コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■ジョルジュ・ブラック展:メタモルフォーシスとは?

インターネットミュージアムにて、パナソニック汐留ミュージアムで行われているジョルジュ・ブラック展」のレポートが掲載されました。ご覧いただけましたら幸いです。


以下、レーポートでご紹介できなかった補足説明です。

 

 

メタモルフォーシスの意味・・・

・metamorphosis [英語]     メタモルフォーシス

Metamorphose [ドイツ語] メタモルフォーゼ:

・Metamorphōsēs  [ラテン語] メタモルポセス:

・metamorphoses [複数系]     メタモルフォーセス:

・μεταμορφώσεις, metamorphṓseis; [ギリシア語

 

これらは全て同議で、「変身」「変容」を意味します。

 

生物学では「変態」を意味します。
また、いわゆる性的な「変態」の意味も含んでいます。フランスや西洋で、メタモルフォーシスというと、このような意味にも受け取られるそうです。

 

◆変態(metamorphosis メタモルフォーシス

動物の正常な生育過程において形態を変えることを表す。昆虫類甲殻類などの節足動物に典型的なものが見られる。

 

◆メタモルフォーゼ

ジョルジュ・ブラックが1961年から1963年までに制作した一連の平面と立体の作品の総称。一連の作品群は、「変身物語」(古代ローマの詩人、オウィディウス)に登場する女神の変身をテーマとしています。さらに個々のモチーフが、様々に技法や素材を変えながら立体作品へと「変容」する様を伝えています。そして純粋美術から、装飾美術への形而上的な移ろいもまた、「メタモルフォーシス」の作品群が含む変容と言える。

   (引用:リリース情報より) 

 

◆変身物語(ラテン語Metamorphoses

古代ローマの詩人オウィディウスによるラテン文学の名作。神話原典のひとつである。『転身物語』(てんしんものがたり)や、原題のまま『メタモルポーセース』などとも呼ばれる。

15巻で構成。ギリシアローマ神話の登場人物たちが様々なもの(動物植物鉱物、更には星座など)に変身してゆくエピソードを集めた物語となっている。

    (引用:wikiphedhia) 

 

参考:変身物語 (へんしんものがたり)とは【ピクシブ百科事典】

 

〇作品におけるメタモルフォーシス

ギリシア神話に登場する女神などのモチーフを、平面から(絵画・グワッシュリトグラフ)素材を変え(紙から陶磁器へ)、技法(ステンドグラス・タピストリー)を変えたりしながら、立体作品へと(陶器、ジュエリー・彫刻・室内装飾)「変容」し、純粋美術から装飾美術への形而上的な移ろいが見られる。

 

 

〇ブラックの目的

「すべての造形物の美化への挑戦」すること。美へのあくなき追及は、魅了された素材の美しさを、物質の本質に迫る理解によって、引き出されたデザイン。そして形にするための協力者との出会いと、任せる度量があったからこそ。さまざまな力の結集によって結実したものと思われます。

 

 

ジョルジュ・ブラックの「ブラック」は「黒」ではない

 
 

ジョルジュ・ブラックGeorges Braque)   
「Black」かに思ってしまうのですが「Braque」 今度、講演を行う「山田五郎」さんと、広報の方がお話をされていて、「ブラック」でなく「ブラーク」。タイトルを「ブラーク」にした方がいいのでは? という話も出たそうですが、「ブラック」で浸透しているので、そのままにしたのだそう。そのあたりのお話、講演会で伺えるのではないでしょうか?

 

 

■変容のモチーフとして多く登場する「鳥」 

鳥は、いろいろな形でモチーフに用いられ表現されます。ギリシア神話の女神が鳥に変容する物語と重ねています。


作品は、平面(2次元)の紙からグワッシュリトグラフに。そして三次元の陶磁器。お皿、壺に変化します。さらには身につける3次元のものとしてジュエリーのモチーフに。これは触ることで、幸福感をもたらしています。そして「彫刻」や「室内装飾」のタピストリーへと「変容」していきました。

  

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 図録より

 

14 ベリアスとネレウス リトグラフ 紙  ?年
20 青い鳥       リトグラフ 紙  ?年
19 エロスとプシュケ  リトグラフ 紙  ?年
30 ぺリアスとネレウス リトグラフ 金箔 ?年 
33 ぺリアスとネレウス 陶器       ?年
42 ぺリアスとネレウス 陶器       ?年
84 青い鳥       ブロンズ     ?年
92 ぺリアスとネレウス モザイク     ?年
101 ぺリアスとネレウス タピストリー   ?年 

5 青い鳥    グワッシュ 紙 1963年

 

 

そして最後の絶筆がこちら。

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≪青い鳥、ピカソへのオマージュ≫ 1963年 グワッシュ紙 

 

ピカソへのオマージュとして描かれたグワッシュ画です。

 

 

■立体から平面へ原点回帰?

平面から三次元に変容をし、脱皮を繰り返してしていましたが、最後、絶筆の作品は2次元のグワッシュ画に戻りました。

原点回帰、だったのでしょうか? 

 

 

〇ポーラ美術館で原点回帰したと語るアーティストと出会う。

偶然にも、ポーラ美術館で行われた、飯沼珠美-建築の瞬間 アーティストトークでも作品は、原点回帰したというお話がありました。

 

上、2枚が原点となる写真

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下が現在の写真

同じ「原点」に戻ったとしても、今と昔の「原点」は違うはず。その違いが気になりました。その答えは、最初の原点は「内から外」へ向かって見た建物。今は回り回って「外から内へ」向かって見る建物なのだそう。

 

ジョルジュブラック絶筆が「原点回帰」だとすれば、下絵として描いていいたグワッシュ画と何が違うのでしょうか?

 

 

■展示構成

「第1章 メタモルフォーシス 平面」で紹介されるグワッシュ画。これらは、その後の立体作品が作り出される下絵となります。

 

そのグワッシュ画の冒頭に、絶筆、ピカソへのオマージュが展示されています。

 

注意をして見ないと、絶筆画は、立体への下絵のグワッシュ画の中に紛れて、気づかず通り過ぎてしまうと思われます。「絶筆」も、同じグワッシュ画の中に埋没してしまうのか。あるいは、似て非なるものとして、認識されるのか‥‥

 

 

 

■作品の制作期間 

ジョルジュ・ブラックの生没年は、1882~1963年 81歳没。晩年3年間をスケールで示すとこんな感じになります。

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今回、展示されている作品は、最後のたった3年間に凝縮されたものです。晩年の3年という短い時間の中で、平面から立体へ変容しました。変容の元になったグワッシュ画は、前半、集中して一気に描かれていたのでしょうか? 立体へ変容する過程は、どのような変遷をたどったのでしょう。制昨年を追ってみようと思ったのですが‥‥ 今回、展示されている作品の多くが、制作年がわからないものが多いことをあとになって理解しました。

 

 

■燃え尽きる前の再燃?

こうしてみると、ジョルジュ・ブラックは最後、人生を疾走するように駆け抜けて、天に羽ばたいていったように感じられます。生き急いだようでもあります。もしかしたら死期を悟っていて、あふれ出る創作熱を、生きた証として全て出し切ろうとしたのかも。様々な職人たちに制作を振って、指示に回り、尽きることのないデザインを全て出し切ろうとしたのかもしれません。 

 

アーティストには2つのタイプがいるように思います。制作に専念し作品を作り出す人と、プロデュース側に立ち、采配を奮う人。工芸の世界では、エミール・ガレがそうだったように、ブラックもデザインと指示に徹して、より多くの作品を残そうとしたのかも・・・

日本でも琳派本阿弥光悦という名プロデューサーがいました。マネジメント能力にも長けていたのかもしれません。

 

 

■作品は生き物?

メタモル―フォーシスには「変態」という意味があります。芋虫がサナギにそして蝶へと形態を変化させるように、作品も生き物として、捉えることができるように思います。

 

ビデオで見た、「絵画はモノだ」という言葉が印象に残っています。砂を混ぜてみたりして、触ってその質感を感じさせる。その先に立体へと組み立てていくというプロセスを踏んだようです。所詮は「もの」だというところからの展開に興味があります。

 

画家の後半戦から知るというめずらしいパターンです。今後、フォービズム、キュビズム、主題研究という時代を経たというジョルジュ・ブラックの前半の長い長い時代を追々、作品との出会いを通して追っていけたらと思います。

 

 

■ブラックの変容から、過去の変容、未来の変容 

 

ジョルジュ・ブラックの変容に触れ、 今の自分も、過去の変容によって存在していることに気づかされました。すっかり埋もれて忘れ去られていた芋虫やサナギの時代。人は、変わることができる。でもそんなに大きく変われるものではないのかもしれません。

しかし、気づかぬうちに大きく変わっていたこと。時代を経て振り返った時に、見えてきたり‥‥ これからの変容はいかに?

 

 

2章 メタモルフォーシス 陶磁器

3章 メタモルフォーシス ジュエリー

4章 メタモルフォーシス 彫刻

5章 メタモルフォーシス 室内装飾

 

 

 

■アート鑑賞会参加

【Classyアート鑑賞会 vol.4】『ジョルジュ・ブラック展』アフターレポート! | ARTを見て、ARTを知って、ARTに恋をして

 

上記の鑑賞会に参加しました。ジョルジュブラックってどんな人か、どんな作品があるのか全く知らなかったのですが、キュビズムの人というので、キュビズムの勉強のため訪れました。ところが、展覧会は、キュビズム時代の作品はほとんどなく晩年の立体作品・・・・・ 

だったのですが、鑑賞前にキュビズムについて、ざっくりと解説があったので、概要が見えてきました。ブラックの前半生の空白部分、これから徐々に埋めることにして‥‥

鑑賞後、「メタモルフォーシスについてどう感じたか」「気に入った作品」などそれぞれに発表(?)して、いろいろな見方に、一同、なるほど、なるほどの感心しきり。

見学中は、なぜジョルジュブラックは、そんなに有名になれなかったのか。最晩年の作品についてや、グワッシュ画の制作順などそれぞれに、話題にしながら、鑑賞をしました。

初見で人はどう見るのか・・・ 予備知識のあるなしの違いもわかりました。