「追記」しました。2017.11.19
~孤高の画家 木島櫻谷~
来年のことを言うと鬼が笑う・・・と言いますが、2018年に開催される都内の4美術館の合同記者発表が、パナソニック東京汐留ビル 5Fホールにて行われました。2018年に開催される企画展についての紹介がありました。
▲都内4館の館長
■2018年 企画展示内容
4館の2018年に開催される美術展について、館長、ならびに学芸員より内容や見どころについて解説がありました。それぞれの館で行われる企画展、開催期間の一覧です。
■勝手に気になった企画の見どころ紹介
各館より、企画の意図や思い、見どころなど、限られた時間の中でご紹介いただきました。見る側はそれぞれに興味もあるので、独断と偏見で、個人的に気になった展示を紹介します。
■静嘉堂文庫美術館
歌川国貞展 ~錦絵に見る江戸の粋な仲間たち~
現在「北斎とジャポニスム」が国立西洋美術館で行われていますが、個人的には「北斎」だけじゃなかったはずと思っています。国貞の作品から北斎に劣らない素晴らしいテクニックや構図など見つけだしてみようかな?
酒器の美に酔う
先日、美の巨人で曜変天目茶碗がとりあげられましたが、来年、曜変天目茶碗を見ることができるのはこの時だけ。前回は高さを低くして内部までじっくり見ることができるように展示されていました。来年はどんな見せ方をしてくれるのか楽しみ・・・・ テレビで見た自然光のつやつや感も見てみたいなぁ・・・
─ 明治150年記念 ─ 明治からの贈り物(仮題)
狩野芳崖とともに近代の狩野派として生き残る道を模索した橋本雅邦の《龍虎図屏風》の出品。さらに明治工芸の様々な作品の展示は、同時代の作品が展示された他館と一緒に見るとより理解を深められそうです。パナソニック汐留ミュージアムで行われる「ヘレンド展 ― 皇妃エリザベートが愛したハンガリーの名窯 ―」でも西洋の超絶技巧を見ることができるので、合わせて見ると東西の違いが浮き上がるかも。
■泉屋博古館 分館
特別展 木島櫻谷― ParrtⅠ 近代動物画の冒険
あまりメジャーでない読み方すらよくわからない作家を取り上げることの多い泉屋博古館。「このしまおうこく」と読みます。先行して京都の博古館で行われていますが、初公開のライオンは、近代の動物画として確立された迫力に満ちています。江戸から近代に向けて動物表現がどう変わったのか・・・・ 洋風化の中ので日本のオリジナル性はどう保ったのかを捜してみたいです。
特別展 木島櫻谷― ParrtⅡ 木島櫻谷の「四季連作屏風」+近代花鳥図屏風尽し
《寒月》という作品。私はいいなぁ・・・と思ったのですが、夏目漱石は、いたずらに洋風を追随していてぼろくそだったらしいです。そんなにダメかなぁ・・・ 漱石がどこをダメ出ししたのか確認してみようかと・・・
【追記】2017.11.19 日曜美術館にて 「漱石先生 この絵はお嫌いですか ~孤高の画家 木島櫻谷~」
現在行われている京都文化博物館の「木島櫻谷」展の紹介の中で、夏目漱石が《寒月》について酷評をしたことについて取り上げられていました。
漱石が朝日新聞の記者時代に文展一等を受賞した作品に対して次のような論評をしたそう。
「木島櫻谷氏は去年沢山の鹿を並べて二等賞を取った人である。あの鹿は色といい眼付といい、今思い出しても気持ち悪くなる鹿である。今年の「寒月」も不愉快な点に於いては決してあの鹿に劣るまいと思う。屏風に月と竹と夫から狐だかなんだかの動物が一匹いる。其月は寒いでしょうと云っている。竹は夜でしょうと云っている。所が動物はいえ昼間ですと答えている。兎に角屏風にするよりも写真屋の背景にした方が適当な絵である。」
漱石はどのように否定したのかと興味を持っていたのですが、背景が夜なのにキツネの目が昼。その矛盾をついているようなのですが、絵というものはそういうものなんじゃないのかなぁ? 何でそんなことを言ったんだろう・・・ と思いながら聞いていました。
ただ、私もそうした矛盾をみつけたとき、それが画家の世界観というものだと理解できる時と、それは分かっていても、どうしても許せないと感じる時があるということを経験してきました。(ミケランジェロの肉体など)
そのため、漱石にとっては、夜なのにキツネの目が昼の状態という矛盾というものをどうしても許容できなかったんだろうな‥‥と理解しました。(例えば、漱石は動物学にも長けていて生態的に絶対にありえない! と思ってしまうと許容できなくなるみたいな・・・)
一方、漱石は作家という立場で酷評をしたと思っていたのですが、朝日新聞の記者時代の論評の中でのことだったということに、漱石の気概のようなものを感じました。文展一等賞という、権威が認めたものでも、それを酷評ができる自信のようなものを感じました。誰がなんと言おうと自分は認めん! 美術展の記事の多くが横並びと感じることが多い中で、この時代のジャーナリズムのようなものを感じたのでした。
漱石の真意はどういうことだったのだろう‥‥ と考えていたところに、漱石の研究者でもあるお孫さんがインタビューを受けて語られました。まずは、あまりにひどすぎる物言いだったとお詫びをされたことが印象的でした。そして身内だからこそ漱石の心の内が読めるのかも…という考察をされていました。
漱石の苦悩が読み取れると。明治に入り、西洋の影響を受けながら、自分たちの絵を求めて苦悩する画家。そこには矛盾をはらみ、身もだえしている居心地のわるさがある。それはとりもなおさず、自分のかかえる近代の矛盾と同じで、自分の姿を見るような気持ち悪さだったのでは・・・と。
よく親が、子供の行動を見て自分の悪い部分がそのまま受け継がれていて、いやになる感覚と同じ?
今の時代から明治の夜明けを見て、その時代がどういう時代かを傍観的に見るのと、その時代に投げ込まれた当事者として中かを見る視線の違い。さすが、血を受けたお孫さんの考察に思えました。
これまで、漱石の言葉をどのように解釈されてきたのか、興味深くなってきました。
東京の巡回展は下記のとおりです
Part I 近代動物画の冒険 2018年2月24日(土)~4月8日(日)
Part II 木島櫻谷の「四季連作屏風」+近代花鳥図屏風尽し
2018年4月14日(土)~5月6日(日)
《寒月》はpart1 2018年2月24日(土)~4月8日(日) 要チェックです!
特別展 狩野芳崖と四天王 ─ 近代日本画、もうひとつの水脈 ─
現在、サントリー美術館で狩野派の基礎を作り上げた「狩野元信」展が行われていますが、400年という長きに渡り引き継がれ、明治期にいかに流派の画流を近代絵画にひきついだのかという視点で見直してみたいと思います。
京都市中京区の京都文化博物館で 「木島櫻谷の世界」展が開催中です。12月24日(日)まで。
会場 京都文化博物館 2階総合展示室
住所 京都市中京区三条高倉
■泉屋博古館
絵描きの筆ぐせ、腕くらべ ─ 住友コレクションの近代日本画
画家の筆ぐせをさぐる。面白い試みです。地域に根差した画家の筆癖というものが存在していたそうです。ところが近代、その筆くせは作らない方向に。東山魁夷の作品などがそう。なぜ筆クセを作らなくなったのかは見てのお楽しみ・・・とお預けでした。
私の推測
近代になると、個性を好まなくなってきたのではないか。また、広くひろめていくためには特徴的な個性よりも、万人受けする方がよいという判断もあったのでは? 個性は好きな人は好きだけども、反発も大きい。そんなことから時代が下るとあえて没個性の方向に進み、絵画というものが一握りの人たちのものでなく大衆に行きわたるような方向を選んだとか?
なんて想像をしましたという話を学芸員さんにさせていただきました。大阪で見ることができる方は、ご確認のほどを・・・・
■東京ステーションギャラリー
くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質
「建築は、マテリアルだ」と語った隈研吾さんの初の展示。マテリアルの先には何があるのか・・・・ 美術作品は、素材であり物質だと思っていたこともあって、何か自分のとらえ方に共通するものを感じました。(⇒〇本質のとらえ方の違い)
隈研吾氏の言葉「コンクリートによって建築は・・・・」と語った言葉の裏には、現在、国立新美術館で行われている展示を意識されている?
生誕100年 いわさきちひろ、絵描きです。
絵本作家としての「いわさきちひろ」ではなく、画家として紹介。ひわさきちひろの線表現、色の広げ方など、これまでの文脈を刷新という切り口に期待。どうやって描くのか、何で描いているのか・・・ そんなところに興味を持ってしまうので楽しみなアプローチ。
横山華山展
埋もれた画家を引き上げるというのが一つのコンセプトという当館。蕭白を超えた天才! 第二の若冲の呼び声が・・・ あちこちで「第二の若冲」というフレーズを見ます。本当にそうなのかは、自分の目で確かめてみる。何年か後に、あの展示、行ってたのよ・・・・と語れる日が訪れるか?
■パナソニック 汐留ミュージアム
ヘレンド展 ― 皇妃エリザベートが愛したハンガリーの名窯 ―
世界の陶磁器が、日本の影響を受けています。ヘレンドもしかり。現在行われている「北斎とジャポニスム」とあわせて日本が世界にいかに影響力を与えたか、浮世絵とは違う工芸のジャンルで確認。
また、日本の超絶技巧が注目を浴びていますが、海外も負けてはいません。透かし彫り、彫塑飾りなど、現在行われている「超絶技巧!明治工芸の粋」や、前出の静嘉堂で行われる「─ 明治150年記念 ─ 明治からの贈り物(仮題)」などとも合わせて比較してみるのも面白そう。
創業100周年特別記念展 日本の四季 ─ 近代絵画の巨匠たち ─
松下幸之助がモノづくりの上で共感したのが日本の美だったそうです。そして日本人の繊細さや器用さ、食の感性などは、四季によってもたらされているという考えを持っていたそうです。
それにちなんで、四季をテーマにしている60点の作品を2週間だけ展示されます。パナソニックが所有している日本画。本邦初公開! 期間も短いので見逃さないように要チェック!
開館15周年 ルオー没後60年 特別企画展 いとも大いなるルオー
─ 聖なる芸術とモデルニテ ─(仮称)
パナソニックミュージアムはルオーの所蔵美術館として有名です。日本人にとっても人気があると山田五郎さんの講演で伺いましたが、私は知りませんでしたし、見ても全然、いいと思いませんでした。
ところが、何度か美術館に足を運んで見ているうちに、なんだか次第に気になってくる不思議な絵なんです。何でなんだろう・・・ それを探っていたところなので、この展示でその秘密がわかるかも! 日本人のメンタルに語り掛けるなにかがあるのでしょうか?
以上、詳細については、各美術館のHPならびに以下を参考