ルドゥーテのバラは他の画家とは一線を画す点刻版の技法によりやわらかな表情を出します。今回はこのボタニカルアートと日本の植物画、点描、ルドゥーテのかかわった王妃マリーアントワネット、ジョセフィーヌを通してフランスの歴史に触れる入り口ととらえて鑑賞。
■ルドゥーテの鑑賞のおすすめポイント
〇輪郭をチェック
「花のラファエロ」「バラのレンブラント」とも呼ばれ、点描で表されるバラは輪郭線がないためによりやわらかな表情が出るとされています。
〇拡大してみる
今回、単眼鏡を忘れてしまったので、拡大して見ることができませんでしたが、要所、要所に拡大鏡が置かれているので、それで見るとどれだけ繊細に描かれているかがわかります。
〇紙質・シミをチェック
ちょっと違う視点で見るとしたら、紙質を拡大して見ておくのもいいと思います。どの時代にどのような紙が使われていたのかを知るのは、鑑賞する上で最近、ポイントだと感じているところです。
たとえば・・・ 先日、棟方志向の版画がカラーコピーに変えられていました。紙質チェックをする習慣をつけていると、もしかしたら気づけたかもしれません。一方、建仁寺の襖絵を見た時のこと。デジタル印刷による襖だったのですが、その質感はとてもリアルに再現されていました。(⇒■海北友松:《雲龍図》 建仁寺の襖は****だった)そういう騙される楽しみというのもあります。
以前、ボタニカルアートの講座を受けた時に、用紙を触らせてもらって紙質を感覚的に体に覚え込ませるという体験がありました。その時の感触と比べて、見た目でしかわかりませんが、どうかな・・と思いながら、見ていました。
総じてきれいでした。その当時は、そんなにきれいに保てるものなんだろうか? って思いながら見ていたのですが、その後、日本画など、補修で汚れをとることができることがわかりました。ボタニカルアートも、汚れをきれいにしているのかも? と思っていたのですが、一枚だけ、シミの残った作品がありました。対比するとよくわかるので、要チェックです(笑)
■点刻彫版法
〇点刻彫版法って?
点の集合で陰影を表現する銅版画(出典:ルドゥーテの「バラ図譜」展|そごう横浜店|西武・そごう)
私が聞いた話とは、ちょっと違います。「陰影を表現する銅版画」でしたっけ?
またまた、調べてみましたがそれらしい、解説がありません。
ボタニカルショップの解説がトップです。
この技法は輪郭線や線の交差による明暗法を極力を排して、細かな点の集積によって花びらや葉の形、色の濃淡を表現する技法です。
『バラ図譜』では、この繊細な技法によりバラの花びらのビロードのような柔らかさや厚みが実に良く表現されています。
私も講座でこのような説明をうけたと記憶しています。
〇印刷で体験
作品撮影はできませんでしたが、撮影エリアに印刷があったのでそれを紹介。
▼影の部分が点描
▼さらに拡大
▼葉っぱの輪郭の表現
▼花の影 ▼拡大
これらを銅板に点刻するため、版につめる色が混ざらないため、一枚で多色ずりができるメリットがあります。そのあと手彩色をしているとのこと。
よ~く見ると、輪郭がつながっているように見えるところもあったので、手で補っている部分もあるのかもしれません。
■肉筆画
初期の作品で、肉筆で描かれたものがあります。こちらは、子牛など動物の皮を加工して作られた紙状のシートで、ヴェラム〔犢皮紙(とくひし)〕というものに描かれています。世界的にもとても貴重なものだそうです。
これまでいろいろな紙をみてきましたが、初めて見る質感で、絵具の浸透がとても悪そうな撥水性を感じさせる紙質でした。描く前に何か、下処理をしたりするのでしょうか?
■バラの基本知識を学べる
バラはあまり好きな花ではなかったので(笑)、名前は聞くけども知ろうとしていませんでした。系統図とかもあるようですが、基本的な知識を得ることができました。
〇ガリア系・・・古代種
ギリシャローマ時代の古いバラ。ルドゥーテが主に描く。
〇ケンティフォリアとモス
ケンティフォリア:キャベツを切った形。100枚の花弁。
マリーアントワネットの肖像画で手に持っている花。
〇モス:苔
ケンティフォリアからの派生。綿毛が密集
〇チャイナ系=インディカ
中国咲き 四季咲き
ナポレオン ジョセフィーヌの人口交配に拍車
〇オールド・ローズ
19世紀に●メゾン宮殿で。ルドゥーテの時代。
(オールドローズって、意外に現代に近いんだ・・・)
〇ワイルドローズ 野生種
野ばら。北半球に・・・
■鑑賞メモ
以下、感じたことをランダムに記録
〇バラのトゲが多いものと少ないものの違いは? トゲは確か葉っぱが変形したもの
〇イタリック体が美しい カリグラフィーでしょうか? 今はイタリック体を習わないといいます。もったいない・・・
〇美術と歴史と音楽・・・
マリーアントワネット、ナポレオン、ジョセフィーヌ。
ベートーベンの「英雄」 ナポレオンへの共感から称える曲 しかし・・・
あの私の好きな曲・・中村紘子さんの演奏聞きにいったピアノ曲・・・思っていたら違った。
あれ? なんだけ? そうだ、「皇帝」でした。この「皇帝」もナポレオン?
wiki pedhiaより
折しも、当楽曲のスケッチおよび作曲に取り組んでいる最中にあった1809年、ナポレオン率いるフランス軍がベートーヴェンが居を構えていたウィーンを完全包囲し、その挙げ句にシェーンブルン宮殿を占拠した。これに対しカール大公率いるオーストリア軍は奮戦するもフランス軍の勢いを止める事は出来ず、遂にウィーン中心部を砲撃され、フランス軍によるウィーン入城を許してしまった。その後フランス・オーストリア両軍の間で休戦協定が結ばれるも、当時のオーストリア皇帝フランツを初め、ベートーヴェンを支援してきたルドルフ大公を初めとする貴族たちもこぞって疎開、ウィーンに於ける音楽活動は途絶えてしまう
ミュシャの歴史を見ていた時も、カール大公が出てきた・・・
音楽ってこんなに歴史とかかわってる・・・
■日本の植物画とボタニカルアート、フランスの歴史、音楽
ジョセフィーヌってどこかで聞いたな・・・と思ったらジュエラーのショーメでした。
ナポレオンの乗った馬が暴れてそれを助けたことから、皇室御用達ブランドに。ナポレオンが皇帝となった後1802年にニトを公式ジュエラーへ任命。ナポレオンの戴冠式ではニトが作った王冠や宝剣の他、ジョゼフィーヌに・・・ さらにナポレオンが第2皇后マリー・ルイーズと結婚した際の婚礼装身具を手がける。
いろんなところでつながってました。