「エミール・ガレ 自然の蒐集」では、「森」と「海」にスポットをあてた展示が行われています。ポーラ美術館が位置する箱根の大自然と、ガレの作品。ガレが見ていた世界を実際に体験しながら鑑賞できる、またとない展示です。
*撮影は可能ですが、撮影禁止作品があります。禁止作品は許可の上、撮影しております。コラージュ加工の了解も得ております。
■ポーラ美術館周辺の「自然の蒐集」
〇葉が茂っている時には見えない姿が(2018.3月)
葉に埋もれている時には見えない朽ちた樹木が見えます。森林は定期的に更新されています。木の幹には、木が腐敗して洞ができていました。春や夏には葉が茂っているので、これまで、気づきませんでした。この洞は、また新しい命を育みます。まさに、ガレが表現しようとした世界がここにあります。
何度も訪れているポーラ美術館ですが、もう一つ、新たな発見! 入口の扉は木製、その扉に彫り物が施されていたのでした。扉の裏側にも施されています。バスを降りると、人の流れで扉は開きっぱなしになります。そのため入館時に気づきませんでした。こうした発見がうれしい‥‥
〇森の遊歩道 新緑(2016.5)
2年前の春に訪れたときの「森の遊歩道」です。
当時の日記⇒『ポーラ美術館:森の遊歩道』コロコロさんの日記 [食べログ]
これから、緑が芽吹きよい季節になっていきます。
〇樹齢300年のブナ
枝の腐敗が始まり周囲への影響が心配されるように。2010年、上部が伐採されました。しかし幹からは、新たな枝が芽吹いています。
〇ブナの木倒壊(2016.7.5)
森の遊歩道のシンボル、樹齢300年のブナの巨木跡が、昨日完全に倒壊してしまいました。2010年の枝があったころの写真、腐食のため枝を切り落とした後の昨年夏の写真、昨日の写真をご紹介します。 pic.twitter.com/yCvxNLXRRy
— ポーラ美術館 (@polamuseumofart) 2016年7月5日
そんな生命力も、とうとう300年の命を全うし幹の部分も倒壊してしまっていたことを知りました。倒れた木は、また新たな命の源となって、森にバトンを渡していきます。
〇箱根の雪景色を背景にガレの雪作品
タイムリーにも、大雪のあと、残っていた雪景色。午後にはすっかり解けて激変します。
〇箱根の自然とガレの作品
こんな箱根の自然に囲まれたガレ作品の数々。ナンシーの森を思い出しているのではないでしょうか? ベストシチュエーションの展示に感じられます。
箱根の森とガレの作品 森からのコレクション (写真中央) Photo : Ken KATO
「わが根源は森の奥にあり」
オランダ生理学者 ヤコブ・モレスポットの『生命の循環』に感化されたガレ。ナンシーの家具職人、ウジューヌ・バランにアトリエの門扉制作を依頼。上記のガレの言葉を彫らせました。
ちなみに、ポーラ美術館の扉も木製で彫り物を発見しました。妙な一致です。
■ガレ「森」をモチーフにした作品 フォトアルバム
〇《樹木文花瓶》北澤美術館
見る位置によって透明度が変わります
周回してみました。
〇私の好きなガレ作品
ガレの作品は、ゴテゴテしていてあまり好きではない‥‥ と言いながらも下記のような作品は好みです。こうして並べてみると自分の好みに、何か共通点を感じさせられます。
館長曰く、この時期の箱根の山は、ガレの作品のイメージと似ている‥‥ まさに上記の作品のようなイメージかな? と思いました。
〇第1章 初期ーエナメル彩の魅力 から
陳列棚と思って、作品を集合体として見てしまっていましたが、2度目は、作品を一つ一つ確認。これらの作品、通常ならガラスケースに一つ、一つ、飾って展示してもおかしくないクォリティーの作品ばかりです。とても贅沢な陳列ケースです。
〇第2章 神秘の森から
〇自然の摂理を描く
《ケシ文花器》1900年頃 ポーラ美術館蔵
ガレは奇抜なデザインとして植物を利用しただけでなく、進化、生態、芽が出て花開き散るという自然の摂理を植物を通して見続けていました。上記のケシの花は、ケシの身が繁茂するだけでなく、ハラハラ散る花びらに、生命のはかなさ循環を表現しました。
(参考:図録p43)
ガレは芸術家として、学者として植物、樹木、花を学びました。
ここ箱根の森からも、生きた教材として学ぶことができます。
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