コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■フェルメール展のコラボ企画:スープストックのスープが絶品

 大好評のフェルメール展にはいくつかのタイアップ企画があります。その中で個人的に注目したのは、スープストックトーキョーから販売されているフェルメールの”牛乳を注ぐ女”のスープ」です。このスープが生まれた経緯などを、スープストックトーキョーに取材してきたのでご紹介します。 

 

 

■絵画からインスピレーションされたスープ

下記はフェルメール展のプレス内覧会会場で、コラボ商品として紹介された、作品《牛乳を注ぐ女》からインスピレーションして制作されたスープです。

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(左)スープのパンとチーズ (右)「フェルメールの“牛乳を注ぐ女”のスープ」

フェルメールの"牛乳を注ぐ女"のスープ」が、試食としてミニカップでふるまわれました。

 

 

■スープの開発物語

リーフレットには、このスープが生まれた経緯が紹介されています。会場でも、今回の広報を担当されていらっしゃる方から開発物語を伺いました。

 

〇絵から読み解くスープの素材

スープの色は、絵の背景の壁の色をイメージ。描かれたパンとチーズから、材料をつめていきます。この絵のパンの質感から絶対に固いはず。チーズ選びにはこだわり、いくつもの候補の中から3種類のチーズが選ばれました。メインのチーズは酸味がありクセがあるゴーダーチーズ。試作は3種類、作られたのですが、その中から、一番、一般受けしないであろうスープを選ぶというチャレンジャーな選択がされました。

 

〇スープから何を伝えるかで選ばれた試作

それは、熟考して作ったスープには普通でない驚きがある。その驚きを「この作品から生まれたスープとしのて印象」として残したいという思いがあったからだそうです。

さらにチーズにマスタードという日本ではあまりなじみのない取り合わせを隠し味にしつつインパクトを持たせています。スープはまさに作品であると・・・・

 

〇素材と温度、素材と粘度の検討

当初、絵で描かれているように最後、お客様自身の手で牛乳を入れて仕上げるということも検討されたのだそうです。ところが、牛乳というのはとてもデリケートな食材。温度管理や注ぎ方によってもチーズと交ざりにくくなるといった話。

またチーズも舌に留まる粘度。サラサラでもなく、ねっとりでもない最適な状態を模索し、チーズの種類とブレンドの割合を検討したことなど、とても興味深いお話を伺うことができました。

このあたりのお話は個人的にもとっても興味のある分野です。実際に牛乳の泡立てで温度を何度にするとよいかを検討するにあたり、牛乳の脂肪分や容器の洗浄状態によってもかなり左右されることを、実験して感じていました。牛乳で仕上げることを断念したというお話は納得させられます。

今回のスープのテーマ。ミルクやチーズという乳製品は、とってもデリケートな食材で温度によっても大きく左右されてしまうものです。

 

〇熱々スープに込めた思いも熱い

このように作り手に熱く熱く語られると、食べる前から、これは絶対においしいに違いない!というイメージができてしまいます(笑) 試食したスープは、イメージだけでなく本当においしいスープに仕上がっていました。

実は、クセのあるチーズを選んだと言われ、ちょっと苦手かも・・・・と思っていました。さらに、最後に選ばれたのが「酸味」「発酵感」の一番強いものだというのです。しかし心配は無用でした。酸味、発酵が強いものが苦手な私が、全く気にならずに食べることができました。

思わず、帰りにもう一度、食べてみようと思ったほど。ところが発売は、フェルメール展の開催と同じ、翌日だったのでした。

 

■スープストックのアートスープについて

スープストックでは、アートスープが2010年頃から提供されていました。私の記憶に残っているのは、ゴッホゴーギャン展の時に提供されたスープです。

引用:Soup Stock Tokyo の秋は、アート。“ゴッホ”と“ゴーギャン”の麦畑のスープが出来ました。|家で食べるスープストックトーキョー 冷凍スープの専門店

 

この時は、店内がミュージアム状態となり、作品解説を聞きながらスープをいただくことができました。

 

 こちらがその時の音声ガイドです。 (今でも残っていることに驚き!)

 ゴッホゴーギャンは、私にとってまだ未知の画家でした。この音声ガイドを聞いて、その概要を少し把握できて、理解を進めることができた貴重なガイドとなりました。

スープストックとアート。それ以前にも「ゴッホの玉葱のスープ」などアート作品とコラボしたスープが提供されていました。

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これらは表面的なコラボだったのではなく、本気で取り組んでいたんだ…と認識を新にさせられた企画だったのです。

 

ゴッホの玉葱のスープ

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引用:ゴッホの玉葱のスープ|スープ|商品をさがす|Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー) 食べるスープの専門店

人気のスープとして、定期的に提供されています。私も大好き!

 

▼「芸術家のレモンと鶏肉のスープ」

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引用:地中海が生んだアートとスープの関係性。「芸術家のレモンと鶏肉のスープ」10月5日(月)より発売|Soup Stock Tokyo

このスープ名の「芸術家」というのはだれでしょう?ピカソらしいです。ピカソの名前を使うにはいろいろと権利関係がむずかしかったようです。(愛人が何人もいるためいろいろ大変らしい…)アートをとりまくいろいろなお話も興味深いです。

 

■販売初日にスープストックへ

〇ひっそりたたずむのはなぜ?

翌日の初日に再訪。しかし、フェルメールのスープはどこ? 

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その他のスープと同じラインナップで「new‼」と小さくマーカーがあるだけです。もっと大体的に、紹介されているものとばかり思っていたので、ない!と思ってしまいました。てっきり玉葱のスープの位置に分捕り、フェルメールの絵とともに紹介されると思っていたので。

「万人好みではないスープ」をあえて選ぶ。

そのことが、店頭の案内の様子からも伝わってくるように感じられました。

今月のおすすめのメニューは「ゴッホの玉葱のスープ」とのこと。それが伝わりやすいメニュー表示になっていました。

 

 

〇スープストックセットで、石窯パンを選択するのがおすすめ

さて、オーダーしたのは、スープストックセット。2種類のスープが選べます。そして2種類のパンかごはんのいずれかを選びます。「フェルメールのスープ」と「瀬戸内産真鯛の鯛粥」そして、石窯パンにしました。(このパンがおいしい)

 

ここは、「ゴッホのスープ」と行きたいところなのですが、以前から食べたかったのですが遭遇できなかったお粥に出会えたのでそちらを選択。

 

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(左)フェルメールの”牛乳を注ぐ女”のスープ
(右)瀬戸内産真鯛の鯛粥

 

 

■試食よりもおいしい!

たっぷりとカップに注がれたスープ。パンの上には隠し味と言われていたマスタードがアクセントのようにのっています。試食ではマスタードをあまり感じなかったのですが、視覚的にもそれが確認でき、マスタード効果がありました。

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スープに合わせたパンは、固いパンと言われていましたが、スープを吸っていて、ふにゃふにゃと柔らかくなっています。固いパンをあえて選んだと聞きましたが、スープに浸してしまうとそんなに変わらないのでは?と思いました。

 

〇石窯パンと比較

そこでセットの石窯パンとで比べて見ることにしました。まずはパンをちょっとだけ浸して・・・・ 次にじっくり浸し時間を置いてから。なるほど~ 固いパンを選んだ理由がはっきりわかりました。

個人的にスープストックの石窯パンは、私好みのとても好きなパンなんです。ところが、スープにしっかり浸して食べると、フェルメールの硬いパンを使うことの意味がよくわかりました。石窯パンの皮の部分の固さがないため、中途半端なしみ具合になって歯切れが悪いのです。

セレクトされた固いパンはスープを吸って柔らかくなっていますが、クルミやレーズンが入っていることで、歯ごたえを残しているのでした。

 

〇チーズのブレンド

特徴あるチーズを絶妙の割合でブレンドし、それぞれのチーズの解ける温度、舌に滞留する時間、粘度など、いろいろな組み合わせが検討され、最終的に残った3つのスープ。そこから選ばれた一品。

チーズの酸味が苦手でも、全く気にすることなく食べることができます。「だし」はかけ合わせることによってうまみが増します。チーズもそれと同じ。そういえば、初めてクワトロフォルマッジを食べた時の衝撃を思いだしました。スープでそれが再現された感じです。

 

 

■青い敷紙が気分を盛り上げる

提供されたスープを持って、イートインコーナーにいきました。すると、他のテーブルのトレーに敷かれた青いシートが目に飛び込んできます。フェルメールスープの販売中は、スープに敷紙が置かれているんだ・・・・と思ったら、それは全員ではありませんでした。

どうやら注文をした人だけのようです。なんとなく特別扱いされているようで、ちょっとした優越感(笑) そしてこの青が何を意味しているか、理解できてることにも・・・・

 

この青は、フェルメールが使った青色顔料のウルトラマリンブルー。別名フェルメールブルーとも呼ばれています。シートはなくなり次第終了なのだそう。

巡り合えた人は、幸せの青いシートになるかもしれません。

提供は11月2日までです。 

 

■「万人受けしなくてもいい」が結果、人をひきつける

店頭では決して目立っていません。このスープを選ぶのは、フェルメールを知っている人。またはチーズが好きな人… あるいは、新商品という部分に気づいた人。そんな方たちに選ばれるスープ。「新商品、万を持して出しました!」的な案内はなく、フェルメールの画像があしらわれたパンフレットがさりげなく置かれているだけでした。

最終の商品選択は、万人受けをする味でなく、興味がある人、わかる人に手にしてもらえればいい。自分たちがいいと思ったものを自信を持って提供しよう。というスープストックの方針のようなものまで感じられたように思いました。

より多くの人に受け入れられることが重要なわけではない。信念を持って伝える。それが結果として「クセのあるチーズが苦手、発酵臭が苦手」という人まで取り込んでしまうといのは面白いと思いました。

チーズ嫌いの人も、ぜひ、チャレンジしてみて下さい!(保障はしませんが・・・・(笑))

 

 *記事内の写真は許可得て撮影、もしくは広報画像を利用。HP上の画像は出典明記の上使用確認済

 

フェルメールのスープ関連

*実際にスープをお試しされた方たちのレポート

フェルメールの名画をミルクとチーズのスープに仕立てた「フェルメールの”牛乳を注ぐ女”のスープ」をスープストックトーキョーで食べてみた - GIGAZINE

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フェルメースの”牛乳を注ぐ女”のスープ | 青い日記帳