コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■光琳と乾山:恒例展示《燕子花図屏風》のデザイン性をやっと理解(2018)

根津美術館で行われている光琳と乾山」 会期は2018年5月13日まで。一週間を切りました。庭のカキツバタも見ごろを迎えているようです。《燕子花図屏風》デザイン性が高いと言われていますが、その意味が3回目にしてやっとわかりました。

*写真の撮影、掲載は、主催者の許可を得て掲載しております。

 

 

■《燕子花図屏風》はデザイン的に優れた作品

毎年恒例展示される《燕子花図屏風》を見るのは今年で3回目。

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燕子花図屏風 尾形光琳筆 紙本金地着色 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館 

 

始めて見た時は、デザインがパターンで描かれているという話を追うのが精いっぱい。どこにそのパターンがあるのか探すことに集中し、それを確認しておしまい。

ニッポンの国宝100より 

この屏風は、デザイン的に優れた作品雁金屋という呉服商の光琳が、パターン 型紙を使って描いたということに大きな意味がある。それを聞いて、それがなぜ、斬新なのかがイマイチ理解できていませんでした。しかし「とにかくこの屏風は、デザイン的に優れた屏風である」ということを、言葉の上で理解しインプットしていたようです。

 

内心、色も3種類だけ、パターンで描かれているから、代り映えしない。変化がないと思っていました。そのマイナスに思えることも、デザインと捉えれば、すばらしいってことなんだと自分に言い聞かせていたように思います。

 

その後、歴史を理解するようになって初めて、着物の型紙を使って絵を描くことが、いかに斬新であるかを理解できるようになりました。パターンで描く、型紙で描くという手法を絵に取り入れるというのは画期的なことだったのです。 

 

 

 

■非の打ちどころのないデザイン構成

構図も見事と言われています。その意味もよくわからず、こういうのが、構図として「すばらしい」というのだと、納得させていました。

 

しかし、2018年、今年始めて、真の意味で、この構図がいかにすばらしいかを自分で感じることができました。

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国宝 燕子花図屏風(右隻)尾形光琳筆 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館

 

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国宝 燕子花図屏風(右隻)尾形光琳筆 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館

 

 

■《八橋図》によって理解に至る?

それは、『八橋図』六曲屏風二隻を見て感じたことでもありました。

↑ wikiphedhiaより

《燕子花図屏風》と《八橋図》どちらが先に描かれたのか‥‥ 当然、この《八橋図》が先に違いないと思いました。「八橋」を描き、つぎにそれをそぎ落として洗練させたのが《燕子花図屏風》。燕子花も《八橋図》は密にびっしり描かれています。《八橋図》を見ていると、数で勝負! 描けばいい・・・という印象。これはないでしょ! と思っている自分にちょっとびっくり。

 

《八橋図》に比べたら、《燕子花図屏風》の品のよいことこの上なし! 

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国宝 燕子花図屏風 尾形光琳筆 6曲1双 紙本金地着色 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館

 

過不足なく最小限までそぎ落とした燕子花を、絶妙なバランスで配置。この構図の他にはあり得ない! 左隻と右隻で近景、遠景が描かれていたのです。左隻の根本は見えなくすることで大地の広がりを感じさせられます。その左隻と右隻をつなぐように中央部に燕子花の葉を描く心にくさ。そして金だけで単調と思っていた背景は、水面を表しており、光を受けて輝く様を表していた。ということなどが見えてきました。

 

 

■すばらしさを解説することについて

よく「デザイン的」「デザイン性」という言葉が使われますが、それが何を意味しているのか、どうも理解できませんでした。今回、その意味が、とてもよく理解ができるように変化しているのを感じました。

構図的にも素晴らしい‥‥ と感じることができるようになるには、数を見ることが必要だということも。

「構図が素晴らしい」という解説をよく耳にしました。しかし「どこがどうなっているから素晴らしいんだ」ということを説明してくれないと、そんなのわからないじゃない! とずっと思ってきました。

しかし、《燕子花図屏風》の構図が素晴らしいことがわかって、それをどう説明したらよいかと考えても、説明ができないのです(笑) 理解するものではなく、感じるものという意味もやっとわかりました。

始めての人にもわかるように、解説ができることが大事。と思っていたのですが、言葉で表せない感覚的なものがあって、それを自分で感じ取っていくことも大事なんだなぁ・・・と。

 

 

■制作年の妙 《燕子花図屏風》が先?

ところが・・・・ 
制作年は、《燕子花図屏風》が先で、《八橋図》が10年後に描いたと考えられるといいます。そんなわけがあるはずない! にわかに信じがたい思いで納得ができません。

 

そこに橋本麻里さんのこんなコメントを拝見しました。

 10年を経て、あらためて「橋」を描き加えた光琳の意図は、まだ明らかになっていない。ただ個人的には、ものわかりの悪い、しかし断れない筋のクライアントから、「もっとわかりやすく」「ちゃんと橋も入れて描いて」という注文があり、光琳が「わかってねーな、花だけってのがカッコいいのに」と苦虫をかみつぶしながら描いたのが《八橋図》だった、という下世話な妄想を押さえきれない。 

出典:(3ページ目)誰もが知っている国宝、燕子花図に100年の奇跡|橋本麻里の「この美術展を見逃すな!」|CREA WEB(クレア ウェブ)

 

これだ! って思いました。絵師は逆行することだってある! あるいは、本意ではないけども、求めに応じて描くこともある。燕子花もいっぱい描いてあげよう。いっぱい咲いていた方が、豪華で、受けがいいだろう。お得感もあるし?(笑) 

 

絵師は、パトロンあってのもの。光琳といえども、パトロンのご機嫌伺いはせざる得なかったということでしょうか?

 

 

■《燕子花図屏風》への賛美の言葉の数々

「リズミカル」「独特のリズム」
「メロディーを奏でる」「メロディーを繰り返す」「同じメロディーを変化」
「音楽」
「躍動感」「繰り返し」「構図が持つリズム」「構図の妙」
「モダン」「大胆な意匠」「斬新なアイデア」「幾何学的」
「卓越したデザイン」「図案化された形状」「見事な意匠」
「プロダクトデザイン」「グラフィック」「ジグザグの幾何学線」
「雁金屋」「高級呉服店」「着物」「着物熟知」
「型紙の応用」「型紙の技法」「スタンプと違う量感」
「シンプル」「金・青・緑の3色だけ」「写実でなく装飾」
「絶妙な間」「絶妙な余白」  

 

これまで、これらの言葉の数々は、言葉上の意味として理解してきました。しかし、3回目にしてやっと今年、その意味が腑に落ちた気がしています。心の底からこの屏風のデザイン性を理解して味わうことができるようになりました。

デザインて何? ずっとわからなかったのですが、なんとなくみえてきた気がしています。

大観のフライヤーも、デザインを理解するのに影響したかも

 →https://twitter.com/korokoro_art/status/987681857083916288

 →参考:2018-Pe-20.デザイン入門のスクーリング - @マークぐるりん

 

 

■全方向からの鑑賞に耐える構図

そして、今年わかったのは、このデザイン配置は、一面的ではないということなのです。屏風のどこの角度から見ても構成が様になっているのです。そんな芸当ができるものなのでしょうか? 全方向性を持って描かれていた屏風。《燕子花図屏風》で画像検索をすると、写真撮影された画像を見ることができますが、そのどれもが、しっくりおさまっています。

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この屏風を対面に置いて、その間で見たとしたら… そんな想像力を働かせてみるという面白さを、東博で行われている「つながる日本の美術」で知りました。また来年に向けて鑑賞のお楽しみが一つ増えました。

 

 

■ニッポンの国宝100より

〇屏風の折りによる遠近

ニッポンの国宝100 Vol3より 

始めてこの屏風を見た時に感じていたこと。その時は、屏風の折という構造と、それにあわせて描かれる絵の妙に目が向いていました。ここにあるように、屏風の出っ張ったところ(出オゼ)には、燕子花が飛び出すように書かれていて、凹んだところ(入オゼ)には、奥に向かうように描かれている‥ と思いながら見ていたなぁ…とこの図を見て思い出しました。

ところが、《燕子花図屏風》を最初に見た時の印象の記録がされていませんでした。その時に同時展示されていた《紅白梅図屏風》の方に気持ちが向いていて、燕子花どころではなかったようです。

 

 

〇ベタ塗りと思っていた青の秘密? 

そして今年のもう一つの発見は、青は単調ではなかったということ。 

ニッポンの国宝100 Vol3より  

こんなにいろいろな青が使われていたことにこれまで、全く気付いていませんでした。

群青・・・藍銅鉱(らんどうこう)アズライト
緑青・・・孔雀石(くじゃくいし)マラカイト

上記のいわば宝石とも言える鉱物を砕いて描いています。鉱石は2種類ですが青色は何種類もあります。それは鉱石の砕き方、その粒子の大きさで色の出方が変化するため、これだけのバリエーションある色が出せるのでした。一見、単調な青と見せておきながら、近づいて見ると深さに驚かされるというしかけがあったのでした。

 

なぜ、近寄ってみることをしなかったのか‥‥ それは、この屏風が「デザイン的」とあちこちで言われているため、引きの視線でしか見ていなかったからだったのです。そのことの詳細は、こちらに‥‥

 ⇒ ■光琳と乾山 ー芸術家兄弟・響き合う美意識― 恒例展示から見えてくること

 

 

金の部分も、ただ金箔を張っただけの背景。単調・・・・って思っていました。しかし、そこにも、仕掛けがあったようです。これは来年のお楽しみに。

また、葉についても右隻左隻で色が違うらしいのです 今後のお楽しみ・・・

   ⇒「国宝燕子花図屏風」 | 弐代目・青い日記帳

 

琳派は「装飾性」という言葉も、これまでよくわかなかったことの一つです。少し、その意味を理解しかけてきた2018 《燕子花図屏風》の鑑賞でした。

 
 

■参考

誰もが知っている国宝、燕子花図に100年の奇跡|橋本麻里の「この美術展を見逃すな!」|CREA WEB(クレア ウェブ)

国宝「燕子花図屏風」に秘められた光琳の斬新すぎるアイデア【ニッポンの国宝ファイル5】 | サライ.jp|小学館の雑誌『サライ』公式サイト

ニッポンのお宝、お蔵出し|花と葉だけを大胆に描く《燕子花図屏風》。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

尾形光琳『燕子花(かきつばた)図屏風』に薫風を感じて!

 

「国宝燕子花図屏風」 | 弐代目・青い日記帳

 

河野元昭氏講演「燕子花図屏風の魅力をさぐる」 | 弐代目・青い日記帳