワンちゃんたち。展示は1月28日までです。かわいい‥‥ ぐらいにしか思わずに見ていたのですが、いろいろ見るポイントがあることがわかって、再訪した時に、チェックしてきました。
■博物館に初もうで 犬と迎える新年
日本人に愛されてきた犬との暮らしをみつめてみようといった趣旨の展示です。
■特別1室の展示
応挙の犬の杉戸の展示は、特別1室に展示されています。ここでちょっと注意が必要です。階段を上がって左手なのですが、階段を上る際に、左右のどちらの階段を使うかによってその後の動線が決まってしまいます。左か右かも、どこから見るかによって違ってきますので、下記のフロアマップを参考に・・・・
特別2室に最初に入ると、その後の動線が10室から回ることになり、応挙の犬にたどりつけません。どこにいるのだろう状態に陥ってしまいます。お正月に訪れた時は、2室から回ってしまって、危うく見逃してしまうところでした。
■応挙の子犬の詳細解説
お正月の3日に応挙のワンちゃんを見たあと、円山応挙の《朝顔狗子図杉戸》を調べていたら上記の東博ブログを発見。2015年のものなのですが、こちらの解説の方がとっても詳しく、見逃してきた部分がいっぱい。そこで、再訪する機会があったので、もう一度じっくり見てきました。
■予習の効果は?
上記のブログでは、いくつものポイントが紹介されていました。一度、これらの情報を目にして、しばらくたって見た時にどの程度、覚えているのか試してみることにしました。
というのも、美術鑑賞をする際に、事前に予備知識を入れた方がいいのか、入れない方がいいのか・・・ いろいろ意見の分かれるところです。入れてしまうことによって、先入観にとらわれてしまうことがあります。ファーストインプレッションを大切にとも言われます。一方、せっかく訪れたのに、見どころを見逃してしまうことも‥‥
常々感じていたのは、知識を入れたとしても、それを見るまでに、結構、忘れてしまうということでした。そこで、上記のブログを見たあとは、一切見ないようにして、10日ほどしてからの鑑賞でした。新たに知った見るポイントは、どれくらい覚えていられるものでしょうか?
■記憶を頼りに
▲ 入口を入ると最初に、杉戸が見えます
▲杉戸の下1/3に描かれているということがポイント
この杉戸は、設置されているお寺の廊下を歩いているとその先あるそうで、「杉戸があるぞ!」そしてなにやら白くてまるっこいものが見えるけど何だろう‥‥と思ったら、子犬だった! ちょうど、杉戸の下1/3の位置なので、まるで廊下と一体化してその延長で遊んでいるように見える効果があると言います。そして子供の目で見たら、まさに子犬の目線と同じになって、一緒にじゃれあうような効果があったのでは‥‥とのこと。
▲下1/3に図柄が集中
そんな解説だったと記憶していました。しかし、これらのことを、初見で読み取るのはむずかしいよな‥‥と思ったこともあり、結構、覚えていました。
この杉戸が、廊下の先に設置されているものということなど、想像もできません。どういう場所に設置されているかということを知らないと、このような理解ってできないと思って見ていました。(最初に見た時は、漠然と、この杉戸は室内にあるものと思っていました。宗達が描いた養源院「白象図」の設置の状況が頭に浮かんでいました。)
出典あす10/10から4週連続で琳派シリーズを放送!テレビ東京「美の巨人たち」|テレビ東京グループのプレスリリース
(このような室内に設置‥‥と思ったのですが、ここは室内ではなく、廊下の先とのことでした)
そして思いだされたのが、過去に見た杉戸の設置場所でした。
▲こちらは90度にクランクした廊下の端に直角に据えられていた杉戸です
▲こちらも廊下の突き当りのようなところにありました
過去に杉戸の写真を撮影した時のことを思いだしました。この写真では廊下の部分は写っておりませんが、確かに杉戸というのは長い外廊下の先に位置していました。
杉戸の単体を見ただけで、どんな状況で設置されているか‥‥ という想像はできませんでしたが、あとになって振り返ると、廊下の端に設置されていることが多いことに気づきました。
そして、本館の床に目をやると‥‥
こんな木材の床でした。杉戸と床もちょっとつながりあっている感じ?
▲杉戸の上部も見どころ。このなんにも描かれていない空間の杉の目の状態がまたなんともいえずいい雰囲気を出していると‥‥
そして、 『Seed 山種美術館 日本画アワード』で【審査員奨励賞】を受賞した
<Living pillar>外山諒さんの作品が思いだされました。この作品も杉の板目を効果的に背景にしていました。
▲この茶色のワンちゃんも杉目を生かしてる?
▲そして毛並みの細かなモフモフ状態 そして目も注目
▼こちらの茶色い犬も木目が生かされています
▲朝顔のツルを引っ張って遊んでるって解説していたはずだけど、つると犬はじゃれているように見えませんでした。今、写真で見ると、ツルが輪になってそれを引っ張っているように見えてきました。
▲口元あたりに寄るとくわえているように見えましたが、よくよく見たらくわえてはいません。
そういえば、犬の脚の裏がよごれていて遊んだ様子まで表現しているって言ってたけど…
▲ 「右前足」の横の黒ずみのこと? これ、足裏にはみえないけど… と思ったら、
▲後足を顔のところにもってきているこのポーズのことでした。
これ、遠くからみると、影にしかみえませんでした。
以上が予備知識の記憶によるもの。そして、以下は、事前に情報を見ていてもすっかり忘れていたこと。
■忘れてしまっていたこと
▲見つめ合う2匹‥‥
これ、遠目で見ていると、右の犬の目がどこにあるかわからず、どういう状態がよくわかりませんでした。
▲リアルに描かれる一方で、耳はS字で簡略的
▲口の中が妙にリアルに表現 朱に塗って歯まで描く
▲科博の常設展にも、口の中をリアルに見せる剥製がありました
▲つぶらな瞳
■その他気づいたこと
▲繊細に描かれたシッポ
▼朝顔の蔓表現
朝顔の花と葉の丸っこい形が反復して、ゆったりとしたリズムを刻んでいるのも心地よく素敵
とありましたが、年末の常設で抱一が描いたツルを見てしまったら‥‥
この朝顔のツルを見る前に、抱一のこんなツル表現を見てしまっていたため、物足りなさを感じてしまうのでした。
■これらの犬のモデルはあり?
応挙は他にも子犬の掛幅などたくさんの作品があります。それらの多くが、全身が白毛、もしくは茶色で、手と口の周りだけ白という共通点があるため、実際に飼っていた犬ではないかと言われているそうです。
確かにこの表情は、身近にいてともに暮らす中で見い出される一瞬が、とらえられているようで、常に観察していた賜物のようにも思えます。
まだ御覧になっていない方、一度、見ても細部までは見逃してしまった方は、戌年のはじまりの縁起物としてご覧になってみてはいかがでしょうか? 1月14日で終了してしまいましたが、科博の常設展でも犬にまつわる多角的な展示が行われていました。
これらは、年末年始、戌年にちなんだ様々なイベントが催され、干支「戌」にちなんだ写真が撮影できるので、年明け前に訪れれば、年賀状の素材になります。東博 常設展で撮影した写真は、個人使用なら年賀状に使ってよいそうです。来年は、ねらい目?