コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■深海展:最後まで大混雑 研究者たちの挑戦

深海展もいよいよ最終日間近。招待券をいただいていたのですが、やっと訪れることができました。美術館は金曜の時間延長の日なら、比較的空いているというセオリーは、科博においては例外のようです。科博では金曜の17時からペアチケット割があるため、大行列状態になっていました。

 

 

■閉会間際の混雑状況

これまでも何度か科博の前を通ってはいたのですが、いつも行列状態。夏休みが過ぎれば、落ち着くだろうと思っていたのですが、一向にその気配はありませんでした。平日でも並んでいて、そうこうしているうちにカウントダウンとなってしまいました。最終の金曜日の夜を狙っていたのですが、17:00すぎはこんな状態で、入場制限まで・・・・ 

f:id:korokoroblog:20170930105022j:plain

ペアで安くなるため、17:00からは逆に混雑するので避けた方がよいということを午前中の問い合わせで聞いていました。比較的空いているのは、お昼を食べる12:00ぐらいとのことでしたが、いずれにしてもずっと一日中、混んでいるとのことでした。

 

自然史博物館も最終金曜日に訪れたのですが、劇混みでしたが、今回はそれ以上だとのこと。あわててでかけて、14:00に到着。チケットの並びは若干ありましたが、入場はスムーズでした。しかし館内は、ごったがえしていて、最前列で説明をちゃんと読もうとするとなかなか厳しい状態でした。博物学的展示は、常時、混雑状態のようです。

 

 

ディスカバリートークで予習

深海展見学にそなえて、すでに2回、ディスカバリートークを受けました。

事前に見どころやポイント、関連知識を得ておこうと思いました。2回目に参加した、甲殻類のディスカバリートークで、今日の話は、展示のどの部分にあたるのかを伺ったところ、今日の話と展示の関連性はあまりないので、こうやって深海調査をしているんだなと思って見て下さいとのことでした。また、大きな声では言えませんが、「2013年の展示と比べて新たな展示は実はないんです・・・・」というお話(笑) 私は2013年の展示を見てないのでノープロブレムですが…

実際に見たら、地震調査など、新知見がいっぱい提示されていました。新たな展示、十分あると思うんだけど‥‥ これだけでは不十分ってことなのかしら? と思っていたら、最後ブースにスタッフの紹介がありその理由がわかりました。地震の部分は、JASMTEC 国立研究開発法人海洋研究開発機構による研究の展示だったのです。国立科学博物館側の展示ではないため、前回のダイオウイカ発見! のような新生物発見のスクープ的なネタがなかったという意味だったのだと理解しました。

 

 

■1章:深海とは?

〇生物学的な定義

深海とはどのように定義されているのでしょうか・・・・

「生物学的にいうと」200m以下という解説がされました。これでやっと納得ができました。事前に、深海とは200m以下という話を聞いていました。しかしどうも実感とそぐわず腑に落ちなかったのです。

 

〇イメージによる深海 

↓ これくらい深いところかと思っていました。
  しかしここまでの深い部分は「超深海」で全体の2%にすぎません。

f:id:korokoroblog:20170930110753j:plain

200m‥‥ と聞いても、随分、浅いんだな。何だかすっきりしない気分でした。ところが解説では「生物学的に」という条件提示がされました。これでやっと納得ができたと思いました。

 

生物学的に・・・・というのは、生物相で捉えるとこいうこと。

 f:id:korokoroblog:20170930034259j:plain

 

f:id:korokoroblog:20170930034344j:plain

 

〇太陽の光からとらえる深海

200mという深さは、光が届く範囲。という意味も加わっており、それによって光合成ができる生物が存在するかどうかという意味も加わります。そして、光が届くかどうかというのは、明るい、暗いの境界がそこに存在することになります。それがわかってやっと200mの意味が理解できたのでした。

f:id:korokoroblog:20170930034519j:plain

 

〇地質学的にとらえる深海

じゃあ、生物学的ではないとらえ方ってどんなとらえ方なんでしょう‥‥「地形的」「地質学的」ということなのかな? と思って講座後に伺ってみました。推測どおりで、「地質学的」なとらえ方で「水深の平均を基準」に考えるのだそう。「ちょっと不確かですが…3000mぐらいだったかと」(←私のこの記憶も不確か)

 

地質学的な「深海」について何メートルなのかを調べてみたのですが、その数字が出てこなくてよくわかりませんでした。

f:id:korokoroblog:20170930034627j:plain

                          ↑

          そして、パネルには上記のような記載がされていました。

水深区分には諸説あり、本展では統一はしていない 

 

他に、いろいろな説を見ても、それって本当なんだろうか? とどこかで疑っているみたいなのです。ところが、これは「一説」です。というお断りが一言あるだけで納得! となります。⇒【*1】  

ラスコー展を見た時に、常設展で人類の歩みのパネルにも ↓

 

                 こんなお断り書きがされていました。

2010年3月の時点で有力な仮説を組み合わせて作成。
不明、あるいは異論のある部分には「?」をふしてある。猿人・原人・旧人・新人とは人類を4つの進化段階に分けた時の呼称

こういうお断り書きがあると、解説がストンと腑におちてくれるのを感じていました。

 

〇深海のイメージの違いはどこから?

「深海は200m以下」と聞いて、なんかおかしい・・・・ 自分の感覚とは違うと思っていました。なんでこんな齟齬がおきてしまったのかと考えてみると・・・・ 

世界最深のマリアナ海溝、1万メートルに生物が生息! というドキュメンタリーを昔(1995年のことのようです)、見たことがあって、深海=1万メートル とは言わないまでも、千メートル単位の深さだと思っていたようでした。

 

今回は、招待券入館なので、混雑もしていることですし、深海の不可さについての解説パネルの確認と、先日、ロイヤルエクスプレスで提供されたお料理の「イセエビ」と「キンメダイ」の生息域や環境が確認できれば・・・・ と思っていました。

 

 

■2章:水深ごとの深海生物図鑑

目的は、イセエビやキンメダイが陳列されているかどうか・・・・

                          ↑

                  海老らしきものはいますが
                  イセエビ、キンメダイはいませんでした。

 

9月に横浜-下田間を走るロイヤルエクスプレスに乗車したのですが、その時に提供されたお料理が、伊勢海老と金目鯛でした。提供された時に、生息する水深の話をしていたので、それを確かめたいと思いました。⇒【*2】また自分にゆかりのある場所がいろいろなご縁でつながっていて今回の展示でもつながりがあったり⇒【*3

 

 

 

■3章:深海と巨大災害

地震のしくみ

地震の調査でもいろいろなことがわかったようです。そこでよく理解できなかったことが、地震は地面がスライドしておこるというのです。これまで地震のしくみというと下記のように、フィリピン海プレートがひきずり込み、陸側のプレートが跳ね上がると理解していました。

 

[GIF画像集]地震 created by ぺろGIFまとめ速報

[GIF画像集]地震|無料GIF画像検索 GIFMAGAZINE

 

津波発生の模式図 

ところが今回の地震の解説では、

f:id:korokoroblog:20170930154241j:plain

「断層すべり量」という表現がされていて、跳ね上がっているわけではないようです。この「すべる」という概念が、わたしには今一つ、わかりませんでした。

 

地震断層を調べる

上記のすべった断層を調べるために富士山2こ分の深さ、約7000mの深さの海底から、さらに850m掘り進んでその部分の土を持ち帰るという偉業を果たしました。

 

この偉業について次のように語られていました。

「私自身は“生物屋”ですけれど、JFAST(Japan Trench Fast Drilling Project=東北地方太平洋沖地震調査掘削プロジェクト)の成果は目覚しいものがありましたね。まさに世界に誇るもの。海底を掘り抜いて地層サンプルを回収して、そこに地震による摩擦熱を計測するための温度計まで設置した。『まさにここがすべった断層に間違いない』という特定まで行っているのです。これからの減災や地震予知といった分野では、世界中の研究者から参照されるデータになるのではないでしょうか」(倉持博士)

(2ページ目)ダイオウイカだけじゃない「深海ブーム」の最先端とは | 文春オンライン

 

その作業は、こんなパイプを ↓ ただただひたすら繋げて海に沈めていきます。

f:id:korokoroblog:20170930164003j:plain 

先端には(↑)こんなドリルのようなものをつけて掘り進みます。ドリルは摩耗していて、海底7000mのその先の地中との格闘の様子がしのばれます。

 

 ↓ パイプの雄雌のつなぎ目:管の外形と内径の差(=厚み)が見てとれます。7000mの海底の水圧や水流に耐えるために必要な厚さなのでしょう。外形に対して内径はこんなに小さくなってます。この差がネジ部分でねじ込まれている管の厚さです。

f:id:korokoroblog:20170930164030j:plain

      ↑ 内径                   ↑  外径

 

〇地層のサンプリング

この管の中に下記のような掘削した土を入れるものを通して、コア資料をサンプリングします。地震が起きたときに横滑りした地層の部分というのですが、映像で見たものと様子が違うような気が・・・・

f:id:korokoroblog:20170930164243j:plain

 

拡大してみると・・・・

f:id:korokoroblog:20170930164341j:plain

 どうも偽物っぽい・・・・ と思ったら、これはレプリカでした。

地震によっておこった断層部分の試料は、地層がうろこ状に変形していることが、地震のすべりによる力を受けた証拠。引き上げられてくるチューブの中に、この状態の資料をみつけた時のの研究者たちの目の輝き。とびっきり素敵な笑顔でした。静かながらも、うろこ状態の資料を確認して、かみしめるように確信していました。

 

〇すべり層のその正体は・・・・ スメクタイト

f:id:korokoroblog:20170930220234j:plain

すべったと言われる地層の摩擦係数は、0.1。この数字が何を意味するかというと、断層がわずかな力でも動く、つまりすべるということだったのです。

 

また、このスメクタイトという成分が面白いのです。非常に細かい粘土鉱物で、女性のファンデーションに使われているものと一緒。つるつるすべすべにする効果と、保湿効果があると言います。地球の奥底に存在するものが有する性質を利用して、女性はメイクをしていたのでした。

 

科学技術は自然の中に存在する物質や、そのしくみがヒントになって技術革新が行われてきた歴史があります。女性の肌を美しく見せる成分もまた、地球の地中奥深くに存在し、そのすべりやすさが地震による横滑りを起させるもととなっていたという…

〇摩擦熱の確認

しかし、このサンプルが地震による断層であることを証明するには、この地質の掘削した部分に温度計を入れて摩擦熱を確認しなければなりません。ところが、温度計を入れようとしたら失敗してしまいました。せっかくサンプリングできた標本の確定を行うためには、なるべく時期をずらさないうちに、再度、温度測定を行う必要がありました。

 

ところが、真っ暗な深海です。そのパイプの口を探すのが一苦労。なかなかみつかりません。(これはちょっと意外でした。深海でも何か発信機をつけたり、衛星で位置確認ができると思っていました。)真っ暗な深海に、スポットでしかあたらない光でパイプを探しあてるのは、軌跡に近いものがあるようです。しかしその穴がみつかりました。その次は、穴に入れる作業です。手に汗握ります。入った瞬間、やった! と研究者とともに喜んでました。

 

そして、温度計を850m下まで入れて温度測定します。

f:id:korokoroblog:20170930165006j:plain

                ↑

こんなロープのようなものにつながれた温度計を、パイプの中を通していくのです。通したあとは、そのまま8カ月だったかな? 温度の測定をします。そして引き上げます。これまた、大変な作業です。途中で切れたり、ひっかかったりしたらせっかくのデータが水の泡・・・・

  

f:id:korokoroblog:20170930165348j:plain 

こんな状態で測定したものを丁寧にひきあげていきます。そして見事、引き上げられました!

 

これに至る間には、数々の失敗があったことが下記の表でわかりました。

f:id:korokoroblog:20170930212018j:plain

孔口装置の設置に失敗したり、 パイプが折れたり、水中カメラが壊れたり・・・・といろいろなトラブルを経ての成功だったことがわかると、その成功の喜びもひとしお。こちらにも伝わってきました。

 

今度は、測定した温度のデータの確認です。

f:id:korokoroblog:20170930165452j:plain

 

断層の境界部分、800m当たりの温度は、0.31度、高かったそう。これで摩擦熱が発生していることが確認でき、めでたくこの断層は地震によるものだと証明されました。

 

以上を持って、採取されたコア資料は、すべりの力によってうろこ状に地層が変形するという視覚的な状態が確認されており、その部分の摩擦熱も確認にされたことによって、地震の核心部分のサンプルを取り上げることができていたことの証明となりました。

 

〇摩擦熱は、いつまで保たれるの? 

ところで、またまた疑問が・・・・

地震による摩擦熱って、1年以上たっても持続していて計測しても残っているものなのでしょうか? そして、0.3度というわずかな温度差が、地震による摩擦熱の温度差と認められるものなのでしょうか?

 

 

■研究者らしき方が・・・・

そこの部分がわからないと、この結果の意味を理解できたことにならないと思いました。そこに、おそらくお客様をご案内し館内で解説している研究者らしい方がいらっしゃいました。チャンスを伺い、間隙を縫ってお声かけさせていただきました。

 

地震による摩擦熱は、5年間ぐらい続くのだそう。しかし、温度計の設置に失敗したあとは、少しでも早く測定をした方がいいので、すぐに次の測定を実施したのだそう。そして0.3度の差は、地震による摩擦熱として十分認められる温度とのことでした。

 

地球の平均気温が、1度上昇。と言われてもたった1度と考えてしまいがちです。しかし恒常性を保つ機能のある地球の温度が、1度上がるということは大変なことなんだと思うようになりました。人の平均体温体温が1度上がる・・・・と考えるのと同じだと理解しました。

 

写真で撮影した解説パネルを見たら、温度計の精度が 1/1000度という高性能なものでした。そのレベルの測定において、0.3度の差というのは、いかに大きな差であるかが理解できます。

 

 

また地震の仕組みついて、これまでプレートの引き込みによる、反発だと理解していました。しかしすべりという意味がよく理解できないという質問に対して、両手でその動きを表現されました。下の方向に引き込むプレートに対して、その上のプレートが跳ねるのではなく、横にスライドするという動きを手で示され、とてもよく理解できました。

 

それによって、「摩擦係数が0に近い」という意味も理解ができました。やっとプレートがすべったという解説の意味が理解できたと思いました。

 

帰りに再度、研究者の一覧を見ていたら、なんと、お話を伺った方は、この展示の責任者でもある動物研究部長 倉持利明氏であったことがわかり、びっくり! 文春のインタビューを受けていらした方でもありました。今回の展示や、研究の意味についてパネルで次のように語られています。

 

「この展示は2013の第二弾ではなく全くの別もの協力機関、動員した研究者は2倍。深海生物の多様性、進化、生態、巨大地震津波発生のメカニズムなど、分かったことはほんの一部。私たちはどこに向かって進んでいくのか共に考える展示であることを願う」

f:id:korokoroblog:20170930132827j:plain

深海探索の一歩が、巨大地震の解明の大きな一歩となりました。私たちもこれまでの知識に新たな知見を加えて、書き換えて行かなければならないこと。そしてそこから地球の豊かな自然との付き合い方を模索していかないといけないのだと思いました。

 

 

■感想 まとめ

地震直後の調査

また、このようなことも文春オンラインで語られていました。

「私が感動したのは、東日本大震災の翌日には、小笠原諸島周辺でまったく違う任務に就いていた深海調査研究船を大急ぎで東北沖に派遣させたことです。突発的に起きた大規模災害でしたが、急遽世界中から地震や海底地形の研究者を集めて、国際プロジェクトとして『ちきゅう』を送り込んだのです」(同前)

 

以前、「生命の星・地球博物館」で、地震と向き合ってきた日本人についての映像を見た時のことを思い出しました。100年に1回おきるという大地震。1800年代におきた安政の大地震の時に、この地震を後世に残そうと記録や絵にした人がいたという話がありました。その記録によって、地震の解明に大きな貢献を果たしたといいます。その100年後の関東大震災。この時も、あることに着目をして記録をしようとした人がいたそうです。ところが、なんらかの理由(圧力? 暴動? 紛失?)で記録ができなくなってしまったと言います。(理由は失念してしまいました)その記録、データがとられていれば、地震研究の大きな躍進となっていたそうで、その後におきた阪神大震災の予知に大きな可能性をもたらしていたかもしれなかったと。100年に1回という現象。そのワンチャンスの貴重な記録をいかに残していくか・・・・それを逃してしまうと次の100年までが空白になってしまうと悔やまれていました。

 

先人たちは、地震だけでなく、富士山の噴火の時も、その記録を今、しなければという使命感に燃え、危険を顧みず富士山の噴火記録をした人がいたということも加えられていました。記録に残すことがいかに大切であるかを伝えていました。

 

東日本大震災の翌日には、小笠原諸島周辺でまったく違う任務に就いていた深海調査研究船を大急ぎで東北沖に派遣させた」 

 

これは、科学者の使命感、本能のようなものだったのかもしれません。過去に苦労をしながら記録を残してきた人たちと同様、100年に一度という歴史に遭遇した科学者としての任務? これまでの研究も先人たちが苦労して残してきたデータをもとに今の研究が引き継がれてきたこと。「今を記録することの意味」を、わかりすぎるくらいわかっていたからこそだったのではと思いました。

 

 

〇深海研究のすばらしさ

今度は『深海研究すごい!』と言ってもらいたいですね」

     出典:ダイオウイカだけじゃない「深海ブーム」の最先端とは 
                         | 文春オンライン  

 

7000mという海の底までパイプをつないで届かせ、その先の海底をさらに掘り起こす。その穴に温度計を設置。その間の何度かの失敗にも屈することなく実現させてしまった。純粋に「深海の研究はすごい!」と思いました。

 

「深海展」の記録は、そんな研究者の戦いを自分なりにまとめてみよう・・・・って思わされました。ここまで深海の研究が進んでいる! こんな苦労の末に、試料を手にしたこと。地震の地質調査のことを中心にブログにまとめよう・・・・ と思ったのは、研究者の「すごい」って思ってもらえたら…その気持ちが伝ってきたのだと感じました。

 

ここで得られたデータが、100年先の人たちにも、あの時、すかさず研究者を集めて向かわせ、苦難を乗り越えてデータをとったことに対してリスペクトされ、同じように研究者のマインドを刺激して、新たな研究をもたらすDNAとして引き継がれていくのだろうと思われました。

 

 

〇成果と今後の課題

f:id:korokoroblog:20171001164325j:plain

スメクタイト(女性のファンデーションと同じ成分というところがおもしろい)の存在を確認することによって、そこに地震がおきると「すべり」の発生が考えられると言います。今後、地震津波のシミュレーションの研究に大きな進歩がみられ活用されるだろうとのこと。

 

 

見学者にもそのツルツルの状態、光沢感が化石となったもので体験できました。

 f:id:korokoroblog:20171001164227j:plain

 

 

■会場での会話

会場がとっても混んでおり、展示を見るのも、ゆっくり停滞ぎみでした。そのため、展示を見た人たちのいろいろな会話が耳に飛び込んできました。その会話がとても興味深かったです。

 

発光する生物のところでは、「発光するってどういう仕組み何だろう」「どういう原理なの?」「何で発光するんだ?」となぜ、なぜという疑問があちこちで発せられていました。

そして解説を見ながら「なるほど~ そういうことだったのか」「これってどういうこと?」と解説をただ見ているだけではなく、解説を消化して自分なりに理解しようとしていて、さらに新たな解釈を加えているように感じられました。だから、解説を読み込んでいるため、なかなか前に進まないのです。それが混雑に拍車をかけていたような‥(笑) ただ読み流しているのではなく、自分のフィルターにかけて、過去に見たものや自分の持ってる知識と対応させていました。「これってアルビノみたい・・・」(生物学の知識のある人たちなんだな…)とか。「カップラーメンがあんなに小さくなるってことは、カップの構造がどうなったってこと? 空気が抜けるってことなのかなぁ・・・」「パイプを沈めたはいいけど、引き上げるのはどうするんだ?」「これまでは、こんなものがありましたって見たままでよかったけど、こうして、いろんなデータが増えると、そのデータをどうやって生かしたらいいかも考えなくちゃいけないわけだからなぁ…」「地球って壮大でわからなくなって、さらに宇宙は、もっとわけわからなくなってたけど、今度は「深海」ってまた新しいジャンルまで出てきちゃったよ・・・・」「ほらこれ、ファンデーションだってよ」とか(←私と同じところでツボにはまってる)

 

見てる人たちが、みんなそれぞれに考えたり、疑問を持ったり、展示された結果に対してあれこれ考えて、その先のことを想像したりしながら見ていることに、とても心地よさを感じさせられていました。美術展を見ている時とは違う空気を感じられました。なぜ、なぜを考えていて、それが日常のことである人がいっぱい・・・・

 

そういえば、大英自然史博物館でこんな会話をしてた人がいました。

「私たち、日常だとなんだか、浮いてしまうのだけど、ここに来ている人たちの中にいるとごくごく普通・・・・ ここに来ている人は、日常は、どこにいるんだろう‥‥」

 

多分、思考のアプローチがどうも世間とは違う… どこかで阻害感みたいなものを同じように感じているのかも・・・・と仲間意識を感じさせられたのでした。

 

 

倉持氏が語っていた

私たちはどこに向かって進んでいくのか、共に考える展示であることを願う

見学者は、それぞれに、いろいろ考えたり、想像したりして楽しんでいると思いました。

 

後日談(2017.10.04)

知人から招待券をもらい、行きたいならあげるわよと母からチケットをゆずり受けました。「どうだった?」と聞かれ、かくかくしかじか・・・・と話したら、「なんだ… 大昔の化石みたいのが展示されてたの? 博物館っていうから、実際に魚が泳いでいるのかと持ってたわ」

 

twitterで、魚が泳いでいない… と言っている人がいて、そういう人もいるんだ…って思っていましたがこんな身近にもいました(笑) 展示してあるのは化石じゃないし… 生きた魚がいるのは博物館じゃなくて水族館だし・・・・ どうやら動物園が近くにあるから勘違いしてる模様(笑)

 

科博は休日、親子連れがいっぱい。私もこんなふうに子供の頃に博物館とか、美術館に連れてこられていたら、いろんな興味が開眼していただろうな… なんて思っていたのですが… でも山に登って自然に触れたり、動物園にはよく連れっていってもらったので、行く先は違っても、子供の頃に自然に触れていることは、どんな勉強よりも大事だと思うのでした。  

 

 

■参考

〇特別展「深海展2017(上野・国立博物館)」が男のロマン満載だった!【展示会感想・レビュー】 - ぶらりぼっち日和

〇深海2017③|鍋の暇つぶしブログ

〇宇深海展(2017)が充実展示でパワーアップ!凄い展覧会だった!【展覧会感想・レビュー/深海2017】 - あいむあらいぶ

〇話題の研究 謎解き解説<プレスリリース<海洋研究開発機構

〇ダイオウイカだけじゃない「深海ブーム」の最先端とは | 文春オンライン

〇国立科学博物館 特別展「深海2017」|カ素ブログ

 

 

■脚注(自分用メモ)

 

*1:■科学展示と美術展示の解説の違いについて感じたこ

科博の展示は、こうした解説が明解。「〇〇〇において〇〇〇」と条件設定が明確だったり、「われわれは、こう考える」と一般論と私見が区別されていたり、「〇〇の説を採用した」と、いろいろある中から、これを選びましたという提示が明確にされているのを感じていました。

一方、美術展ではそのあたりが比較的あいまい。よく使われる「最高峰」という表現も、この言葉を使うには、条件設定が必要じゃないのかなぁとか、私見であることを明示をした方がいいのでは? そんなことを考えてしまうのです。科博の展示解説は、見ていても、そういうひっかかりがなくすんなり入ってくることが多いと感じていたのでした。

ーーーーーーーーーーーーーーー

*2:■伊勢海老と金目鯛が生息する水深

ロイヤルエクスプレスで提供された、伊勢海老と金目鯛。ダイビングが趣味のマネージャーさんからお料理を提供され、伊勢海老が目の前を泳ぐとか、金目鯛は深いところにいて1000mぐらいなので網をそこまでおろして捕獲するという話を伺いました。「深海」についての話に花が咲き、「深海」は200m以下であること。それは、海に届く光の影響があること。光の種類によって、届く深さが違うといった話をしていた時に、「深いところにいる魚を引き上げた時の反応が、その変わり目のところと一致する」と話されていました。水面に引き上げられる直前でもまた変化するといった話をされていて、具体的な話は失念してしまったのですが、光の色によって届く距離の表を見ると、そのお話しと一致してるなぁ… と思いました。「これまで潜って見てきた魚の様子が理屈と結びつきます」とおっしゃっていてとても興味深そうにお話を聞いてくれました。私もダイビングの話を、この表によって一致させることができました。「深海展」の展示が、ロイヤルエクスプレスの旅の楽しみをより深めてくれるのでした。(⇒〇プラスαの会話 

ーーーーーーーーーーーーーーー

*3:■研修場所とのつながり

ダイビングをされるということだったので、私が以前、研修を受けた施設のことをもしかしたら、ご存知かも…と思い聞いてみると、働いているホテルのすぐ近くとのこと。今回、そこに立ち寄ろうかと思ったのですが、「下田開国記念館」にしたので、次に訪れる時は、そこに立ち寄りたいと思っているという話をしていたら、また応募して、次は日帰りでなくうちのホテルに泊まって、そちらに行かれては? とお名刺をいただくようなご縁に・・・・

そしてそこでの研修は、顕微鏡を使いこなすためのもので、海で採取してきた生物を2日間、観察スケッチするというものでした。奇遇にも今回の深海展で、その施設が協力しているようで、常設の企画展では、その場所の名前を目にしていました。これまで単に研修を受けた場所にすぎなかったのですが、海洋生物学では、定評がある場所だったらしいことが、わかりました。また、会場でも海洋関係の方らしいのですが、「私は、〇〇か〇〇にいきたかったのよね‥‥」なんて話もされていました。そこの施設の方が、調査船にも乗船していたようです。なんだかここで研修をうけたということが、ちょっと誇らしく感じられてきました。(笑) 最近になって、絵を見る時というのは、顕微鏡を見る視野と同じように見てる・・・・と思っていたので、自分のモノの見方の基礎を、身につけた場所という思いも強くなっていた場所でした。

ーーーーーーーーーーーーーーー