コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■オルセー美術館特別協力 生誕170周年 エミール・ガレ展:ライティングの秘密

エミール・ガレ」展 最終日。

17:30から山種美術館のブロガー内覧会があるので、その前に出かけてきました。何点か確認したかったことがあったのと、図書館で『ガレのガレ』ーエミールガレの神髄ー(紫紅社)の写真集を借りたところ、

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今回出展されている作品が軒並みとりあげられていて、その写真が、とってもアーティスティック

 

写真家 藤森武氏はガレの作品を数年にわたって撮影してきたそうで、彼の写真集ともいうべき一冊。さらには、3人の筆者がそれぞれの立場でガレを論じたと言われる3人は、

  ○土屋良雄 元サントリー美術館主席学芸員
  ○鈴木潔  元北澤美術館学芸員
  ○菊池保也 医学博士

ガレを愛するそうそうたる顔ぶれで、一味違う論評をされてきた方々とお見受けします。

 

 

 ■参考書の探し方

知人から「図録や画集を見た時に、これはと心にすんなり入ってくる解説があったら、その名前を控えておいて、次からは、その方の書かれたものを読むといい」とアドバイスをいただいたことがあるのですが、まさに、ガレに対する論考は、鈴木潔先生の解説が、一番、自分の中で腑に落ち心地よいと感じている方でした。

私が言うのは、おこがましいのですが、理論的でかつ大局的・・・・限定的な見方をされず、広い視野でガレを語られていらっしゃると感じていました。そして、自分が感じた「ガレってきっとこういう思いや意図で作成したのだろう」と思ったことに対して、その背景の根拠となるものを示されており、推察だったことを、確信に変えることができました。その鈴木先生と、サントリー学芸員の方、そして医学博士が加わった1冊。

 

生物学、植物学の視点で制作したガレ作品の理解には、「生命」ということにかかわってきた方の視点というのは、絶対に必要。と思っていたので、珠玉の一冊です。写真を見るたびに、ため息ばかり・・・・・この本を持って、目の前の作品を見てみたい。と思っているうちに、とうとう最終日になってしまいました。

 

 

■すばらしいライティング

それは、「オルセー美術館特別協力 生誕170周年 エミール・ガレガレ展」を初めて見た時のこと。《水母文大杯》の一部が、ぽっかりと浮かび上がっていました。

 

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▲《水母文大杯》        ▲下部にライト

 ラメのような部分が光る      地球のような瑠璃色の光

(出典:『ガレのガレ』ーエミールガレの神髄ー(紫紅社)

 

作品に光があたって、上記の写真のように輝いています・・・・・・でも、その光源がみあたらないのです。 どこ?上を見ても、下を見ても光源らしきものがありません。でも、確実に光はあたっているのです。

あっ!  ありました!  こんなところに・・・・・それは、光源とはわからない形で、ベースの部分に仕込まれていたのでした。こんなライティング方法があるのか・・・・・第一回目の鑑賞、これ・・・というものを見つけることができなかったのですが、このライティングをみつけることができただけで、私は満足でした。

 

 

■スポットライト 

1回目の鑑賞で気づいたミニスポットライト。よく見ると、他の作品でも、ベースにしつらえられていました。その光が何を照らしているのか・・・・そんな見方をしていると、実にいろいろなものを映し出していたのです。

 

それは、サインだったり、ものいうガラスの言葉だったり・・・・技法を見せていたり・・・・主催者が、何を見せたいと思って展示しているのか。それが手にとるようにメッセージとして伝わってくる気がしました。

 

また、今回の目玉でもある《葡萄文水差》この作品に、他の作品の光にも増して、とても強い光が当てられていました。ところが、何を照らし出しているのかよくわからないのです。瓶の肩のあたりに光をあてているのですが、あてた光の一部は抜けています。

 

この光は、何を示したいんだろう・・・・・と思いながら、逆側に回った時、その意味がわかりました。非常に強い光で、まぶしく目が眩むほどの光でした。なんで、ここだけこんなに強いライトをあてているのだろう・・・・と思った瞬間、ちょっと体がずれました。するとその光は、水差しの背後に隠れました。そして、強かった光は、ガラスの背後に回わって、作品に光を当てて、ガラスの内部を照らしだしたのでした。

 

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盃の内部は、藻のようなものが

 

これまでとはまったく違うガラスの表情、そして変化する色、新しい世界を見せられたと思いました。そしてその光を水差しの背後に置きながら、上から下へと、目線を下げていきました。刻々と変わるガラスを通した光まばゆい光とガラスが織りなす世界を、目の当たりにしたのでした。厚いガラスを2枚通過させるための光量が、あの強い光の理由だったのだと理解しました。

 

 

■3回目 最終日

『ガレのガレ』の写真集を見たことで、ガレ作品のさらなる奥深さを知りました。気づかなかった作品の表情をもう一度、確認したい・・・・写真集で新たに知ったガレ作品の表情。それを実物で確認をしたい・・・・

 

それは最初に見た《水母文大杯》(『ガレのガレ』p34)ボディーへのライティングの意味はわかりましたが、この内側の内部にほどこされた水草(藻)写真では上からのアングルから撮影されているので、展示では、おそらく見ることができなかったのだと思われます。

 

学芸員や、カメラマンは、ずるいなぁ・・・・・こんなアングルで見ることができるのだから・・・・でも、頑張って背伸びをして見たら、この水藻を見ることができるかも。内部のこの様子を確認したい・・・・という思いででかけました。

 

実際に3回、この作品の照明を見たことで、ライティングに隠されたすばらしさを発見することができたのでした。強くボディーに当てられた光。そして、その反対側に回わって見ると・・・・・しっかり、内部の様子が照らし出されていて、中の藻が浮かびあがっていたのです。恐れ入りました・・・・・ちゃんと、考えて中の様子まで見せてくれていたのでした。

 

 

■美術館の照明

以前、山種美術館の内覧会で、照明のお話しを伺いました。尾崎文雄さんは、サントリー美術館でも照明を担当されているというお話しを伺っていました。 ⇒こちら

 

そのため、サントリー美術館の照明には、何か秘密があるかもしれない・・・・という視点で見ることができました。ちょっと違う見方ができて、他の人はきっと気づいてないだろうな・・・・という部分に気づけたという自画自賛。(笑)  

 

【参考】⑥山種美術館:照明の秘密 からのつながり (2016/01/19)

他にも、私たちの気づかないいろいろな仕掛けがされていたのだろうなと思うと、終ってしまったことが残念です。

 

今回の展示は、オルセー美術館との共催ということで、作品と原画を同時展示するという見せ方が目玉だったように思われます。個人的には、ガレは、同じ作品をいくつも作っていて、いくつかは、実物を見てきているので、それぞれは、どう違うのかとか、ガレはそれぞれをどういう思いで作ったのかというあたりが個人的に興味がありました。

 

カトレアの花瓶・・・・この花の花びらは、きっとあそこを表しているのだろうという推測。それについては、鈴木先生の著書で確認することができました。では、サントリー所蔵のカトレアと、北澤のカトレアの局部は、それぞれどう表現されているのか・・・・とか。

 

最晩年の《蜻蛉盃》は、どう違うのか・・・・・輪っかがあるのとないものとの違いとか・・・・作品の目の前に、他の作品の写真を置いて、見比べたいと思ったのでした。また、蜻蛉盃のサインが、蜻蛉を模した「G」という文字になっていると言います。それを実際に確認してみようと思いました。こちらについては、わかったようなわからないような・・・・今後におあづけとなりました。

 

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■【関連】エミールガレ

■オルセー美術館特別協力 生誕170周年 エミール・ガレ展:ライティングの秘密 

                              ↑ここ

■オルセー美術館特別協力 誕生170周年 エミール・ガレ展 

■ポーラ美術館:ガラス工芸 ガラスとことば(メモ  (2016/05/17)

■エミールガレ:ヒトヨダケ文花瓶・・・自然の摂理と輪廻 - (2016/02/10) 

■大一美術館 エミールガレ 《 蜻蛉文脚付杯》 (2015/08/21