コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■「モネ それからの100年」 VOKKAに記事を書きました

追記(2018.08.23)ニコ生視聴 感想追加(赤字) 

【元記事】(2018.08.15)

 横浜美術館で行われている「モネ それからの100年」が、ちまたで好評のようです。おなじみモネと、あまりなじみのない現代美術の組み合わせ。モネの延長線で現代美術を理解することができ、なじみのないジャンルが身近に感じられるとともに、新たなモネを発見したという方も多そうです。

そこで、最近、なにかと話題のビジネスと美術の視点で、新たな視点を見つけることや、新しい発見をすること。そして自分が好きと感じるものに対して、あれこれ考えてみたら・・・・ 気づいていなかった自分が見えてきたという話を記事にしました。 

以下は、あまりに長くなってしまったのでカットした部分です。

好きなものや、気にかかるものの共通性が見えてくると、自分の思考のベースとなっているものが見えてきたというお話。

*写真は許可を得て撮影しております。

 

 

■自分の見方 目線 何に注目するのかが見えてくる

〇生命とリンクさせる

絵画を見る時に、生き物、命、生命や身体とつなげて見る傾向があります。それは抽象的なものを見る時は、より顕著のようです。

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(左)児玉麻緒《SUIREN》(2016年、作家蔵)
(右)児玉麻緒《IKEMONET》(2015年、作家蔵)
 
作者は「モネは、庭を耕すように絵を描いたのではないか」と、モネの庭を見て感じたそう。また「自分が持っているあらゆる生命というものをどうしたら移し替えることができるか」に関心を持たれています。このあたりの言葉は、私のツボワードです。

そんなの中で、モネのジヴェルニーの睡蓮を思い返し、ご自身の作品が、どこの美術館に行っても自分の絵が生命を放ってくれたらうれしいとご本人が語っていること。そして力強い筆触と強い対比を感じてという解説のあと実物を見ました。

この絵の前に立った瞬間、睡蓮は細胞一つ一つだと思いました。そして今も分裂を繰り返して増殖をしている状態・・・・ 太くて黒い線は細胞壁。作品を見る時、生き物、生物と関連付けて見ていることに気づかされます。
 

〇身体とつなげる

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(左)モーリス・ルイス 《ワイン》1958年 広島市現代美術館
(右)モーリス・ルイス 《金色と緑色》1958年 東京都現美術館
 
これを見た瞬間、歯の断面に見えました。
この作品は、大画面の中で色を幾重にも重ね、画面の下から光が透けて見える新たな手法を模索した作品。モネがキャンバスに色を重ねたことと手法が重なるといいます。具体的にどのように描かれたのかはわかっていないそう。

そのような解説を聞いた上で鑑賞したのですが、やはり歯の断面にしか見えません。一度、そう見えてしまうと、それ以外のなにものでもなくなります。色を重ねることによる美しさと言われても、これが美しいのか… 「美」ってなんだろうと思っていました。

制作上の原理が通底しているということは、理解はできるのですが、この「色」がモネなのかなぁ‥‥ そして、これは、見えない何かを描いたのではなく、私には、歯の断面、象牙質を描いたとしか思えませんでした。
以前、直島のベネッセミュージアムで、安田侃の彫刻を見た時も、赤血球だ!って思ったことを思いだして、なんでも体のパーツに見えてしまうんだと思いました。 

www.kan-yasuda.co.jp

物事の捉え方というのは、ベースとなる知識や学びによって得たものを元に、捉えられているのだと思いました。
 
【ニコ生】これを見た反応が面白かった。かぼちゃや食パン。見る人によってイメージされるものが違ってました。この絵の制作については、謎とされいるようですが、アクリル絵の具と、なんたらかんたらを混ぜて、上からたらして偶然によってできた・・・・ というような貴重なお話があったのですが、聞き取りにくくて残念。
 

■本当にそうなのかな? と思ってみる

〇影響関係はある?

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(左)モーリス・ルイス 《ワイン》1958年 広島市現代美術館
(右)モーリス・ルイス 《金色と緑色》1958年 東京都現美術館

 

前出の作品と、影響関係に取り上げられたのがこちらの作品。 

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クロード・モネ《セーヌの日没、冬》1880年 油彩、キャンヴァス ポーラ美術館

 

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レクチャースライドより

 

色を重ねるという技法は同じと言えば同じですが、色合いのニュアンスが違う気がするし・・・・ そこがオリジナルとの差別化なのか?あと、美しい色の重なりというのも、《セーヌの日没、冬》は美しいと思うのですが、歯の方は・・・・(笑) 上記スライドの「〇」の部分、色のグラデーションに着目です。

 

【ニコ生】この色、私には美しいと感じることができなかったのですが、解説を聞くと(一度、聞いてはいるのですが…)なるほど~って思いました。時間がなくて丈夫の色の重なりを確認できていなかったのですが、こんなにきれいだったんだぁ… と再認識。光の混合は白に近づくけど、色の混合は黒に近づくという原理も見えた気がしました。

 

〇自分なら・・・・

私がマッチングさせるなら、これかなって思いました。

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クロード・モネ 《柳》1897-98年頃 個人蔵(国立西洋美術館に寄託)

 

 モネの作品《柳》(57~59歳:連作の作成から、岸の柳を多く描き始めたころ)葉の隙間から見える向こう岸の空や水面。全て塗らずにあえて塗り残した空間との対比が絶妙。

一方、モーリス・ルイスの作品は、一見、塗りつくされたように見えますが、何度も、何度も重ねることによってこの状態に。レイヤー状態が幾重にも重なった結果。出来上がりの見え方は違いますが、その制作過程は同じ。

 

【ニコ生】前出の「柳」の絵が、抽象だという解説。これが抽象? 和田さんも同様の反応をされていました。柳だってすぐにわかるでしょ・・・・って思ったところで、マルモッタンモネ展の晩年の橋の絵を思いだしました。

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出典:『日本風の太鼓橋』 クロード・モネ | ネット美術館「アートまとめん」

この絵を見た瞬間「橋」であることを認識していました。それは、以前にこれと同様の絵見て「橋」であるという知識を持っていたからです。一度「橋」と認識してしまうと橋意外のなにものでもなくなります。

「柳」もそれと同じなのかも。抽象度は低いですが、「柳」が描かれていると理解していると、それは「柳」にしか見えなくなります。知らない状態にもどして見たら… と考えると、これも抽象になるのかな?と思いました。

そして、モネは晩年になって抽象に向かったと理解していましたが、この絵は、睡蓮を描くちょっと前の57歳ごろです。すでに抽象の世界が広がっていたという新たな認識に変わりました。

 

 

■鑑賞は、過去の体験と重なることで強い共鳴を起こす

 作品を見た時に、いつか見た何かと重ね合わさった時、作者の体験と自分の体験が共鳴する気がしました。

 

〇高層階のレストランからの景色

あっ、ここのシーン、知ってる! 私、見たことある! ここ名古屋のマリオットでは? ミクニからの景色と似てる気が・・・・ 

f:id:korokoroblog:20180815202731j:plain(左)福田美蘭 《睡蓮の池》 2018年3月完成 作家蔵
(右)福田美蘭 《睡蓮の池 朝》 2018年6月完成 作家蔵
  

 

【ニコ生】この絵が、何を表現しているか、和田さんがよくわからなかったという反応でした。そしてギャラリーも・・・・ 実体験をしているかどうか。飲食店内の様子が、ガラスに映り、もう一つの世界が向こう側に広がる。そうした体験のあるかどうかで、受け止め方がずいぶん変わるのかも… 

高い建物の上から、夜や明け方の光の変化を観察してきた経験が、絵の鑑賞、理解に役立っているんだなと思いました。夜景を撮影したいのに、内部が移り込んでしまい、思うように撮影ができないと思った経験。

あるいは、それを逆手にとって、内部の設えをガラスに反映させ夜景の中に潜り込ませてしまった夜景プロデューサーの演出など、そういうものに触れていたことが、この作品の理解を促すのだなと・・・・

テーブルの様子がアップに映り、これ、ミクニだとほぼ確信していたのですが、違っていたことも判明。実際にモデルはあったのでしょうか?イメージの中で描かれたのでしょうか?

そういえば下記の、室内から夜景を撮影する時、部屋の内部がガラスに映らないように、ライトを落としたこと、思いだしました。

 

光の移ろい・・・・
レストランで光の変化を撮影することができませんでしたが、こちらは部屋からの景色と変化。 f:id:korokoroblog:20180815202540p:plain

写真出典:https://tabelog.com/rvwr/000183099/rvwdtl/B112925544/

 

場所は違うかもしれないけど、私も似たような経験していると思って強く惹かれました。

 

〇水と空、宇宙、境界のない世界

 VOKKAの記事の写真は小さく、わかりにくかったので、大きな写真で再現

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▲水面、映り込む木々、蓮、周囲の草・・・ そして空、雲。雲はいったいどこに存在しているのでしょう。蓮もまた雲のように見えます。そこに、鯉(?)泳いできました。それまで曖昧だった境界が崩れ、水中が明確になりました。

 

 f:id:korokoroblog:20180815215314p:plain▲雲がなくなり、木々の映り込みがなくなると、どこまでが水中なのか、空なのかわからなくなりました。どこまでも深く、吸い込まれそうになります。そして空と宇宙がつながり、水底ともともつながったと感じさせらます。   

 

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▲水底か空か、宇宙なのか、境界が判らなくなっていたところに、一匹のアメンボがスイスイと泳いできました。水の輪を描き残します。それまでの垂直方向への広がりを断ち切って、ここが水面なんだよ… と教えてくれました。水面という面が浮かびあがりました。

モネの描きたかった世界が見えた気がしました。

 
 

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鈴木理策 《水鏡 14, WM-77》(左) 《水鏡 14, WM-79(右)》2014年 発色現象方式印画
 
【ニコ生】会場では気づきませんでしたが、こちらの写真にもアメンボウが映っていたことを知りました。
 
 
 
 
f:id:korokoroblog:20180815224154p:plain西洋美術館蔵(2018,)f:id:korokoroblog:20180815224847p:plain

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 《睡蓮》部分 

https://www.photojoiner.net/image/9Gvab3Ne

 

 モネの庭は仕事の面だけでなく、食の部分でも、いろいろな示唆を与えてくれました。

  ⇒心に残る素敵な接客の思い出を集めてみましたみました

    上記の「ロアゾ・ブルー」にて

 

 

■モネの影響を否定

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小野耕石《波絵》2017年  

【ニコ生】モネの影響について、そうなのかな・・・・ という反応があったというお話は伺っていましたが、それぞれの心によぎるものは? なんて思いながら想像していました。どの作品がそれにあたるんだろう・・・・と思いながら。

こちらの作家は、明確に否定をされ、「モネ、好きでもないですから」ときっぱりおっしゃったそう。

そんなお話も伺えるのがニコ生の面白さです。

 

参考: 美術の窓 モネ特集です - BLOG - 小野耕石 Official site

   東京新聞:<出展作家の視点>(5)「波絵」 移りゆく風景 匂い立つ人間美:

   モネ それからの100年:イベント情報(TOKYO Web)

 

 

■モネの霧 コレクション 

ウォータールー橋、ロンドン 1902年  西洋美術館

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西洋美術館 2017.12.1撮影 

 

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西洋美術館 2017.4.13撮影

 

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西洋美術館 2018.7.28

この絵は、西洋美術館に行く度に撮影してるみたい・・・・(笑)

 

ポーラ美術館 2018.3.24

 

【ニコ生】私の好きな霧の絵。フランスには霧はなく、イギリスの絵であること。霧の立ちこめやすい気象条件の場所。霧雨が降る町。このモヤは水蒸気と理解していました。

ところが、PM2.5のようなもの・・・・という指摘に、そうでした。この時代、産業革命がおきていたという時代背景と結びつきました。

そういえば、霧の都、ロンドン。この霧はいわゆる霧ではないという話、聞いたことあるような気がしてきました。

絵画はその時代を表すということを改めて・・・・ ロンドンの霧。ロンドンのどんな地形が霧を発生させるのかな? とふとよぎりながら、そのままにしてると、こんな落とし穴が(笑)

 

参考:何ゆえ、ロンドンでは 冬に霧が発生しますの? - Onlineジャーニー

暖流によって温まった空気が偏西風に乗ってきて、湿った暖かい空気と、ヨーロッパ大陸の冷たい空気のぶつかりによる霧の発生。

 

■関連

gigazine.net