「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美と知の迷宮」の試写会が過日、1月14日に行われました。上映終了後に、東京造形大学 池上英洋教授とTakさんによるトークショーが行われる特別試写会。松竹本社の試写室にて行われたプレミアム感いっぱいのイベントでした。映画やトークショーの内容については、参加された方からそれぞれにご紹介されると思いますので、私はレオナルド・ダ・ヴィンチが行った「解剖」や「科学」という視点から、この映画を「解剖」(?)してみたいと思います。その前に映画の概略について。
1.映画概要
事前に予習を・・・と思ったのですが予告編を見ただけ。
監督:ルカ・ルチーニ
制作:2015年
公開:2017年1月28日 シネスイッチ銀座ほか全国公開
公式サイト:『レオナルド・ダ・ヴィンチ 美と知の迷宮』
「ダ・ヴィンチコード」のようなミステリー映画かと思っていたら「ドキュメンタリー映画」でした。
2.映画の内容
2-1 イントロダクション
ルーブル美術館の壁から、《ラベルフェロニエール》 がはずされ、ミラノ万博、「レオナルド・ダ・ヴィンチ特別展"leonardo1452-1519”」の会場へ運ばれていくというシーンからスタートします。
後半のトークショーで、池上先生から、このシーンについての指摘がありました。
「絵を手で運んだりはしませんから・・・
万が一、落としてしまったら大変・・・」
日本では、日通さんが・・・ と笑いを交えて語られていました。
↓ 下記の《ラベルフェロニエール》の絵について、専門家の解説が続きます。
《ラベルフェロニエール》 専門家による絵の解説
2-2 ドキュメンタリーは「美の巨人のたち」風
さらにレオナルド・ダ・ヴィンチの研究家たちが、彼の才能について語ります。
また、レオナルドの周りにいた「モデル」や「弟子」たちが、自分とレオナルドの関係を自分語りしていました。レオナルドのモデル(ミラノ公の愛人)、ライバル心むきだしの丁々発止や、弟子同志も対峙したバトル。それぞれの目を通したレオナルドの姿が、ドラマ仕立ての寸劇から浮かびあがってきます。
このスタイル、アートファンには同じみの以前の「美の巨人たち」の構成とよく似ています。美術解説をしつつ、その間に寸劇を挟んで、笑いを入れ息抜き。さらに、笑いを誘う再現ドラマは、学術的な新しい知見であると思われます。そして高画質4K映像での上映。⇒【*1】
レオナルド・ダ・ヴィンチという人物を、当時、彼の周りにいた人間たちの目から、多角的にあぶり出し、レオナルドという人物に新たな解釈を加えるといった内容でした。
3.レオナルド・ダ・ヴィンチ研究
3-1 話しているのは誰?
笑いを誘う弟子たちのバトル。レオナルドの寵愛を受けているのはどちらか。そんな語りに「あなたはそう思っているのかもしれないけど、レオナルドは、本当にそう思っていたの?(笑)」「それってあなたの主観じゃない?」と心の中でつぶやいていました。
このように、語らせている人がバックにいるということが見え隠れしました。この解釈は、レオナルド・ダ・ヴィンチ研究において、コンセンサスが得られている一般的な解釈なのでしょうか? おそらく独自の新たな解釈で、研究者によっていろいろな見解が分かれそう・・そんなことを思いながら見ていました。
3-2 学説はいろいろ
⇒池上先生談
レオナルド・ダ・ヴィンチについては、
研究者の数だけ、いろいろな説があります。
この映画は、映画というスタイルを通して、美術界におけるレオナルド・ダ・ヴィンチ研究の新知見を知る入り口にもなっているのだと思いました。
実際に、池上先生のトークからも、「ここは同意するけども、ここの部分は・・・・」といった、学究系の丁々発止も、垣間見られたように感じられました。
4.レオナルド・ダ・ヴィンチの認知度
誰もが知る有名な画家です。その名を聞いて、まず思い浮かべるのがモナリザです。そこから先、何を知っているか・・・・というのは、人によって大きく分かれるところだと思います。この映画に興味を持たれる方というのはある程度、レオナルド・ダ・ヴィンチのことを知っている方だと思うのですが、レオナルドのことをあまり知らなくても、楽しめる部分があるのではないでしょうか?
4-1 「レオナルド・ダ・ヴィンチ」=「モナリザ」からのスタート
私も「レオナルド・ダ・ヴィンチ」=「モナリザ」でした。が、国立科学博物館で行われた「人体の世界」を見て、彼が解剖を行っていたことを知りました。
レオナルド・ダ・ヴィンチって画家だとばかり思っていたのに、解剖なんてしていたの? しかも、解剖学の礎を作っていたらしいのです。
レオナルドは、あらゆるジャンルに精通していたことを知りました。音楽、建築、数学、幾何学、解剖学、生理学、動植物学、天文学、気象学、地質学、地理学、物理学、光学、力学、土木工学・・・・
これだけの広範囲に渡る研究の数々。レオナルドに対する興味や知識がほとんどなくても、上記に関連する趣味や学びの経験があると、それが入り口となってレオナルドに興味がわくきっかけになりうると思うのです。「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美と知の迷宮」の映画も「万能の人」であることが、あちこちにちりばめられているので、画家レオナルドとは違う部分から、興味を持つきっかけになる可能性があります。
私の場合は、「解剖学」がレオナルドに興味を持つきっかけとなりました。今回の映画を「解剖学」との関係で見てみようと思います。
(続)⇒ ②レオナルドの根源は「解剖学」にあり!?
■関連
■「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美と知の迷宮」 ②レオナルドの根源は「解剖学」にあり!? ⇒次
■【試写会感想】「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美と知の迷宮」 ①再現ドラマから浮かびあがるレオナルドの姿 ⇒ここ
■face book:ドキュメンタリー映画『レオナルド・ダ・ヴィンチ 美と知の迷宮』
↑ 試写会でおこなわれたトークの様子や、絵の解説、他の方のレビューなどが
順次、紹介されています。
■脚注
*1:■ 4K映像は《最後の晩餐》だけ(2017.1.31追記)
↑ てっきり映画、すべてが4K映像なのかと思っていました。映画がスタートして、絵画が映し出されたのですが、正直なことを言うと、あれ? これが4K? もっときれいな画像かと思ってたのに・・・・と思いながら見ていました。というのも、若冲展で8Kの映像を見ていてそのすばらしさに息を飲んでいたので、それに匹敵するような感動があるとばかり思っていたので(笑) よく見ると、《最後の晩餐》だけが4K映像って書かれていました(笑) でもちゃんと、画像の良し悪しを見極めていたと自画自賛。その代り、《最後の晩餐》はその流れで見てしまったため、画像のよしあしをあまり認識できていませんでした。見る時には、4Kと2K画像の違いも要チェック!
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