大徳寺、大仙院の檀那の間にあるという《四季花鳥図》が、サントリー美術館で10月18日から公開されていました。昨年「禅とこころ」でも見ていて、なぜか気にかかった絵です。それが本来、どういう場所に置かれていたのかを知るというのが、今回の京都行の目的の一つでした。
【関連】
■大徳寺《四季花鳥図》のレプリカ
●マンネリと思っていた狩野派なのに気になった《四季花鳥図》
サントリー美術館では展示された初日に見に行きました。それについては、また改めて記録しておこうと思います。実際に大仙院の展示を見てから、また再度、友人と見に行く予定にしていました。ところが京都から戻ったら、体調を崩してしまい行けなくなってしまいました。そのあとすぐに会期が終わってしまい再会ならず。それくらい思い入れのあった絵です。
- ■大仙院 檀那の間は‥‥
- ■大仙院前庭
- ■中に入ると…
- ■人が出入りしているところが
- ■《四季花鳥図》について聞いてみた
- ■念願の《四季花鳥図》は‥‥
- ■あの部屋、あの襖はなんだったのか
- ■《四季花鳥図》の正体判明
- ■関連
■大仙院 檀那の間は‥‥
大仙院の檀那の間はどういう位置関係かというと‥‥
下記の図は「禅−心をかたちに−」の図録(p417)から
↑ 四季花鳥図
これを見ながら、どんな建て物でどんなイメージなのかな? と想像を膨らませていました。
大仙院の前に、「龍源院」「瑞峰院」を訪れました。両者とも写真撮影可。写真撮影はてっきり不可かと思っていたのびっくり。また「瑞峰院」のお庭は重森三令作庭。そして庭を見てこれまでのデジャブ感の原因がわかりました。私は大徳寺を訪れたことがあったのです。重森三令庭めぐりをした中に「瑞峰院」があったのでした。遠い思い出い浸りながら大仙院へ向かいました。
■大仙院前庭
紅葉にはまだ早い時期だったのですが、ここだけ、この日に合わせて色づいてくれたかのような鮮やかな紅葉。門の中にぴったり納まっていてちょっと感動。
松の根、枝ぶりも歴史を感じさせられます
門に近づくとぴったりおさまるこの木は・・・・・
門をくぐると・・・
こんな感じでここだけが赤く染まっていました。
その奥が大仙院 受付
大仙院の場所はここ ↓
↑ 庭が有名らしいです。
室町時代創建
目的の襖絵の記載がない‥‥ と思ったら寄託されていたのでした。
■中に入ると…
これまでの塔頭とは違う空気が流れていました。「写真禁止」の張り紙が至るところに‥‥ これまで2つの塔頭を自由に撮影してきたので、他は許可しているけどもここはダメなんだ・・・・ とちょっと腑に落ちない思いを抱かされました。これまでは庭だけでなく、障壁画などいろんなところを撮影できたのに・・・・
さらにその理由がなんとなく見えてきて、妙に納得。ここの塔頭だけ他と比べると充実した販売コーナーが設けてあります。そこに立つ人も多く、この塔頭の僧侶と思われる方も椅子に腰かけ自ら販売にあたられていました。
(ここは稼ぎ処なんだ‥‥ 事前に見ていたブログに書かれていたこと、あるあるだと。でもその時によって受ける感覚は違うと思うので、自分の目で確かめてみようと思っていました。維持していくということは、そういうことも必要なんだろうな)そんなことを感じさせる空気が、その場にはただよっていました。
最近、美術館は撮影もできるようになっていましたが、以前は、図録や絵はがきを売るために館内を撮影させないのだろうとはよく言われてきましたが、それを明確に感じさせる雰囲気がありました。以前は、ここも撮影可だったらしいです。
方丈を一周して、やっぱり・・・・・・ 思ったとおり《四季花鳥図》を見ることがはできません。方丈のそれぞれの部屋はすべて固く閉ざされていました。ここまで来たのにいて見ることができないなんて・・・・・・ それってどうなんでしょう?
キャノンの綴りプロジェクトって、国宝などを身近に楽しんでもらうためのプロジェクトで、それがどんな場所にあるかなども含めて理解して、自由に見てもらおうという目的を持っていたはず。しかも無償で提供しているはずなのに、それをお寺が独占して来館者に見せずに抱えてしまうなんて! なんだかいや~なイメージを持ってしまいました。私はわざわざこのために来たのに裏切られてしまったというか‥‥
■人が出入りしているところが
あぁあ‥‥という思いで庭を見るでもなく見ていると、 時々、人が出入りしている場所があるのです。そこは、仏間のようでした。人が入っていくとすぐに閉められてしまいます。
よくわかりませんが、お金を払って祈祷のようなことをお願いすると入れるのでしょうか? 男性が案内しています。(どこまでここは儲け主義なんだ… ←こころの声)
■《四季花鳥図》について聞いてみた
端の方に立っている女性の方がいらしたのでダメもとで聞いてみました。「四季花鳥図を見ることはできないんですか?」
すると、「ああ、ありますよ。ここです」とそのお金を払わないと見れないと思っていたところに案内していただいたのです。「えっ? 入れるの?」
その中にいたのは外国人ばかり。おそらく一般客は入れず、外国人などここを目的としてきた人を特別に案内しているようでした。お金を払ったら見ることができるというのとは違うようでした。
言ってみるものです‥‥ 何もいわなかったら消化不良状態で終わるところでした。そして多分、ここに人を案内していた男性に言ったら、入れてもらうことはできなかっただろうな‥‥と思います。
最近、何かを聞く時も、自分でも無意識に瞬時に判断して、しかるべき人に聞いているような気がします。ラッキー! ということが多くなっているような(笑)
■念願の《四季花鳥図》は‥‥
実際に見た《四季花鳥図》は‥‥
えっ? これですか! それはないでしょ‥‥ という状況。
まず、元信は、墨画にうっすらと色付けをした鳥を描いたことが特徴なはずですが、はっきりくっきり描かれた鳥。そんな色で表したらダメでしょ・・・・ また襖も小さい。本来の障壁画は、下記のような形で設置されているはず。
出典:狩野元信《四季花鳥図》和漢兼帯の型──「山本英男」:アート・アーカイブ探求|美術館・アート情報 artscape
ところが、平面一直線だし、一枚、一枚の襖のサイズは小さいし、一番肝心な滝が流れる襖が、仏様を見せるために隠れていました。この絵は何? キャノンの技術じゃない。お寺の中で絵をたしなむ人が、見よう見真似で描いた感じ・・・・ そもそも、この部屋、檀那の間じゃないでしょ…(記憶の中の方丈の見取り図とすり合わせてました。見取り図、ちゃんと持ってくるんだった。)
せっかく案内されたというのに、さらなる消化不良状態に陥ったのでした。本当は「檀那の間」にキャノンの高精細画があるはず。それなのに見せない‥‥ どういうことなんだ! って
本物はこんな作品です。ここにあるものは、似ても似つかないものです。
\この作品は真?行?草?/
— サントリー美術館 (@sun_SMA) 2017年10月25日
元信が生み出した3種の画体の中で、「真」は緻密な構図と描線が特徴で、最もかっちりとした描き方✍️https://t.co/j4cKFw4ZpZ pic.twitter.com/gKi9YrhLbJ
その後、龍光院で出会った方とこの話をしました。「なんでもかんでも公開してしまうとお寺の空気が壊れる。写真を撮影することばかりに集中してしまうとか。だから閉ざしてしまうのだけど、本当に見たいと思ってきたってわかる人には、状況に応じて見せる。そういうのはありかもしない」
「本物と偽物はみてわかったの?」と言われ、「わかるも何も、明らかにちがいました」と話たところ、「それはいろいろ見てるからじゃない?」と言われたのですが、これはいろいろ見てるからとかでなく、一度見た人なら、絶対にわかるレベルの違いなのです。
特別に見せてもらえた・・・と思うものの、奥にまだ隠し持っている‥‥(笑) という思いを抱いたまま消化不良で戻ってきたのでした。
■あの部屋、あの襖はなんだったのか
戻ってきて、大仙院の構成を調べてみました。
写真撮影をしていなので、記憶が曖昧なのです。そして《四季花鳥図》のことしか考えていなかったので、庭を一切見ていませんでした。方丈の構成が、庭を見ていればつながるのでしょうがイメージできません。初めて周回すると方角がわからくなり、どこがどこであったのか、把握しにくくなります。
\大仙院方丈の障壁画/
— サントリー美術館 (@sun_SMA) 2017年10月31日
こちらは、京都・大仙院の方丈を飾っていた障壁画たち。
現在はいずれも掛軸に改装されています。
展示室には、大仙院方丈の平面図もご用意!
当時のお部屋の様子を思い浮かべながら鑑賞してみてください🎵https://t.co/j4cKFw4ZpZ pic.twitter.com/oqd34Asmu3
図面を乗せている建築家の方がいらしたので、お借りしました。
▼大仙院の配置図と平面図
床の間 考-2 (補足・「日本家屋構造」-9 )・・・・ 「用」とは何か - 建築をめぐる話・・・・つくることの原点を考える 下山眞司
▼方丈の写真と平面図および断面図
2007年5月のブログ記事一覧(2ページ目)-建築をめぐる話・・・・つくることの原点を考える 下山眞司
以上の図面から、どこをどのように回ったのか記憶をたどってみているのですが、どうしても思いおこすことができません。
庭の様子を含めた簡略図をのせて下さっている方がいらしたので拝借しました。
▼大仙院内部を図解
出典:師走の洛北・洛西 2007年12月29〜31日 大徳寺塔頭大仙院
この図を見て、「檀那の間」はどこにあたるのか・・・ そしてお土産売り場はどこの部分だったのか・・・ 図面と照らし合わせてみるのですが、記憶と一致させることができません。ひょっとしたら、「檀那の間」がお土産売り場になっていたような気もしてきました。
そして、上記で見取り図をお借りした方のブログを拝見すると僧侶について書かれていました。
師走の洛北・洛西 2007年12月29〜31日 大徳寺塔頭大仙院
お寺のパンフレットにしてはめずらしい広告入り・・・・
あまり近づきたくない雰囲気を感じてその場から離れたのですが、その間隔はまんざらでもなかったようでした。これも世の中の縮図‥‥ そんなことを感じていました。「総見院」のあと「龍光院」に向かって、いろいろお話をしながら考えさせられたのでした。
これだけの塔頭があれば、それぞれの考え方もあるはず。一枚岩とはいかないのかもしれません。運営方針もいろいろ。自分に合うところをみつければいいということなのかもしれません。
公開を拒む理由に、檀家さんがそれを望まないということもあるという話を聞きました。それが本来の姿なのかもしれません。しかしメディアに取り上げられた僧侶をタレントとして見る人たちに答えるところがあってもいいし、常に支えてくれる檀家さんと向き合う。そんな方針もあるのかなと。
【追記】2017.11.09 パンフレット広告はいつから?
この広告が掲載された経緯を調べてみました。なんと50年以上前からなのだそうです。前住職が30代でこの職についた時からのご縁だったそう。
今、様々な広告手法がとりだたされますがその走りでもあったようです。伝統とは革新だと言われますが、その先端を行っていたということのようでした。
キッコーマンが関西進出の時期と、住職の就任の時期が重なり、ご縁があって協賛をすることになったそう。だったらパンプレットに掲載しましょうか。そんな感じで決まり50年以上続いてきたということがわかりました。
イメージだけで判断してしてはいけないということ。いろいろな意味で話題になった住職は、物事のとらえ方、考え方も斬新で革新的だったということのようでした。
(それが、好きか嫌いかはまた、別ですが、世の中に出て行く人というのは着眼点が違うのだなと思った次第)
■《四季花鳥図》の正体判明
大きな勘違いが私の中にありました。それは、檀那の間には、高精細の複製画が展示されている。という思い込みでした。
問い合わせの時も、「本物は博物館に寄託してあり、ここにあるのは複製です」 それは当然キャノンのプリンターで印刷され、当時と同じ檀那の間に設置されていることを意味すると思っていました。
ところがどうしても腑に落ちず、結局、確認してしまいました。
ここの複製画は、仏間に置かれたもので大正時代に描かれたものだということがわかりました。サイズもこの場所に合わせた本来のものよりも小さく、8面あるところを、4面だけ、一直線に飾っているということだったのです。
奥に隠し持っていて見せてくれない‥‥ と、思っていたのですが、勝手な思い込みだったことがわかりました。m(__)m
どなたが描かれたのかわかりませんが、元信のあの作品の実物を見て、ここに展示されたものを見ると、ちょっとがっかり感が否めません。本来あるべき場所で、あるべき姿でみたい‥‥というのは、ここでは体感できないということがわかりました。
(もしかして、元信の作品を見た人のがっかりを避けるために、見せないのかも…とか(笑))
「本物とレプリカを比べてみる」という今年の鑑賞テーマは、面白い側面を見ることができました。やはりこれも行ってみなければわからないこと。そして思い込みは危険(笑)ということもわかりました。
■関連
写真撮影できた頃の
〇12.大仙院庭園 ( 京都府 ) - 百寺巡礼・名庭散策 - Yahoo!ブログ
〇大徳寺 大仙院 Daitokuji Daisen-in Temple 天空仙人の神社仏閣めぐり
〇大仙院〔大徳寺〕,Daisen-in Temple,Kyotofukoh ◎
イメージ図
絵葉書より
〇大仙院 - 京都の観光名所をMAPから散策するWebtown-京都
襖絵 1995年 四季耕作図?