コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち 見どころは?

名称が変わった留美術館ギュスターヴ・モロー展」が行われています。インターネットミュージアムにレポートしました。

パナソニック汐留美術館「ギュスターヴ・モロー 展」 | インターネットミュージアム

 

この展覧会で注目は「サロメ」。モローは、男を破滅させる魔性の女(ファル・ファタル)と言われる「サロメ」を多く描きました。様々な画家もモチーフとして描いてきたサロメを、モローはどのように表現したのかを見たいと思っていました。

ところが、最初に目に飛び込んできたのは、「白と赤」の色でした。

それからは、この色ばかりが気になり、色を中心に展覧会を見るという経験をしました。レポートではご紹介できなかった部分を補足します。

*写真は、許可を得て撮影しております。

 

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■今回の展覧会の見どころはファムファタル

展覧会の見どころは、モローが描いた女性像に焦点を当てていることです。

その女性像は、男性を死へ導いたり、誘惑や破滅へと導く危うい存在として、神話や聖書でファム・ファタルと言われて登場します。

 

ファム・ファタル 

フランス語で「宿命の女(運命の女)」を意味。
しばしば文学や絵画のモチーフとして登場。

ラルース大辞典:「宿命の女」とは、「恋心を寄せた男を破滅させるために、まるで運命が送り届けたかのような魅力を備えた女」

言葉の歴史は、さほど古いものではなく、19世紀末のデカダンスから生まれたものとされている。

ティーフ:「サロメ」や「スフィンクス」など。神話などの登場人物以外にも「男を破滅させる女」という概念を体現する女性は皆、ファム・ファタル。その他、プロスペル・メリメの『カルメン』など多くの文学作品に登場。

参考:ファム・ファタル | 現代美術用語辞典ver.2.0

 

 

モローが描いた《サロメ

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他にも、数々のファム・ファタルが展示されています。

 

■飛び込んできた白

モローが描いた女性が、今回の主題なのですが、最初に目に飛び込んできたのは、白の色でした。すると、そのあとも白ばかりが目につくのです。

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光が当たったと思われるこの白の表現も妙に気になりました。

 

気になりだすと、白ばかりが目につきます。

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全体を占める白の割合は、それぞれに違うのですが、少なくても、まずは最初に目に飛び込んできます。「白」という色が持つ性質なのかなと思いながら・・・・

 

他のブースに行っても、白が目につきます。

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 *画像をクリックすると拡大します

 

■赤が割り込んできた!

白が気になっていたのですが、今度は、途中「赤」も飛び込んできました。

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最初に目についた赤は、右の絵です。赤いマントを着用した人が、窓の外を見ている絵だと思ったのですが、顔がありません。一体、これは何を描こうとしたんだろう。不思議な絵でした。

 

 

■モローは、赤の色の効果を実験していた?!

担当学芸員さんより、解説がありました。

「緻密な準備をし、数々のデッサンを重ね、配置を考え、明暗を考えた上で、完成作に取り組んでいます。素描や下絵では、画面の中で赤のポジションはどこが効果的かどこの明るさを抜けた白でもってくると奥行き感がでるか、など検証するため色彩のコンポジションを試みた絵がいくつか展示しています」

「モローは伝統にのっとったアカデミズムの 人体デッサン、陰影の素描を重ね、小さいサイズで色彩研究のための習作を描いています」

 

そんな解説を伺うと、今度は、赤と白の色の配分ばかりに目が向くようになりました。

 

 

ギュスターブ・モロー美術館の赤

3章の壁の色はピンクです。これは、モロー美術館の壁の色を意識したそうです。 

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モロー美術館の画像  おびただしい数の展示 背景が赤です(wikiphedhiaより)

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展覧会の解説によると。限られたスペースに最大数の展示の工夫があるとのこと。

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戸棚の中の回転式の棚に収められたり、四方が明けられる家具に収納されて展示されているのだそう。いったい、それはどんな展示なのか気になります。

 

 

青い日記帳さんが訪問記を書かれています。

bluediary2.jugem.jp

 

また、YoroConさんの、旅ログからも様子が伺えます。

www.yorocon46.com

こちらのお写真を見ていたら、モローの私室の壁紙と、汐留美術館の展示の壁紙、もしかして同じようなものを使ってないですか?

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モロー美術館といえば、モローの愛弟子、ルオーの今後を案じ、館長を務めさせたことでも知られます。 

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モロー美術館より来日。

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モロー美術館は人気で多くの日本人が訪れているそう。《出現》を目当てに来る方も多く、「今、東京だ」と伝えると、とても残念がられますと語られました。

 

 

今回の鑑賞は、この機会に「サロメ」のお勉強をしようと思っていました。ところが、色に引き寄せられ、モロー美術館のことが気になってしまいました。

 

留美術館の照明は、赤がとてもきれいに見える照明が使われています。以前、講座に参加した時のレポです。

 

■妖艶な光

最後に、一番、印象に残った色は・・・・

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この絵の柱にあたっている光です。

近くで見た時と、遠く離れて見た時とでは、全く印象が変わりました。遠くから見ると、何か色を掻きとったようにも見えます。しかし近づいてみると・・・・・

 

これまで見てきた白い、発光するようなまばゆい光と違い、ゆらめくような七色の光。白い光がプリズムを通して分解されたような虹色が、艶めかしく揺らめいていました。妖艶な光をぼんやりと見続けていました。