コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■仏像の姿 ~微笑む・飾る・踊る~(三井記念美術館)

三井記念美術館では「仏像の姿 ~微笑む・飾る・踊る~」が開催されおり、これまでにない展示と注目されています。仏像を仏師の視点から見るという珍しい企画で、仏師をアーティストととらえています。

美術館で仏像展示が行われると、仏像は美術品なのか、信仰の対象なのかということが話題になります。今回は、はっきり美術品として扱われた展示です。会期は9月15日(土)~ 11月25日(日)。

さらに、アーティストである仏師をより理解するために、仏像の模刻、修復作品も展示されています。これらは東京藝術大学保存修復彫刻研究室(籔内佐斗司教授)とのコラボによるもの。

仏像の模刻、修復作品の展示について、紹介します。

 

 

 

■仏像の模刻や複製 本物を修復したのか、複製なのか見分けられる?

現物を修復したものもあれば、模刻といって、仏像を模写して複製したものもあります。複製の仏像は、時代を経た今の状態と同じように彩色したものです。何も言われず、お寺に納められたらきっとわからないだろうと思います。ぜひ、美術館に訪れて、自分で見極めてみて下さい。

 

■模刻し、当時の彩色をされたもの 

東博で行われた「運慶展」に登場した仏像を発見! 運慶の三男、法橋庚弁の作。天燈鬼・龍燈鬼立像の復元です。こんな色をしていたんだ・・・・ とちょっと目をひくショッキングな色でした。

(復元)と書かれているのは、当時の色や状態を想定して作られたものだそう。

 

興福寺のサイトの解説に、

阿と吽、赤と青、動と静とが対比的に彫刻された鬼彫刻の傑作とあります。

引用:木造天燈鬼・龍燈鬼立像(もくぞうてんとうき・りゅうとうきりゅうぞう) | 「国宝」「重要文化財」 | 文化財 | 法相宗大本山 興福寺

 

私たちが見る仏像は、時代を経たものばかり。正直なところ、この赤と青は、えっ?と!思う色でした。しかし当時、こんな色をしていたということを、研究に研究を重ねて、導き出したんだと思うと見方が変わってきました。 

 

「運慶展」で見た八代童子象の一つ、矜羯羅(こんがら)童子もありました。初めて見た時、「童子と言っても、明らかにおばさん…」と感じてしまったとっても印象深い仏像でした。こちらも、こんな色していたのかぁ…と興味深かったです。

 

他にも見覚えのある仏像がありました。興福寺の天燈鬼立像です。こちらの仏像は、現存する今の色で彩色され再現されていました。

(現状)と表記されています。これは、模刻後、今に至る古びた感じを含めて再現したものをいうそうです。

これらの模刻の仏像は、運慶展で見て知っている仏像だったこともあり、とても興味深く拝見することができました。 

 

(現状)と書かれたものはとても精巧で、元の仏像を修復したものではないかと思ってしまうくらいの出来栄え。では、本体に手を入れて修復したものはどれなのでしょうか? 

 

3体のとてもリアルな仏像があります。「不動明王及び二童子像」です。こちらは、元の像を修復したものだそう。緩んだ継ぎ目の補強や表面のクリーニングなどが行われました。(修復)と書かれています。

  

■これらの研究から明らかになったこと

かつて仏師が制作した仏像を、現代によみがえらせる。そんな作業を通して、仏像が前に出ようと踵を浮かせた瞬間を捉えらることができたそうです。仏像を制作する工程から実証された研究成果として論文にもなっているという対談が、読売新聞 2018年9月14日の紙面で紹介されていました。 

過去の仏師の技術や工夫を研究し模索しながら、それを未来に向けて継承していくために、若い方たちが切磋琢磨しています。

仏師の心にまで迫るのは、なかなか難しいことですが、こうした仏像を解明していただいている方たちの声に耳を傾けてみると、仏像を見る新たなポイントをみつけることができると思いました。

足の重心の位置や、寄木造りはどんな組み合わせでできているのかなど、まだまだいろいろポイントありそうです。

 

ミュージアムショップ

ショップのみの利用も可能です。今回コラボした、藝大、薮内佐斗司教授のご著書や、あまり扱われているところが少ない『國華』もありました。

 

 

■まとめ・感想

今回の展示は、仏像をアートとして、そして仏師をアーティストととらえています。より理解するためには、修復や模刻を手掛けている作り手の立場からも考えてみる。というさらに一歩踏み込んだ展示です。

作り手でなければ、絶対にわからないだろうことが、いくつもユニークな論文になっているとのこと。興味がわいてきたら、それらを見たり展示を見て深めていくこともできます。

・小島久典:鎌倉時代初期の東大寺中性院弥勒菩薩像の模刻と模造模型の制作
・宮木菜月:奈良時代唐招提寺薬師如来像の模刻

 

過去の仏師の技術や工夫を、日々受け止めて感じながら、現代によみがえらせ、未来につなげていく研究の一旦を覗くことができるのは貴重な体験です。仏像をより理解し深めていくきっかけがたくさん潜んでいる展覧会です。