コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■小泉八雲記念館:見どころ&関連周辺情報 

島根県松江の小泉八雲記念館では、企画展「ハーンを慕った二人のアメリカ人」が行われています。常設展と企画展の紹介を、インターネットミュージアムでしております。ご覧いただけましたら幸いです。開催期間は2019年6月27日(木)―2020年6月7日(日)

小泉八雲記念館「ハーンを慕った二人のアメリカ人」 | インターネットミュージアム

 

以下、小泉八雲記念館について、紹介できなかった部分の補足を致します。  

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*掲載写真は、撮影可能な部分(エントランスと外観)です。
 一部、関連写真として、隣の「小泉八雲旧居」で撮影したもの、周辺の関連する観光スポットも紹介しています。

 

 

 

■2016年リニューアルオープン

初代の小泉八雲記念館開館が作られたのは1933年、市民の有志によって建てられました。その翌年1934年、松江市に寄贈され開館します。 

八雲の教え子や、八雲にゆかりの人達によって八雲会が結成され今に至ります。記念館設立は、八雲会によって資金調達や土地の提供などがあり建てられました。

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写真はリニューアル前の小泉八雲記念館です。古代ギリシアの神殿を思わせるファサードの建物設計はモダニズム建築の旗手、山口蚊像。黒部川第二発電所を設計したことでも有名です。

有志による開館から80年余りの時がたち、2016年1月、リニューアル工事が行われました。この一帯は塩見縄手と呼ばれています。(⇒*1

 【塩見縄手の見どころスポット】
  〇明々庵(⇒*2
  〇武家屋敷(⇒*3
  〇小泉八雲旧居(⇒*4

塩見縄手地区が、 松江市伝統美館保存区域に指定され、小泉八雲記念館も木造平屋の和風外観に建て替えられました。

閉館後、ライトアップされた小泉八雲記念館。その奥には小泉八雲旧居が続きます。

 

2016年夏、小泉八雲記念館は増築され、一部2階となりました。リニューアルによって延べ床面積も増え約3.7倍となり、観光客がゆったり鑑賞できるようになっています。過去に訪れたことのある方は、様相の違いに驚かれるようです。リニューアルオープンの年は、日本人小泉八雲が誕生して120年の記念の年でもありました。 

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■ アプローチ

島根県尋常小学校の礎石

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入口には、英語教師として赴任した島根県尋常中学の礎石があります。ヘルン校舎として親しまれた建物は、いろいろに利用されながら、昭和51年、老朽化で撤去されました。玄関の円柱礎石がここに・・・・



 

■エントランス

エントランスは写真撮影可能ですが、展示室はNGです。

〇映像展示

入口を入ると、八雲のの生涯をまとめた映像のコーナーがあります。八雲のことがよくわからなくても、映像を見るとおおよその概要をつかむことができます。

 

神話の国、日本・・・・

八雲が日本に興味を持ったのは、英訳された古事記を読んで、神話の世界に興味を抱くようになったことや、ニューオーリンズ万博で日本文化と出会ったことからだと言われています。1890年、念願かなって日本の横浜にやってきました。そんな八雲のの歩みが上映されています。

 

〇略系図

八雲と妻セツの関係図がパネルで紹介されています。
つながりなどがわかりやすいです。

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ミュージアムショップ

八雲関連の本やグッズなど、各種取り揃えられています。 

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■第一展示室

コンセプトは「その眼が見たもの」「その耳が聞いたもの」「その心に響いたもの」。八雲の生涯を年を追う編年で紹介しているのでとてもわかりやすいです。

 

参考:八雲の年譜

www.hearn-museum-matsue.jp

yakumokai.org

hearn2015.sanin-japan-ireland.org

  

こちらの写真は、「小泉八雲旧居」にて撮影した年譜です。

展示は、ゆかりの品や訪れた国の地図など、壁や床、展示ケースを駆使して紹介されています。生い立ちや、日本に訪れた経緯、日本での生活、海外での旅など順を追っているのですんなり入ってきます。

展示方法も壁面を岩のような凹凸面で、滞在場所が区分されています。転機となった出来事はインパクトある色や表現で目につきやすい工夫がされています。床面は、八雲が訪れた場所が記され、その航跡を弧でつないでいます。流浪の様子が視覚的にも理解できます。空間を十分に使いこなした展示は、興味を誘う構成になっています。

 

  

■第二展示室

〇8つの切り口で八雲のオープン・マインドに迫る

八雲の事績や思考を8つの切り口から紹介しています。

「再話」
日本のこころ
「日本のくらし」
クレオール
「ジャーナリズム」
「教育」
「いのち」
「八雲から広がる世界」・・・・

八雲をよく知らなくても、興味を持てれば、深く理解できる構成になっています。八雲の自然観や宗教観など幅広い世界を感じることができました。

展示は、著作の一節や八雲の言葉が書かれており、示唆に富む言葉が続きます。小泉八雲文学を読んだことがなくても、抽出されたエッセンスに触れることができた気がしました。八雲が実に幅広い思考を持っていたことが理解できます。

第一展示室の旅の様子なども重ね合わせると、より深く八雲を理解できるのではないでしょうか?

 

*もう一つのオープンマインド

八雲のオープンマインド(開かれた精神)は、彫刻としても表現されています。八雲の思想を表す「オープンマインド」を形どったモニュメントが、島根県立美術館の野外彫刻に展示されているのでこちらも必見です。作品名は「オープン・マインド・オブ・ラフカディオハーン」(⇒*5

 

 

〇「教育」 

断片で伝えられる言葉の中に、日本に対して深い考察がされています。日本を認める一方、手厳しい評価もされています。「教育」について次のようなことを語っています。

「日本の教育で気がかりなのは、記憶力偏重で想像力が育まれないことだ」

100年前に、このような洞察をしており、現在の日本の状況を示唆しているようです。今後、どうすればよいかなども触れられていました。

 

一方で、日本人が気づいていなかった本質の部分を引きだし、世界に伝える役割も果たしました。自然とともに生きるしなやかさを高く評価しています。

野口米次郎(イサム・ノグチの父 世界的詩人)は八雲を「予言者」と呼んでいたそうです。

 

〇再話コーナー

また八雲が作った「再話」の朗読を聞けるブースがあります。

八雲は、日本の伝説や幽霊話を語り直す再話文学を松江で手掛けました。ここでは山陰地方の5つの怪談を聞くことができます。朗読は松江出身の佐野史郎さんと音楽は山本恭司さんです。

読むのではなく耳から伝えられる伝承の文学。子供の頃に聞いた怪談話の裏に込められた真意などを知り、また新たな一面にも触れられます。

八雲は「怪談には一面の真理がある。だから将来においてもその真理に対する人々の関心は変わらない」と語っていたそうです。

 

 

〇八雲の書斎再現

東京・西大久保の自宅の書斎を、再現したコーナーがあり、特注した八雲の机が展示されています。

こちらの写真は、隣の「小泉八雲旧居」に展示されているレプリカです。
f:id:korokoroblog:20191218175259p:plain小泉八雲旧居にて撮影(レプリカ)

 

実物が小泉八雲記念館に収蔵されています。

 

〇ジャーナリズム 

ジャーナリストして新聞などの記事も書いていました。その実際の記事が日本語で展示されています。それは第二展示室の再話コーナーの反対側の壁の中に埋もれています。

というのも、ショールームで壁紙のサンプルを展示するような展示法なので、気付かずに過ごしてしまうことがあるかもしれません。

両面に展示されており、10面ほどあるので、読み応えがあります。

八雲の感受性で受け止めた記事は、とても興味深い内容でした。人種問題を始め、社会の様々な問題を、この時代、八雲ならでは捉え方でアウトプットした生の記事を読むことができるのは貴重です。

 

 

 

■第三展示室

企画展が行われており、「ハーンを慕った二人のアメリカ人」が開催されています。

 

 

■階段展示 

2階に上がる階段には、写真が展示されています。八雲の家族や、八雲にちなむアート作品を眺めながらライブラリーへ・・・・

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■ライブラリー

展示を見ていると、八雲の作品を目にしたくなってきます。2階にあがると、ライブラリーがあり関連の書籍がたくさんそろっていました。

 

寄贈図書などもあり、読書スペースとして椅子なども設置されています。 f:id:korokoroblog:20191219003030p:plain

 

英語で書かれた書籍もずらりと・・・

 

〇企画展関連書籍の紹介

1階の展示室3で行われている企画

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ハーンを慕ったボナーが読んでいたという遺作『日本』 
日本語版と英語版をライブラリーで手にすることができます。初版本は1階で展示されています。

「日本 一つの試論」はアメリカの大学でハーンが講義をするために準備した草稿でしたが書物として出版さることになりました。ハーンの遺作となる作品です。

内容は日本の宗教の意味を、家庭・地域社会・国家というレベルで論じています。祖先信仰を基軸とする日本の宗教について書かれています。

ボナー・フェラーズは、大学で日本人留学生と出会い、ラフカディオ・ハーンを紹介され傾倒し、すべての著作を読破したと言います。その中でも「日本 ひとつの試論」に大きく影響を受けていました。

 

この作品は、1階の第二展示室でも紹介され、内容の一部に触れることができます。断片の言葉からも、日本に対して深い考察がされており、高く評価していたことが伝わってきます。一方、松江から住まいが変わると、松江とは違う空気に厳しい評価もしています。

「日本の教育で気がかりなのは、記憶力偏重で想像力が育まれないことだ」

100年前に、このような洞察をしており、現在の日本の状況を示唆しているようです。100年後の日本を見ていた予言者のようです。

日本人が気づいていなかった本質の部分を引きだし、自然とともに生きるしなやかさを高く評価していました。一方、悪いところの芽も鋭く見抜いています。今の時代を象徴しているように感じられました。今後、日本はどうすればよいかも提言しています。

野口米次郎(イサム・ノグチの父 世界的詩人)は八雲を「予言者」と呼んでいたそうです。

 

1階でそれらの情報を見ながら、どんな本なのかとても気になっていました。2階に上がってライブラリーを眺めていると、それを手にすることができるというしかけです。知りたくなったそのタイミングで存在しているという、最良のシチュエーションでした。

しかも英語版も一緒に閲覧できます。装丁の菊の御紋に重みを感じさせられます。日本国籍を取得した八雲が、日本人としての感覚を持ってその紋章を表紙にしたのでしょうか。あるいは客観的な視線で、日本人の精神、象徴的存在として記したのでしょうか? 

 

〇日本の災害対策が世界へ

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「自然や災害が頻発する風土が、変化を受け入れる日本人の国民性を形成している」 

八雲は、日本の自然災害を受け入れる国民性について語り、過去の災害における実話をもとに、執筆をしています。嘉永7年の安政東南地震津波が起きることを知らせるために、収穫直前の藁がつまれた自身の「稲むら」に火を放ちました。

消火のため、村人たちが高台に集まり難を逃れるという実話に、日本人と災害の受け入れ方を見出し、その人を生神様として祀る話を「A Living God」として制作しました。

 

その後、八雲本が翻訳され、国語教材として用いられるようになります。そして2011年の東北の地震を期に再注目をされました。また海外でも、地震対策の啓もうとして「稲むらの火」が注目され、アジア8か国に向け翻訳されました。テキストは防災対策の教科書的に配られて役立っているようです。

日本の自然災害との付き合い方を、八雲が見出し、それが世界に波及し、また今、日本の防災のあり方を考えさせられるものとして戻ってきたようです。

参考:稲むらの火 - Wikipedia

 

上記のような内容の展示を展示室2で見ていました。ライブラリーに来たら、またまたその関連の本があり、触れることができるのです。

 

参考

yakumokai.org

 

 

〇関連図書

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妖怪や怪談話 お隣鳥取の妖怪ロードなどで有名な水木しげるさんの著書など幅広くそろえられています。

 

 

〇検索システム

ゆかりの地を調べることもできます。

 

この界隈を散策していると「小泉八雲ゆかりの地」という看板も目にします。

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参考:下記では、小泉八雲ゆかりの地巡りが紹介されています

yakumokai.org

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 ■多目的スペース

八雲を学ぶスペースとして、レクチャーやワークショップなどを開催される場所です。訪れた時には、エバレット・ブラウン  湿板光画展が行われていました。

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湿板写真家。幕末に来航したペリー提督の随行写真家の末裔。幕末の写真技法で日本の写真を撮影してます。3年をかけた現代の島根に残る「古きよき日本の面影」を撮影。その中から10点が展示されていました。

 

 

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ちょうど、この時期、横浜美術館で 「絵でたどるペリー来航」が行われていました。この展覧会は、異なるメディアの作品を通し、ペリーの日本遠征をたどるという企画で、石版画、水彩画、油彩画、写真などを通して遠征の様子を比較する展示されました。まさに、ペリーに同行した写真家の写真なども目にしていたので、妙なつながりを感じました。

 

心を開いていれば、いろいろなものが、飛び込んできて内包され、また開放されてはばたく。そんなことを感じさせられる松江の旅でした。

 

 

■参考

市報松江 平成29年7月号 今も息づく八雲の精神

2017年1月のブログ記事一覧-にっぽんの文化的アイデンティティを発掘、発見、発信する会 ( JICP )

 

 

■補足

*1:塩見縄手とは
松江城北側の堀沿いの道路のことです。縄手には、縄のようにひとすじにのびた道路という意味があります。松江藩第7代藩主、松平不昧公ゆかりの古庵「明々庵」から小泉八雲記念館」までの約500mの道のことです。江戸時代の武家屋敷の姿を今に伝え、当時の城下町の姿を彷彿とさせます。

 

日本の道100選
松江市伝統美観指定地区で、日本の道100選にも定められています。
 

道100選の碑 

  

〇水燈路のライトアップ

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お城を囲むお堀の周りの道を行燈を並べてライトアップする水燈路というイベントがあり、塩見縄手一帯も特別ライトアップされ幻想的な空間になります。

 

〇遊覧船から見る 

塩手縄手の道と並行して、遊覧船が運行しています。船上から塩手縄手を眺めるのも、アングルが変わり趣があります。道路沿いの松の老木は往時から存在し、その全景を目にできるのは、船上からならではの視界です。

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〇鷺との縁

 小泉八雲記念館あたりで鷺と遭遇しました。 

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松江城は石垣に囲まれていますが、このあたりは、森となっており、石垣がありません。この奥の森は、八雲とセツさんが散歩したと言われている森です。

また小泉家と鷺は縁があり、家紋が鷺で小泉八雲が作らせたのだと聞きました。さらに、八雲が新宿の富久町に住んでいた時、セツさんが鷺を助けたという話が、凡さんの「怪談四代記」に書かれているそうです。松江城付近に生息する鷺も、小泉八雲関連施設の近くが、おちつくのかもしれません。

 

参考:

小泉八雲の家紋 | 日日是家紋

小泉家の不思議なエピソード紹介 八雲記念館・凡館長がトークイベント 島根 - 産経ニュース

 

*2:■明々庵
松江藩七代藩主松平不昧公は、茶人として知られ、その好みによって、建てられた茶室。不昧公150年祭に現在の場所に移されました。 

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関連: 塩見繩手と明々庵 松江最終回 | みどりの木のブログ

 

 

*3:武家屋敷
江戸時代、中級武士の屋敷が当時のまま保存。 

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入口は、客が出入りする玄関と、家族が玄関に分かれていました。

 

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邸内も客を迎える座敷と、家族の部屋の違いが明確。私生活は質素だった様子がわかります。

 

 

*4:小泉八雲旧居 

小泉八雲が、セツ夫人と、新婚生活を5か月(1891年6月~11月)過ごした家。『知られざる日本の面影』の第16章「日本の庭園」には、この屋敷と庭園のことが記されています。

館内には、『知られざる日本の面影』の一節がパネルで展示されています。八雲の目線で、庭を追ってみました。

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「その境とは妙な隔ての壁で半ば、分たれて居る」と書かれています。壁のどの部分がどんなふうに妙なのでしょうか。

この文章と庭を、何度も行き来しながら、照らし合わせていました。八雲がどのような環境の中で創作活動をしていたのか、追体験に浸れます。西洋人の八雲は日本の庭をどう見ているのでしょうか・・・・ 

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庭を見ていて、はっとしました。日本では敷地の境界を塀で仕切るのは当たり前で、塀があることに何の疑問もいだきません。しかし西洋は、隣家との境に塀は作らないと聞いたことを思い出しました。壁が妙な構造なのではなく、壁で仕切っていることを妙だと感じたのではないかと思いました。

 

北側の庭とそれを書いた一説。

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八雲が愛した庭が今に引き継がれていることが、奇跡的です。その庭を、八雲が暮らした同じ空間で眺めるというのは、なんて贅沢な時間なのでしょう。八雲をよく知らずに来たのですが、感慨もひとしおでした。

作品を読んでいないから、行ってもよくわからないだろうなと思っていましたが、パネルにして置いていただくというご配慮が、八雲への興味を掻き立ててくれました。

ところで・・・・ 
土蔵の影から蛙を食べる蛇に自分の肉をやって食べないでくれと言ったという話。

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この話には、ちょっと疑問を感じさせられたのでメモ。

小泉八雲記念館」の展示を見て、八雲は、自然界の循環、摂理などを理解しており、それがあったからこそ、日本の自然観に共感したのだと思っていました。

食物連鎖、輪廻転生、弱肉強食などの見地に立っていたら、蛇のような大型動物が庭に生息するということは、その庭に豊かな生態系が存在していることを理解しているはずです。

蛙が食べられてしまうからと、人的な介在はしないと思うのです。 セツと結婚してまだ間もない頃とのこと。これからのセツとの暮らしを通してコントロールしない自然を知っていく過渡期だったのでしょうか?

 

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八雲は庭のある武家屋敷を望んだといいます。現在、八雲が住んでいた当時のままで保存されているのは、ここだけなのだそうです。

八雲が日本家屋のどんなところに魅せられ、どんな調度品を好んだのか。この空間に身を置くことで、八雲の心に近づけるかもしれません。 

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三方向の庭を見ることができるこの空間が好きだったそうです。著作の中の庭が残され、当時と同じ感覚で見ることができる唯一の場所です。椅子の生活をしていた八雲の目線。片目の視力を失っていた状況で見る庭。八雲の状況になりきってみると、この庭、そして建物も新たな見え方が発見できそうです。

寒さに耐えられず熊本へ転居した八雲。その寒さがいかほどだったのか、この住居の冬を体験してみるのも面白いかも・・・・ 

 

関連:

建築の眼 JAZZの耳 ; tetsuyakimura_weblog 小泉八雲旧居

小泉八雲旧居の紹介 前編 | みどりの木のブログ

小泉八雲旧居の紹介 後編 | みどりの木のブログ

出雲・松江の旅2019 DAY3(20190912)『塩見縄手(小泉八雲記念館・旧居)編』 - Log Book

【松江】八雲が愛した古民家「小泉八雲(ヘルン)旧居」で松江時間を楽しもう|島根ひとり旅ガイド

 

小泉八雲旧居 その➀ : mosquitogarden

小泉八雲旧居 その② 南の庭 : mosquitogarden

小泉八雲旧居 その③ 西の庭 : mosquitogarden

小泉八雲旧居 その④室内、北の庭、 : mosquitogarden

小泉八雲旧居庭園(ヘルン旧居)(島根県松江市) | 庭園ガイド

  

*5:■オープン・マインド・オブ・ラフカディオハーン 野田正明
何を表しているのかは、わかりませんでしたが、見る角度によって目まぐるしく変化するので、面白さを感じました。角度によって形がハート型に見えるところもあります。 

実は、このハート、女性の心をつかむ戦略もあるのかな?なんて穿った見方もしていました。屋外彫刻には、縁結びスポットとして有名な《宍道湖うさぎ》もあり、話題作りの意味もあるのでは?と・・・・

しかしある場所から見たフォルムは、開放されて飛び立っていくように見えました。またある場所では固く閉ざされて殻に閉じこもっているようにも見えます。 

変幻自在する奥深さが感じられ、何かわからなのですが、人の心の持ち方を表しているような気がしていました。

そして、作品のタイトルを見ると・・・ 

「オープン・マインド・オブ・ラフかディオハーン」野田正明 2010

タイトルを見て、このモニュメントの意味を理解できた気がしました。ハートはハーンの心の変化を表しているのだと思いました。日本に来て、日本人のハート触れ心穏やかにさせられたのだと思います。しかし時には、様々な問題もあり、心を閉ざすこともあったはず。世界を旅しながら、心はいろいろに変化し、開いたり閉じたりしてきた様子を表現しているのではないかと・・・・

しかし、陽を浴びて大空に向かって開放されて飛び立つ鳥のようなフォルムを目にすると、心は持ちようによって自在に変化させることができるというメッセージが伝わってきました。 

 

作品には小泉凡氏による解説が書かれていました。 

重層的な流動性は、ハーンの数奇な人生を物語り、開口部のハート型はハーンの差別や偏見のないものの見方、またハーンが重視した「共生」の精神を象徴しているように感じられる。

受け止め方は、見る人それぞれの中にあっていいのだと思います。

 

私がこの作品を始めて見た時は、このような表情をとらえていました。2019年8月。 

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暮れ行く宍道湖を背景に、閉じた姿を写していました。一日の終わりを静かに平穏に迎えようとしていたのでしょうか?この時は、見る角度によって見え方が変化することを知りませんでした。

また、この作品が八雲に関するものであることも・・・・ 夕暮れに浮かぶいくつかの彫刻作品の中から、何か心をとらえたのだと思います。いくつかある彫刻の中から、何か語り掛けてきたのでしょうか。

 

■WAVING FIGURE 建畠 覚造 1998

もう一つ気になった作品がこちら。同じ日に撮影しました。午前中は晴れていたのですが、午後になって急に雨が降り出しました。

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WAVING FIGURE 建畠 覚造 1998

 

作品に映りこむ景色が全く変わりました。

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太陽が隠れると映し出されるものはなくなり、ステンレスに雨の雫模様が浮かびます。

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一日で、目まぐるしく表情が変わる彫刻を見るチャンスに恵まれました。しかし、彫刻自体は、実は何も変わっていないのです。何を反射して映し出すのか、周りの環境の変化によって変わって見えていただけでした。

 

始めて見た時の WAVING FIGURE

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始めて作品を捉える時、どこから、どんな距離感で見るのか。オープンマインドも、同じような距離感で撮影していました。

 

2回目に訪れた時、作品が、回りの環境を映し出していること、また環境に溶け込む作品でもあるという点で、野田正明氏の「オープンマインド・オブ・ラフカディオハーン」と共通性を感じていました。それは、素材が持つ特性でもあったようです。

反射という特徴を持っている両者ですが、平面で構成するか、曲面で構成するかによって、映りこむものの情報量(?)が違うと感じていました。最初に撮影したWAVING FIGUREは、実に様々なものが映し出されるので、何をそこに投影しようか考えながら撮影するこに面白さを感じていました。この表面の加工の滑らかさが変わると、写り方も変わるんだろうなと思いながら・・・・

ところが、天候が変わると、同じフラットな平面なのに、光の量が減ると何も反射されなくなってしまいました。いや、雲で空が覆われてしまったからか・・・・ そんなことを考えながら、「オープンマインド・オブ・ラフカディオハーン」へ。

曲面で構成されるこちらの作品は、映し出されるものが、多くありません。そこに何かを投影するかよりも、見る方向によって変わる形の変化に興味がシフトしていきました。

曲面と平面、さらに素材の面積によっても、同じ反射という性質を持ちながら、全く違う見え方になることに面白さを感じていたことを思い出しました。やはり作品の素材、物質性に目が向いてしまうようです。

1回目、夏に何もわからず撮影していた時も、この2つの作品が中心になっていました。両者の作品の中に、無意識に素材の共通性に惹かれていたのかもしれません。

環境によって跳ね返すものも変わるのは人も同じ。また環境の中にどう溶け込むかも変化します。同じ日に、違う条件の中で作品と向き合えた幸運に感謝。 

こちらは、雨模様の空の中、かすかに見えた太陽

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夕日、夕景にもいろいろな景色があります。今日は、もう無理!と思ってもこうしてちょっとだけ顔を出すことも・・・・ 

 

*「オープン・マインド・オブ・ラフカディオ・ハーン」の様々な表情

曲面に映し出せる情報は少ないと思ったのですが、実に様々な表情をとらえている方がいらっしゃいました。  

ameblo.jp

 

*第一印象を書き留めること 

 日本でハーンが心がけていたことだという。第一印象には常に新しい発見があり、良きにしろ悪しきにしろ「心の動き」がそこにある。忘れてしまいがちなフレッシュな観点を書き留めることで、「その瞬間」の記憶や、感覚なども同時に残すことが出来る。

出典:ニューヨーク・イベント情報紙 よみタイム

野田正明氏の言葉です。野田氏の「オープン・マインド・オブ・ラフカディオ・ハーン」を何も知らずに見て感じたこと。書き留めておかないと忘れる・・・・そんな思いで記していました。ご本人がそれと同じことをおっしゃっており、その言葉は、ハーンの言葉でもあったという奇遇。この言葉に誘発され、忘れていた感覚が呼び起こされてきました。

 

 

*新宿にもモニュメント 世界をつなぐオープンマインド

ハーンのオープンマインドを撮影したあと、観光協会に行きました。遠くに見える棚に差し込まれ、頭の部分だけが見えたチラシに引き寄せられました。

これってオープンマインドに似てない?

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まさにそれでした。棚差しだったので八雲の部分は見えていなかったのですが、モニュメントのフォルムからオープンマインドを感じさせました。

彫刻モニュメントの除幕式のパンフレットで、なんと新宿に設置されます。ぜひ行きたい!しかし、パンフを手にした時は、すでに除幕式は終わっていました。それにしても東京の新宿にも八雲のオープンマインドにつながる作品が設置されたというのは、八雲を身近に感じられるようになります。

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パンフレットは厚手で立派。見開きでこれまで制作された作品が紹介されていました。

野田正明氏の彫刻は4都市に設置され、それぞれが心を開いて結ばれました。ハートの中心には、八雲の胸像が見えたり、夕日が入ったりするしかけがあります。ハートが開かれていれば、きっといろいろなものを受け入れてくれるということなのでしょう。

 

【関連サイト】

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「開かれた精神」アーティスト 野田正明