美術がよくわからない。どうしたら理解ができるのか? そう思っている人は多いはず。いろいろな方法が紹介されていますが、私が試して一番、効果的だった方法。それはパスポートを手に入れてしまうことでした。
■行列の美術展 でも、どう見たらいいの?
テレビのニュースでは、「〇〇美術展 〇時間待ち」あるいは、刺激的なCM。今回ぎり、日本初など、誘惑的な言葉が飛び交います。なんとなく興味はあるし、行ってみたい気もする。周りの人たちも行ってるし、行ってみようかな?
でも、敷居が高い・・・・ 行ってみたけど人混みを見てきただけ。どこをどう見たらいいかわからない。見ても何も感じなかった。そういう時期が、私も長い間、続いていまいました。
決して全く嫌いなわけじゃなく、興味はあるんだけど・・・・ そんな時に出会ったのが、美術館のパスポートでした。パスポートって、美術好きが持つものじゃない?と思われがちでですが、初心者こそ持つべきアイテムというのが使ってみての感想。
2019年 東博のメンバーズプレミアム
■美術を理解する早道は、美術館の年間パスにあり!
美術を理解すために必要なことは「とにかく、たくさん見ること!」って聞きませんか?(美術は、理解できるものなのかということは、置いておいて・・・)たくさん見ればわかる。それは、言われなくても、なんとなくわかります。しかし、美術館の入館料、高いじゃないですか?最近は1600円ぐらいが相場。
たくさん見るって、いったいどれだけ見たらいいのでしょうか?それにはいくらかかるのでしょう?美術鑑賞にそんなに、お金をかけることはできないはず。
そこで、心おきなく鑑賞ができる強い味方が、美術館の年間パス。ディズニーランドの年間パスポートのようなものです。タイプや価格もいろいろですが、入館回数の制限がないものを選べば見放題です。
2016年に利用していたパスポート
■美術館の年間パスを選ぶポイントは?
では、はじめの一枚はどこの美術館にすればいいでしょうか?それは・・・・
美術館にはそれぞれ特徴があって「日本美術」や「西洋美術」「現代アート」など得意分野があり、展覧会の傾向があります。自分の好きなジャンルを所蔵している美術館を選ぶというのがセオリーだと思われています。しかし・・・・
自分の好みの所蔵品で選らばないことがポイント。
一番、よく利用する駅に近い美術館
を選ぶのがコツだと声を大にして私は言いたいです。
それは、最寄りの駅や、よく買い物で利用する駅、通勤の経由地、仕事の営業や出張などでもよく利用する駅など、すぐに立ち寄ることができること。わざわざ行く場所は選ばないことです。
「近い」「すぐ行ける」「何かのついでに立ち寄れる」
というのが、初めて年間パスを所有する時の肝というのが私のおすすめです。
▼東京駅直結の美術館 出張が多い方も利用できます
東京ステーションギャラリー 「竹下夢二 百花繚乱」 東京駅直結の立地
■美術館の年間パスの活用法
まずは、パスポートをゲットしたら、美術館近くの駅に行った時には、必ず立ち寄るという習慣をつけます。この時、企画展や作品を見る必要は全くありません。ただ館内を歩いて、通り抜けてくるだけ。展覧会は、何度でも見ることができますから・・・
パスポートを入手した美術館の企画展が興味がないテーマだった時。これから暑くなってきたら涼みの場所として利用してもいいです。
日々の、お散歩コースのように、 館内を通り抜けしているだけでも、美術館の空気が、体に少しずつ少しずつしみ込んでいきます。以下、そのメリットを紹介します。
〇メリット1 美術の基本ワードが身につく
美術の知識というのは、その方面の勉強をしていないとなかなか持てるものではありません。画家の名前、美術用語、流派、技法、ほとんどが知らないものばかり。ところが、ブラブラ館内を歩いているだけでも、知らぬ間に目に入っていたりします。記憶の隅に残っていることも・・・
一度、見て「知っている!」ということがどんな世界でも、興味のはじまりになります。一度、見たことがあるということが、次のステップへ橋渡しをしてくれます。
この前、見た、聞いた。それを繰り返すうちに、それって何だろう。自ずと知りたくなってくるものです。少しずつアートのシャワーを浴びているうちに、細胞も活性化されるように感じます。
〇メリット2 気になった作品だけ見ればいい
館内を歩きながら、気になる作品が出てきたら、立ち止まります。余裕があれば解説を読んでみたり。無理に見ようとするのではなく、気になるものだけ立ち止まってみる。なければ素通りでいいんです。
その都度、入館料を払うと、全部を見ないと損をした気分になってしまいます。パスポートがあれば、いつでも何度も見ることができます。それは、最寄り駅にあるから・・・最初に、一番おいしいところだけつまみ食いをするという贅沢な鑑賞スタイルも可能です。
いつものお散歩ルートが美術館って、ちょっと素敵ではないですか?
〇メリット3 興味のない美術展も見る習慣ができる
好き嫌いにかかわらず、興味のない展覧会も見ることが、鑑賞を深めるコツだと言われます。しかし、好きでもない展覧会に高い入館料を払いたくはありません。ところが、パスポートがあれば、気にすることもありません。
あえて苦手意識のある展覧会を見ると、自分は何が苦手なのかわかってきます。鑑賞を重ねていくうちに、自分は何が好きなのかというのは、比較的みつけやすいはず。ところが、何が嫌いかを発見できるのは思わぬ拾い物で面白さがあります。
収蔵品が好みなのだけど、立地の悪い年パスを作った場合、わざわざそのための時間を確保して出かけなければいけません。もし、好みではない企画だったら、わざわざ行く気にはならないのでは?
アクセスのよい美術館なら、好みでない企画でも、見ているうちに、興味や愛着も沸いてくるはず。
〇メリット4 関心のない美術展の中に発見が!
最初にパスポートを作ったそごう美術館で、漫画の企画がありました。漫画かぁ…と思いながら入館し、いつものように通り抜けるつもりで館内に・・・・ ところが、途中で、これまで見てきた鳥獣戯画や北斎漫画と重なりました。漫画も絵画も同じ表現手段であることに気づけると面白くなってきました。日本ならではの漫画独特の世界があることがわかり、食わず嫌いだったことがわかりました。
引用:横浜そごう美術館「LaLa40周年記念原画展」に行ってきました
全く興味のないジャンルや人。見るつもりでなくても、とりあえず会場を一周しておくと思わぬ発見がありました。そして、同じ展示を何度か見ると、最初は興味がなくても、自分の好きなジャンルとつながっていることに気づいたりすることもあります。
興味のない展覧会もあえて鑑賞するというのは、ちょっとワンランク上の鑑賞をしている気分にもなれます。年間パスがあれば、絶対に見ることのない展覧会に出会える大きなチャンス。作品は好きでなくても、作品周辺の美術情報を得るというメリットもあります。
〇メリット5 同じ展覧会を何度も見ると違って見えてくる体験
気に入った展覧会は、何度も見たくなります。それが実現できるのが年間パスの魅力。そして、一度、見たものがまったく違って見える瞬間にも出会えます。
一方、好きでも嫌いでもない知らない画家を、何度も繰り返し見ているうちに、だんだん気になる存在になってきたという例もありました。それが国吉康雄です。
興味のあるものだけを見ればいいと思って何度も足を運んだら、その日によって、目にとまる作品が変わるという面白さもありました。また何度も見るうちに、当初は、全く目に入らなかった作品が、終了間近、急に飛び込んできたことも・・・・
▼最初は見向きもしなかった作品。
作者の背景や描き方、作品に込めていることがわかってくると、色の重ね方に注目するようになり、そこに生命感が感じられるようになった作品
そごう美術館 国吉康雄展より <通りの向こう側>
同じ展覧会を何度も見たり、好みでない企画でもあえて見るという習慣は、いろいろな発見をもたらしてくれます。嫌いな展覧会でも出かけるためには、すぐにアクセスできるという条件は、不可欠なのです。年間パスを選ぶ時は、一番利用しやすい美術館で作るに限ります。
■ホームミュージアムを作ろう
ホームドクターのように、美術館も近くで、気軽に立ち寄れる場所を一つ持つことをおすすめしたいと思います。好きな美術館を選ぶのではなく、ついでの時にすぐ行ける美術館を選んでパスポートを作ります。そしてわからなくてもいいから、とにかく1年間、近くに行ったら、お散歩がてら、1日の歩数をアップするつもりぐらいの気持ちで立ち寄ることを繰り返します。
見るではなしに見て帰ってくる。これを繰り返すと、次第に、美術の基礎体力がついてくるのを感じられるはず。そのうち、興味を持ったジャンルがでてきたら、大きな展覧会にでかけてみるのもいいでしょう。
そんなホームミュージアムを拠点に、一年間、パスポートを可能な限り使います。1年後、確実に手に入れる前とは違う自分になっています。美術鑑賞の奥はまだまだ深淵な世界ですが、はじめの一歩は、一枚の年間パスポートから。美術の重い扉を開けてみてはいかがでしょうか?
フリーの特権、打合せ場所を、美術館の近くにしたり、夜間鑑賞をしている金曜日にして帰りに立ち寄ったり・・・・ そんな使い方をしています。