コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■みらい美術館:究極のガラス芸術 「エミールガレ展」ーフランスの薔薇 大壺ー

みらい美術館で行われている「究極のガラス芸術「エミール・ガレ展」 今回の目玉作品は「フランスの薔薇」大壺です。じっくり見ると様々な魅力が浮かび上がります。学芸員ならではの見どころをじっくり解説していただきました。

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 「フランスの薔薇」大壺 1902年

下記の記事で、エミール・ガレ(以下ガレ)の生前作品や工房作品の見どころをご紹介しました。


今回の展覧会の真打ともいえる「フランスの薔薇」大壺の超絶技巧は、ただ見ているだけでは、その真価はわかりにくいかもしれません。驚愕のテクニック満載です。見れば見るほど、じわじわと魅力が滲み出してきます。展示する側も、いろいろな技を駆使してより魅力を引き出そうとしています。みらい美術館学芸員、野依良之氏に引き続きお話を伺いました。

 

 

■幻の名作「フランスの薔薇」が横浜に!

ガラス作品というのは、はかなく破損しやすい特徴があります。文献に写真とともに記載されており、存在は確認されているものの、今は所在がわからないという作品もあります。「フランスの薔薇」大壺も、そんな作品の一つでした。

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「フランスの薔薇」大壺 1902年 

正確な年はわからないのですが、1950年頃のオークションに出たらしいという話を最後に、行方がわからなくなっていました。

そんな「フランスの薔薇」大壺が、長年、ヨーロッパの個人コレクターの元で、秘蔵されていたことがわかりました。その間、一般公開されることなく、静かにひっそりと眠っていたのです。「幻の名作」と呼ばれていた大壺。1902年に制作され、1世紀以上の時を経て、横浜の地にやってきました。晴れて私たちの前にその姿を表すことになりました。

2019年の「エミール・ガレ IN 横浜」で、一度、公開されています。ご覧になった方もいらしゃるかもしれませんが、ぜひまた改めて足を運んでいただきたい名品です。最初に見た時とは別の魅力がきっとみつかるはずです。

 

 

学芸員が指南 「フランスの薔薇」の見どころ

大壺の主要な見どころは、インターネットミュージアムでもご紹介しました。

しかし、それだけではありません。ご紹介できなかった鑑賞ポイントが、まだまだあります。(写真は、今回、撮影できなかったものについては、2019年「エミール・ガレ IN 横浜」の写真も含まれています。)

 

〇繊細な蕾 アプリッケ

まず最初に目に入ってくるのは、ふっくらとした薔薇の蕾です。固く閉じた蕾の先端は、これからほどけて開こうとする様子を繊細に表現しています。そして蕾の表面には、花弁の端がねじれるように彫刻がされています。この繊細な細工を見ただけでも技術の高さ伝わってきます。

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*この写真は2019年エミール・ガレ IN 横浜」で撮影したもの

 

〇透明度の違うガラスの組み合わせ

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蕾の色に注目して下さい。単一のピンクに見えますが、微妙に色合いが違います。透明度の違うガラスが使われています。「透明ガラス」と「ピンク色のガラス」を練って蕾の形にし塊を作ってから溶着しています。

目線を下げて、蕾の先の下方から見上げると、透明なガラスの透けた部分が確認できます。光にかざして見るのがコツです。表側からは見えない蕾の内部に細工を施すという手の込みよう。これまで見たことがありませんでした。

透明ガラスの部分は、濃いピンクの影響を受けているのか、部分的に薄いピンクにも見えて複雑な色と表情を醸し出しています。この細工は解説がないと気づかずに見過ごしてしまいます。

 

〇蕾の表面の加工

さらに、蕾の表面には、緑や青の色の異なるガラスを被せています。うっすらと被せているので、ちょっとした角度の違いで、見えたり見えなかったりしています。目線をずらしながら、色の発色をみつけてみて下さい。

 

〇厚みのあるアップリケ 

蕾はアップリカッションと言われる技法で、ガラスの塊を作っておき、本体を再加熱して溶着するという方法です。 溶着することは比較的簡単だそうですが、難しいのは、冷やす時に破損が起こりやすいこと。そのためゆっくり時間をかけて冷やしていきます。なんと3日もかけて冷やすのだそうです。

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また蕾のように膨らみが大きければ大きいほど、温度差で割れやすくなります。その上に、透明度の違うガラスを練り込んでいるわけです。収縮率は複雑に影響し、冷やす過程の破損リスクは劇的に大きくなります。そんな複雑な構造の蕾を、大きな本体のガラスに溶着しています。

 

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大型の本体と小さな蕾の収縮率の差。本体には性質の違うガラスを使った複雑な技法もたくさん施されています。そこに厚みのある複雑な蕾をつけているのですから・・・ 神懸かり的としか言いようがありません。

このアプリカッションという技法は1900年から1904年、最晩年にのみ使われた究極の技法ともいえます。

 

これまでアップリッケのついた作品を見て思っていたのは、随分とゴテゴテとした仰々しい装飾をつけたものだなぁ・・・ 技術は確かにすごいとは思うけど、造形的、デザイン的には、私の好みじゃないなと思っていたのが本音でした。

ガレの技法に興味を抱いたのは事実ですが、それによって出来上がった造形には好みの差がありました。技法については、ある程度はわかっているつもりではいましたが、今回、実際の制作工程をより細かに具体的に理解でき、作業の大変さがよりイメージされるようになりました。同じ作品、同じ技術も全く違うものとして受け止められるようになりました。

 

一つしかない大壺の意味。その裏で、どれだけの数の失敗や破損があったことでしょう・・・ 困難な技術は、この部分だけではないのです。そんなことを想像するとハラハラしてきてしまいます。 

 

  

〇足の部分の斑紋の妙  

ガラスに金属を混ぜて焼成すると、下の写真のような斑紋ができます。加える金属の種類によって色が変化し、温度によっても発色が変わります。これらの技法は、作家の秘伝となり、それぞれの腕のみせどころ。サリシュールと言われる技法です。

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水色や緑の斑紋は、粉状の酸化金属によるもの。条件による色目の変化など技術的に高度な作品です。 

 

象嵌技法でつけられた葉

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壺につけられた葉は、ガレのオリジナル技法で制作されています。

数㎜の厚さのガラス板から葉の形を作り、再加熱した本体に一枚、一枚貼り付けていきます。この時、葉の裏を研磨して不純物を取り除きます。

この方法は、家具の寄木細工や革細工などでも用いられる技法でマルケットリー(象嵌技法)と言われています。1898年、特許を取得しました。

象は「かたどる」嵌は「はめる」の意味があり、形どったピースをはめ込むというイメージでしょうか。

ガラスの場合は、はめこむにために、本体を熱する必要があります。ここでもまた熱したり冷ましたりが繰り返されるわけですから、収縮による破損の危険にさらされます。どのステップでも破損の危険を抱えながら、それを通り抜けてきたきた作品と言えます。その上で、葉が無事、つけられたあとも、表面に葉脈など、彫刻を加えるという手の込みようです。

 

〇水滴のような光

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*写真は2019年エミール・ガレ IN 横浜」で撮影したものをトリミング

写真では捉えることができていませんが、左側の蕾の緑のガクのとがった先端あたりや、蕾の花びらの先に、光って見えるところがあります。まるで、水滴がついているかのような情景です。

最初は、光の加減できらめいて見えるのだと思っていました。しかし光る場所は同じ場所のようなのです。ここに、ガレのち密な計算と高度な技が潜んでいました。

ガクや蕾の花びらの先端を点でカットし、フラットな状態にしてしてるのだそうです。ザラザラではなくフラットにカットできる素材のグラインダーを用いて研磨して、光を強く反射させていたのでした。それがあたかも水滴がついているかのように見えていたことがわかりました。前回の「エミール・ガレ IN 横浜」では、気づかなかったことでした。

 

〇全面の彫刻 繊細な彫刻 グラビュール

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*写真は2019年エミール・ガレ IN 横浜」

壺全体に、よく見ないとわかりにくい透明な彫刻がされています。表面をグラインダーで削るグラビュールという技法です。本体だけでなく、溶着された蕾や茎、葉にも彫刻されています。

明らかに確認できる彫刻の一方で、サンドペーパーをかけたようにザラザラした加工で、壺全体をおおっている部分もあります。どこまで手を加えたら気がすむの?と思ってしまうほどです。

一見、何もなさそうなところにも、何かがあります。光のあたったところをよく見ると壺の表面には、細やかな加工の様子が確認できました。

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*写真は2019年エミール・ガレ IN 横浜」

  

〇マルトレ(ハンマーでたたかれたという意のフランス語)

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*右の写真は2019年エミール・ガレ IN 横浜」で撮影

壺の表面を見ていると、細かな細工とともに、特徴的な槌目模様も目に入ります。槌目はガラス表面に金槌でたたいてつけたような模様のことで、指輪や雪平鍋の表面にも同様の加工がされます。

この加工をすることによって、光を当てると乱反射がおこり、作品に独特の雰囲気を与えるのだそうです。この細工は、すぐ目に飛び込んできました。ガレの狙いどおりだったのです。

 

グラビュールの実際の作業

ガレのガラス作品の特徴は、非常に難しい超絶技巧の装飾をガラスに施したあと、さらにグラビュールという彫刻をしている点にあります。

現代の感覚でその作業をイメージすると、大きな本体を固定してそこに、グラインダーで削って彫刻をする様子を想像します。

ところがガレの時代の作業は、壁にグラインダーが固定されており、ガラス器をグラインダーに押し付けて、ガラス本体を回転させながら作業をしていたというのです。それを伺い、これまでの驚愕の技が、この世のものとは思えないものになってしまいました。

大きな作品の本体を手で保持しつつ、動かしながら彫刻をしていたなんて・・・・ 一瞬の気のゆるみが大惨事を引き起こします。そんな緊張感の中で、作品を作り続けていたのかと思うと、これまで見てきた作品の見方が根底からひっくりかえされる衝撃でした。

ちなみに、グラインダーの先の素材や形状には、実に様々なものがあります。貝のように薄いもの、コルクや木は、光沢を出します。ザラザラしたものを使うと、光沢が押さえられマットな質感になります。このようないろいろな刃を使い分け、ガラスにあて、カット技術の組み合わせによって、光の輝きを変化させ、作品に赴きを与えていたのでした。

 

 

〇ガレ作品の見方が変わる

これまでは、細かくて繊細な作品だなぁ…と思いながら見ているだけでした。今回は、アプリカッション、マルケットリーといった装飾技術が、単なる張り付けただけのものではなく、非常に難易度の高い超絶技巧であったこと。その上に、彫刻を施していたことを理解しました。

これらの装飾に彫刻をするということは、細心の注意の上に注意をはらわなければならないことだったのです。さらに、その彫刻が、壁に固定された刃に、本体を押し付け動かしながら行っていたという制作の知られざる真実を知ることとなり、作品に対する見方が、一転しました。技術者側の心境に襲われて、緊張が走ることも・・・

 

〇あえて加工しない緩急

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徹底的に加工を施す一方で、加工をしない部分を残しているというのもガレらしさを感じさせます。削りすぎてしまうとどのようなガラス生地だったのか、わからなくなり、制作の過程を追うことができません。そこで「あえて見せようとしたのでは?」というのが野依氏の推察です。

実際に日本のガラス作家さんに伺ってみたところ、同様のことをしますというお話をされていたそうです。

わかる人にだけ見てもらいたいという意図が感じられます。自身の技術のすばらしさを見せつけたかったのでしょうか?あるいは、この技術を誰かに引き継いで欲しいという思いもあったかもしれません。あれこれ想像しながら見るのも楽しさがあります。

 

 

■ライティングについて

ガレの作品の魅力を引き出すために、さまざまなライティングの工夫がされています。野依氏に伺ったお話とともに、これまでの鑑賞体験から得た光のとらえ方を紹介いたします。

〇特注ケースを注文

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「フランスの薔薇」大壺は、みらい美術館の第一級品といえる作品であることがわかりました。この作品が持っている魅力を最大限に引きだすためには、どうすればよいのか。どんな光をあてたらよいか、様々な研究を重ねてきたそうです。

その結果、作品のための専用ケースを制作することになりました。ところが国内では、思い描くようなケースは作れないことがわかり、ドイツのメーカーに発注したそうです。細かな指示をこちらから伝えて制作された特注品です。

一つの作品に特化し最高の状態で見せるための専用ケース。これまでの展覧会でも国宝、曜変天目茶碗など、茶碗に合わせて特別ケースがあつらられているのを見てきました。

みなとみらい地区の小さな美術館でも、こだわりぬいて館の一級品「フランスの薔薇」のために、海外製の特別ケースがあつらえられていたのでした。そんな贅沢な展示のライティングの秘密を探ってみましょう。

 

〇目に飛び込んでくるのは、主催者が見せたいところ

何気なく見ていても、目に飛び込んでくる部分というのがあります。それは主催者が自然に目に入るような仕掛けをしているようなのです。意識しなくても目に入るもの。そして、どこを見て欲しいのかな? と探りながらまずは鑑賞してみます。ひととおり見終えたら・・・

 

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*写真は2019年エミール・ガレ IN 横浜」

壺に光がスポットライトのように集中してあたっている部分がありました。その部分というのは、よ~く見ると、何か秘密が隠れていることが多いということがわかってきました。

このスポットのあたっている部分は、 展示する側の「ここを見てね」というメッセージと理解するようになりました。

ただ、最初からこの光をたよりに見るのではなく、まずは、自分の目で、どの部分が目に飛び込んでくるのかを感じるようにしています。そのあとに、スポットで照らしている部分を確認するように追うと、最初に気付けなかった隠れ技を発見!という楽しみをみつけることができたりします。

 

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*写真は2019年エミール・ガレ IN 横浜」

もう一つ、作品の影にも注目。影から光がどの方向から当たっているかがわかります。それによって何を照らそうとしているのかが見えてきます。見逃していた細工に気づけることもあります。

 

 

〇どんな光で見せる? 自然光を基本

照明技術が上がると、見せるシチュエーションも様々な条件を設定した演出ができるようになると聞きます。ガレの時代と同じ照明の中で見せたり、現代的な解釈を加えて見せたり・・・ 今回はどのような光を設定されたのでしょうか?

 

〇ガレの時代の光は?

それを知るにあたり、ガレが作品を制作する背景を知ることがポイントだと語られました。

ガレの作品は、自然光で見ることを基本として制作されています。グラビュールなどの彫刻は、窓ガラスの自然光のもとで、角度を変えて光をあて、刃を使い分けて制作していました。

表面に光沢を持たせたり、ザラザラにしたり。ガラスへの彫刻の作業は数か月に及ぶと言います。そのため、自然光も昼もあれば夕方もあり、また晴れの日もあれば曇り、雨の日もあります。そうした様々な光を捉えながら、試行錯誤し彫刻を加えていきました。

夜の照明をあてたりしたのでしょうか?

エジソンによって電球が一般化されたのが1879年。1900年頃のガレが過ごしたナンシーはまだ、電線は通っておらず明りは普及していなかったそう。

そのような時代背景からも、みらい美術館の照明は、自然光を一番の条件として再現することにこだわっているそうです。そのため、照明も限りなく自然光に近い電球を選んだと言います。

ガレが求めた見え方に近づけて再現する。ライティングによって表情はさまざまに変化します。制約もありますが、その中で可能な限り、いろいろな表情をいろいろな面から見せていくことを考えていると語られました。

 

 

〇技術を見せる

光によってガレの技術を見せることにも力を注いでいます。光沢、半光沢、光沢の変化、カットや刃の使い分けなど、あらゆる技法を注ぎ込んだガレの集大成。それらを照明の角度を変えたり、様々な研究をし、幾重にも変化する魅力を引き出そうとされています。

 

「フランスの薔薇」大壺。ガレの技術とともに、それを引き出そうとする技術の進化もまた見どころです。 

 

 

 

■ガレの魅力 

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学芸員の野依氏は、ガレの魅力について次のように語ります。

ガレは、英才教育を受け、子供のころから文学、哲学、異国文化を学び、情操教育を受けてきました。それらが美しさへと昇華している点が魅力であると。技術的にすぐれた作家は他にもいます。しかし、ガレのように美しさを伴って技術を持った人は他にはいないと・・・。

ガレの幼いころから培われたバックボーンによって、技術を美しさと融合させたところが魅力。

それは視覚的なことだけなく、触覚、手触りにも表れていると言います。ガレの手のひらサイズの作品にそれがよく表れているそう。手に乗せて初めてわかる独特の感触。この手触りは他の作家の作品には見られない特徴なのだそうです。

たくさんのガラス工芸品を、ご覧になり、手にされた方ならではのお話です。鑑賞される方には、手にしていただくことができませんが、手触りを想像しながら見るという、新たな鑑賞の視点をいただけました。

ガレは、見る側が勉強すればするほど、こんなこと、あんなこと、新たな発見をもたらしてくれるといいます。一つの作品が進化していく様子も見えてくるのだそう。徹底的に技術を費やして制作された作品。難しい技法全てを注ぎ込み1点だけが残った「フランスの薔薇」大壺の魅力をぜひ見つけて下さい。

 

【取材を終えて】 

今回、表面的な理解しかしていなかったガレの技法。その具体的な工程を知り、作品に対する捉え方がガラリと変わりました。ガレの背景にある知的教養の世界も勉強をしていくと、また別の深みがみえてくるだろうという期待が持てます。

創始者の鶴見氏が意図した「審美眼」を鍛えること。ガレのどんな作品に美しさを感じ、何に魅力を見出すのか。それぞれの「審美眼」もありそうです。

ガレは根強い人気のある作家です。その一方で、グロテスク、悪趣味と感じる方も・・・ ガレとドームならドームが好き。生前、工房作品なら、生前が絶対。それぞれの中に審美がありそうです。 

私がガレに魅力を感じているのは、技術や工程、その背景にある科学。自然を愛し観察することからヒントを得て、造形する表現にガレのエッセンスでもある自然への賛美を感じられるところです。

しかし、その出来上がった形は、あまり好きではないという矛盾に、おもしろさを感じています。それでも惹きつけられ、展覧会に出向きます。それは、見るたびに、新たな発見があるからなのでしょう。

造形はあまり好きでないと思っていたのですが、そんな中で、森を表現した作品は好きだったことに気づきました。形は好きでなくても、制作の過程を知ると、作品が愛おしくなってきます。

同じガレ好きでも好むポイントが違います。見る人それぞれの中にその人なりの「審美眼」の基準があって、自分が好きな「美」を知るとともに、人の好きな「美」の価値も知る。それによっても新たな発見が広がっていきそうです。

 

 

やっとわかった気がしました。ガレが作り出す造形は好きになれない。そんな造形の中に、「生き物の営み」や「自然の摂理」「輪廻転生」「循環」「進化」「淘汰」など「自然の理」を感じさせてくれることにひきつけられているようです。・