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コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■海北友松:《山水図》(建仁寺) 間抜けな襖絵かと思ったら・・・

日曜美術館海北友松の特集が再放送され、解説はありませんでしたがチラリと映った建仁寺の《山水図》 京都国立博物館特別展覧会「海北友松」でも展示されています。《雲龍図》の勢いとは全く違うタッチの《山水図》 友松はこんな絵も描いていたんだぞ~ 何も描かれてい間抜けな襖絵と思わせて空間に込めたもの。それが友松の真骨頂ではないかと思います。1年前、私は知らない絵師で認知度はイマイチかもしれませんが、きっとこれから注目上昇するはず!
 
・以下は「食べログ日記」
   より転載しました。
・2016.03.26に記録したものです。
・写真の(※)は自分で撮影したもの
 
 
 

建仁寺 方丈障壁画について

建仁寺の方丈には、重要文化財の方丈障壁画、50枚があります。
それらは、下記のとおりで、

 ・「竹林七賢図」16面、
 ・「琴棋書画図」10面、
 ・「雲龍図」8面、
 ・「山水図」8面、
 ・「花鳥図」8面
 
下記のような配置になっています。
 
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(出典:東京国立博物館 - 1089ブログ より)

 
これらは、日本を代表する水墨画の大障壁画群です。安土桃山時代から江戸時代にかけて活躍した海北友松によって制作されこれらは、建仁寺の方丈に設置されていました。


 

■方丈が台風で倒壊 襖は・・・

1934年(昭和9年)9月21日、室戸台風が高知地方に上陸。それによって、建仁寺方丈は倒壊してしまったのです。昭和9年という時代。台風情報なども、確かなものでなかったと考えられ、台風対策もできていなかったのではと住職のお話しでした。

ところが・・・・ 
法事の予定があったため、襖は外され、別の場所に保管されていたのでした。不幸中の幸いにも・・・・  もし、法事がなかったら・・・・大量の大遺産が、泡と消えるところだったのでした。

そこで、今後同じようなことが起こって、貴重な文化財を消失させてはならないということで、襖を掛軸に形を変えて、現在は京都国立博物館に保管されることになりました。


その掛け軸などが公開されたのが、開山・栄西禅師 800年遠忌 特別展「栄西建仁寺」(2014年)だったのでした。

本来、あるべき「襖」は「掛け軸」となり、京都国立博物館へ・・・・襖なきあとの方丈は・・・・・そこで、襖の再現プロジェクトが始まったのでした。



 

■間の抜けた《山水画

現在は、すべての襖が再現されて建仁寺の方丈に納まっています。《雲龍図》、そして法堂の《双龍図》を見て戻ったところで《竹林七賢図》を見ました。そして、次の間にあったのが《山水画》です。
 
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山水画》が設置されている24畳の「上間二の間」その前に立った瞬間に感じたこと。

   なに? なに?  この心もとない絵は・・・・

それは、雲龍図》の龍の迫力があまりにも凄すぎたため、拍子抜けしてしまったのでした。《雲龍図》はある意味、罪作りな襖絵に思えてしまいました。

法堂の天井に描かれた《双龍図》に対しても、な~んだ・・・と思わせてしまい、《山水画》に対しても、またまた、な~んだ・・・と思わせてしまったのです。



 

■シミだらけの襖

もやっとした、空白ばかりが目立つ襖。古い襖絵を忠実に再現したからなのか、あちこち、シミだらけです・・・

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 ↑ ぼんやりとした雰囲気のシミだらけの襖(※)
 
日本画というのは、「間」が大事・・・・この「間」の表現が、真骨頂なわけですが、「間」が多すぎませんか?「間」をあけてしまった分、その部分の汚れが目立ってしまっているような・・・

しかし、この「間」を理解できるようになることが、美術作品に近づく一歩。理解の階段をまた1段あがることになる・・・・なんて思いながら、しげしげ見ていました。

そこで、思いました。

「そうか・・・・・このシミを、リアルに再現してるってことが、 すごいことなんだ・・・・ いかにも、古めかしい、時代を経た襖に見せることができるか。 それには、このなにもない「空間」をどう再現するか・・・ 時代を経た、重みを何もないところに、押し込めているわけね。 その技術を堪能することも、鑑賞のポイントなんだ・・・・」

と、無理無理、鑑賞ポイントをずらして、価値を見出そうとしていました。



 

■鑑賞

まずはコーナー部分に近づいてみました。

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↑ コーナー部分に近づいてみると・・・(※)
 

 

 
 
↓ そして右方向へ、少しずつ移動しました。(※)

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↓ 何も描かれていやいようなシミだらけの絵(※)

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一番左の襖、「左下」に岩場があります。

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↑ 襖の中央部からちょっと上あたりに横筋が入っています(※)

なんだろう、この横筋は・・・・
襖を貼る時にでも、折れてしまったあとなのか、和紙(?)の目が、表れてしまったのか。傷がついてしまったのか・・・何かわかりませんが、そのあたりもリアルに再現したということなのでしょう。

全体をみるとぼんやりで、描き込まれていない感じが・・・
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↑ 右側を正面から全体を見る(※)
 
 

ほぼ何にも描かれていない、空白状態ですが・・・・

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↑ よく見れば、下の方に舟が2艇描かれているだけです。(※)
 

その隣の襖になってやっと、景色が見えてきました。

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 ↑ あれ? 山が逆さになっています(※)
 
なるほど・・・・ ことを表現していたわけですね。


▼一番端の襖は、「楼閣滝」と解説がありました。

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↑ 白抜きの三角の山のように見える部分は、山間から流れ落ちる滝? (※)
 

▼左から2番の襖、何も描かれていないように見える襖。(※)

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舟の部分を拡大してみました。
▼舟の上から網(?)をたらして漁をしている?のが確認できます。
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 ↑ 鵜飼の紐のようにも見えますが、夜ではないので違うかな?・・・(※)
 

▼もう一艇の舟は、人を乗せています(※)

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■次に逆側の襖を見ると・・・・

 ▼あっ、あの筋は・・・・

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↑ 襖の中央のちょっと上あたりをはっきりくっきり貫いています(※)
 

これ、水面だったのです!
水面を境水面に写る鏡面反射の構図だったのだと、ここで気づかされました。
 

▼この直線は、横へとずっとつながっています。(※)

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               ↑ さらに、最初に見ていた反対側の襖にまで
                 つながっていたのです。(※)

 
それに気づいた時、この襖絵の描かれた壮大さが、一気に浮かび上がってきました。
 

▼拡大すると水面を境に、描かれている景色が明確になります(※)

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シミがシミでなく景色に変わりました(※)

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当初、ぼんやりした絵・・・・ 間抜けな絵・・・・空白が多すぎない? 
シミをリアルに再現した絵なのか・・・・ とか  そんなことを考えていましたが、とんでもありませんでした。


雲龍図》は、迫力ある画面から、ズドンと浮かび上がる驚きでした。
《山水図》は、なんにもないぼんやりした画面から、ジワリと浮かびあがった感じ。

その対比もまた、絶妙だと思いました。襖の傷と思わせておいて(勝手にそう思ってしまったのですが)実は全面を貫く水面だったなんて・・・



 

■構図の秘密

この水面が襖全体で、鏡面反射した構図で描かれてていた!それがわかった瞬間、これまでシミと思って見ていたものが、すべて、意味を持つものに変化したのでした。

何も描かれていないと思っていた絵が、いきなり、うわっと、全体像が見えて、
姿形を表して自分に覆いかぶさってくる感じでした。

こればかりは、この場で体験しないと、絶対にわからない感覚です。そして、鏡面反射を描いた絵だと知って見るのと、何も知らずに見ていて、そのことに自分で気づいたというのは、なにものにも代えがたいものがあると思いました。


この部屋の覗き込んで「これ、印刷なんでしょ・・・・」と言って通り過ぎていった人がいました。

確かに印刷ですが、じっくり見れば、いろんなことが、見えてくるんですよ~ 古さの再現とか、かすれた感じとか。そして、構図の秘密だって潜んでいます。もったいないなぁ・・・・と思いながら見送ったのでした。

お寺の方とちょっとお話ししたのですが、「あのキャノンの再現、すごすぎませんか? あの紙質とか、ざらつき感とか・・・・」と話したら、「私たちもびっくりしました。実際に、触ってみたことがあるのですが、触ると、つるっとした感じがしました。しかし、見る限りは、わかりません。あれだけの再現ができたということは、すごいことだと思っています」・・・・と。

お寺の方でさえも、その技術を絶賛しています。最初から、「プリント」って見てしまったらそれまで。しかし、いつも見ていたお寺の方が、すごいというほどの技術。そのすごさを、先入観を持ってしまったことで、感じることができないのは、もったいないことだなと思ってしまったのでした。

雲龍図》を見て、私自身は、こちらも、キャノンプリンターによるものということは、知ってしまいました。しかし、それを知っていたとしても、この再現力は、すごい・・・と思えたのです。本物でなくても、感じることはできるのです。


そして、多分、この絵が、鏡面反射の絵だということに気づいた人って、そんなには多くないと思いました。一人悦に入って、見ていたのでした。



 

■絵の見方のヒントに

こんな、表現方法、描き方があることを知ったことで、他の作品を見る時の、発見につながりました。

山種美術館で行われている 「奥村土牛 ―画業ひとすじ100年のあゆみ―」そこで見た吉野山の桜を描いた《吉野》 山あいをピンクに覆う霞みなのか、桜なのかわかりませんが、その下に、木々が描かれていることを発見しました。

  ○③奥村土牛展:美術館内で、京都の桜と吉野の桜の饗宴 (2016/04/07)



また、これと同じような作風の日本画を目にすることもありました。
  ○墨から隅まで・・・あなたを魅了します♪菅原さちよ展より

 

海北友松の襖絵は、その後の美術鑑賞に、絵を見る上で、大きな視点を与えてくれたのでした。


【参考】全体図
 

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全体がわかりやすく撮影されていらっしゃる下記よりお借りしております。