コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■酒器の美に酔う:後期展示が始まります

 Sheageに、静嘉堂文庫美術館で行われている「酒器の美に酔う」の記事を書きました。前期は20日まで。展示替えがあり、後期展示は、2018年5月22日(火)~6月17日(日)までです。

 上記の記事のトップビジュアルの手提げ重の展示は、前期で終了しましたが、後期は、別の手提重を見ることができます(南天蒔絵提重)

 

以下、記事でご紹介できなかった作品や補足説明をご紹介。

*写真の撮影、掲載は、主催者の許可を得て掲載しております。

 

 

■鍋島焼の唯一残った仙盞瓶(せんさんびん)

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「色絵牡丹文水注」 鍋島藩窯 江戸時代(17~18世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】

湾曲した注ぎ口と取っ手のあるこの形は、イスラムの金属器の水注ぎと同じで、仙盞瓶(せんさんびん)と呼ばれています。名前の由来はわからないのだそう。鍋島は大皿が多く、水注は少ない中、唯一、残ったのがこの水注なのだそう。

 

⇒参考

佐賀藩の記録に、享保11年(1726)、徳川吉宗から盃や銚子とともに仙盞瓶(せんさんびん、細長い注口が胴の下部からつく水注)2つの注文があり、納めたところ、非常に喜ばれたとあります。最盛期の鍋島焼の仙盞瓶は他に現存する例がなく、また、金彩が施された特別な仕様であることから、この作品が吉宗の注文したものの一つに該当するのではないかと言われています。倹約家の吉宗がこのような立派な作品を特注していたと考えるとびっくりです」(山田さん)

引用:徳利の語源って?日本古来の「酒器」の名品を観賞《酒器の美に酔う》展 | サライ.jp|小学館の雑誌『サライ』公式サイト

 

こちらも、仙盞瓶の形を意識して制作された酒器です。

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(右)色絵山水人物図水中  (左)色絵山水図中

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柿右衛門の徳利 白地に注目

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「色絵桐鳳凰文徳利」有田焼(柿右衛門様式) 江戸時代(17~18世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】

柿右衛門は時代(代)によって、白地の色が微妙に違います。柿右衛門を始めて認識して見たのは、ハウステンボスに行った時でした。その時に見た地の色は、もっと白く青みがかっていた記憶があります。その後、デパートのイベントで15代襲名イベントで見た柿右衛門は、黄色がかっていた記憶があります。この展示作品の色も微妙に違うような気がしました。

 ⇒参考

「この徳利から直接、杯に注ぐのではなく、おそらく酒樽からこれに注いで、酒席に持っていき、さらに銚子などにうつしかえて使っていたと想像しています。柿右衛門といえば、ヨーロッパに輸出され、彼の地の王侯貴族のもとで愛された高級磁器ですが、この作品は輸出のタイプではありません。輸出用のものとは、形や、わずかに青みを帯びた素地の色、鳳凰の描き方なども違います。国内の富裕層が特注で作らせたものでしょう」

引用:徳利の語源って?日本古来の「酒器」の名品を観賞《酒器の美に酔う》展 | サライ.jp|小学館の雑誌『サライ』公式サイト

 

柿右衛門というと、花鳥風月のイメージが強いですが、鳳凰が銚子のボディー一杯に描かれ、広がる羽根が、銚子の形に呼応しています。徳利を包み込むようであり、降り注ぐようでもあります。散らされているのは桐の花です。鳳凰は桐の木に宿る木と言われています。 

 

【参考】鳳凰は桐の木に宿るという伝説があります。

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 写真:サントリー美術館 おもしろ美術ワンダーランド(撮影自由)

 

【参考情報(柿右衛門関連)】17~18世紀(初代~八代)

引用:歴代柿右衛門の伝統 | 柿右衛門

三川内焼/柿右衛門ギャラリー|日本の代表的やきもの産地を紹介。陶磁器の解説と陶産地周辺の観光ガイド。:全国旅手帖−陶芸ZANMAI

薔薇のハウステンボス⑩/ポルセレインミュージアムの古伊万里焼(2) | ペチュニア日記②

 

【追記】(2018.06.05)

柿右衛門の赤は、柿渋の赤を見て、作られた色だと教科書に出ていますが、それは間違い… という話が、学芸員さんのトークでありました。柿右衛門の赤についついて、教科書にででていたけども…とのことでしたが、初めて耳にする話でした。

美術の教科書にそのように解説があったのかな? と思っていたら、昭和12年の国語の教科書に柿右衛門の物語として掲載されていたという話を柿右衛門窯で聞きました。

参考:教科書に載った柿右衛門 - 本棚・陶磁と文学 aficionado's bookshelf - Yahoo!ブログ

柿右衛門の赤は、柿右衛門が試行錯誤の末、柿渋から色をみつけたと伝わっているけども、中国の陶工との協力によるということらしいです。

 

そして、柿右衛門が苦労しして出した磁器の乳白色。静嘉堂文庫美術館で見たものは、黄色く見えたのですが、それは照明の影響もあるとのお話。(色の比較をするときには、どんな照明の元であるかも考慮に入れる必要あり。)

 

ハウステンボスで見たものは、青白かかった。当初、泉山の陶石を使っており、その石は鉄分を含むため、青白かったのだそう。それを柔らかい白にしたいと研究を重ね、米のとぎ汁を入れて、乳白色の「濁手」と言われる色を作り出したのだそう。

その後、天草に良質の石がみつかり、そちらに石は変更になったといいます。15代は濁手で制作、14代は「濁手」と「青白いもの」の2種類を制作。本人以外の作もあり。15代は、濁手のみ。

 

また現在、美術館に柿右衛門として展示されているものは、一度海外に出て、逆輸入されたものも多いそう。江戸時代は、国内向けよりも、海外向けに制作されることが多かった?

 

 

 

 

現在、展示されている柿右衛門は、一度輸出されたものが、里帰りしているものもあり。「色絵桐鳳凰文徳利」は国内向けに作られたと考えられるとのこと。

 

 

  

 

■罰ゲームのようなお酒の飲み方

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「桃李園・独楽園図屏風」のうち右隻「桃李園図」川端玉章【前期のみ】

お酒を酌み交わしている様子が描かれています。ただ飲んでいるわけではなく、詩を読み負けたら?お酒を飲むという罰ゲームのようなことが行われていたそう。中国の高貴な人たちも、学生コンパも同じ?(笑)

 

こちらの展示は、前期のみ。昔の罰ゲームのような酒会、それぞれがどんな表情で飲んでいるのか興味深いです。

 

 

曜変天目茶碗もお忘れなく

そして、年1回 展示される曜変天目茶碗も必見です。今年の曜変天目は、何かが違います。

 

 

■写真ギャラリー

その他の写真を紹介

〇Ⅰ 酒を盛る

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青銅饕餮文尊 殷時代(起元前14~13世紀)

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青銅紡 前漢時代 (起元前2世紀~1世紀)

 

古代中国の青銅器は、祭祀や儀礼に用いられ飲食物を神に供するために使われました。

 

 

〇Ⅱ 酒を注ぐ

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 ▼酒を注ぐ器

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▼携帯用具酒具一式

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