コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~

「あこがれの明清絵画」と題した展覧会が、10月28日から静嘉堂文庫美術館で始まりました。開催初日にブロガー内覧会とトークショーが行われ参加させていただきました。見どころや着目点などを紹介しつつ、自分の中国絵画との関わりメモも兼ねておりますのであしからず。

尚、掲載しました写真は、主催者の許可を得て撮影したものです。

 

 

■中国絵画ってとっつきにくくないですか? 

この企画の前の展示「~かおりを飾る~ 珠玉の香合・香炉展」に参加した時、次の展示は、「あこがれの明清絵画」と聞いて、中国絵画かぁ… よくわからないのよね。と感じたというのが正直なところでした。でも、これを機会に中国絵画に親しもうと、予習も兼ねながら、東博の本館や、東洋館の中国絵画のコーナーを少しずつ見るよう心掛けていました。

 

狩野派と深いかかわりのある中国絵画

そんな中で、思いもかけず中国絵画を身近に感じさせられたのがサントリー美術館の「狩野元信展」でした。日本の画壇で長きにわたり君臨してきた狩野派。そのステータスを築いたベースは、中国絵画だったということがわかりました。

【参考】

〇筆様 整理統合
〇「真」「行」「草」の三種の画体 
〇400年続く流派の基礎作り

〇サントリー美術館「天下を治めた絵師 狩野元信」 | インターネットミュージアム

 

この展示を見たことで、中国絵画がググッと近づいてきました。元信が参考にした中国の画家の名前を知ることとなりました。中国絵画のなじみにくさは、漢字の読みがわからない画家名。聞いたこともないということが大きな原因なのでは? と思われました。

 

東博本館 禅と水墨画―鎌倉~室町

東博の本館では2017年10月3日(火) ~ 2017年11月12日(日)に「水墨画と宗との関係」の展示がされていました。東京国立博物館 - 展示 日本美術(本館) 禅と水墨画―鎌倉~室町 作品リスト

またこの展示に関連した企画で「中世の水墨山水図」というギャラリートークにも参加しました。

 

〇東洋館4階

こちらの4階にも中国絵画のコーナーがあります。

上記のような展示が行われていました。

 

参考:

⇒【*1】 

 

 

雪舟は中国人?

水墨画の講座が東博の本館であり、日本と中国の関係、全体の流れを少し理解してきました。これまで雪舟って日本人なのか、中国人なのかよくわかってませんでした。描いているのは中国の景色のようだし、中国にいる人みたいだし… 

(そもそも、何で日本人は中国の景色や中国の故事、中国の人物を描くのかがよくわかりませんでした。ずっとそこが謎でした。)

雪舟が日本人なのか、中国人なのかよくわからなかったのは、中国に渡って中国で絵を学んでいたからだってことがやっとわかりました。周文も日本人だったんだ…と思ったら周文は中国人でした。

 

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周文はさすがに中国人だと思っていたのですが、この系譜を見て、日本人だったんだ…って思っていたのでした。

 

中国絵画は、はっきり言ってそんな程度の知識しかありません。そこからの、明清絵画鑑賞の始まり始まりです(笑)

 

〇国宝展の中国絵画

ブロガー内覧会の翌日から京博の国宝展に行きました。国宝展でも中国絵画のコーナーがありました。2期、3期と展示替えが行われたそのコーナーを通して見ると、中国の日本への影響がなどが見えてくるようになってきました。これまでの中国画の見方とは明らかに変化しているのを感じました。

 

長い前置きの「中国絵画と私」状態になっておりますが、ここからが内覧会レポートです。 

 

トークショー

河野元昭館長と東京大学東洋文化研究所の板倉聖哲先生。そして司会が、青い日記帳、中村氏によるトークショーが行われました。

 

開催の前日、館長は饒舌館長のブログでこんなことを書かれておりました。

 ⇒饒舌館長: 静嘉堂文庫美術館「あこがれの明清絵画」1

恒例のギャラリートークは、担当キューレーターがやるものと決まっているわけですが、専門の近世絵画と同じくらいに中国絵画が大好きという館長が、「俺にやらせろ!!」とシャシャリ出てきたものですから、みんな「??」と思いつつも、黙っているしか仕方ありません。

明日は続いてブロガー内覧会です。カリスマ・ブロガー中村剛士さんとご存じ東大・板倉聖哲さんの対談に、これまた「俺も入れろ!!」とばかりに、饒舌館長が乗り込む予定のトークが、いかなるものになるか、天のみぞ知るというヤツです(!?)

これは期待大! 楽しいトークショーが繰り広げられそうです。ところが・・・・・・  違うバスに乗ってしまったという不覚。肝心のトークショーに遅れてしまいました。高島屋の前から乗ったのですが、乗る前には静嘉堂に行くかを運転手さんにちゃんと確認したのですが‥‥)

 

トークは「内乱会」さながらだったらしいことが、他のブロガーレポートから伝わってきます。残念ながら内容はわかりません。しかし、その様子を丁寧にレポートして下さっている方がいらっしゃいましたのでご紹介させていただいます。

   〇静嘉堂文庫美術館「あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~」展:ぶんじんのおはなし:So-netブログ

 

トークが終わってから、板倉先生によるギャラリートークが始まります。「今度は、一人でおもいっきりお話できますから‥‥」とお声かけがありました。そのことからも熱血バトルトークが繰り広げられていたことが想像されます。

 

 

■デジャヴな一枚 

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                      《花鳥図》明時代 16世紀

 

この右の絵、どこかで見た気がするなぁ‥‥ 確かサントリー美術館だったような‥‥ と思ったら、板倉先生よりサントリー美術館にも同様の展示があるとのお話。私は呂紀(りょき)の作品を思い浮かべていました。これです。 

 

内覧会中は時間がないので解説は読みません。写真に納めて後で確認。写真を整理していたら、呂紀(りょき)の系統をなしているとありました。大当たり~!

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中国ではこのようなスタイルの絵が流行っていたのでしょう。そしてこれらの絵を元信を初めとする狩野派がお手本としていたようです。うろ覚えなのですが、《四季花鳥図》を参考に描いた元信様式の絵。フェノロサ園城寺に寄贈したという絵と似ているなと思っていたので、それを確認しつつ、元信の《四季花鳥図》を見たいと思っていました。

また同じテーマでコラボしている泉屋博古館分館の「典雅と奇想」の内覧会、そして館長の「ネコ好き館長による猫の絵画史」 にも参加したかったのですが、体調を崩して断念。関連テーマの企画を同時に見ると、あれはこういうことだったのか。と一つのこともいろいろな角度からとらえられるようになり、より理解が深まります。

 

今回、初のコラボ企画とのこと。今後も、セミナーなど連携企画講演があるので注目です。 

 

 

若冲と明清絵画の関係 

今回の企画のフライヤーの右肩に注目!                 ↓

 

若冲もあこがれたんだよ~ とあえて配したようなコピーです。

 

それはどういうことなのか。ということについては、「若冲の明清絵画学習」というパネル解説があり、いろいろな研究者の見解が書かれています。

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若冲と明清画のコロコロ考察

 

   若冲も夢中になった明清画 

 

このコピーを見て一枚の絵 ↓ を思い浮かべました。

今年のお正月、東博で見た屏風です。あら、若冲の屏風が展示されてる! と思ったら、佚山黙隠という人が描いた絵でした。だれですか? それ‥‥「いつさんもくいん」って読むんですって。そしてこの絵は、沈南蘋(しんなんぴん)に学んだって書かれていました。

 

ってことはよ‥‥ 若冲も、沈南蘋を参考にしてるってことじゃない! この屏風、どう見ても、若冲にしか見えません。ところが、聞いたこともないような人が描いていました。その人は、沈南蘋をお手本にしていたのです。 

 

2016年、若冲のあの大行列に並んで感じたのは、この人は、オリジナリティーに長けた人で、その当時、誰も描かなかった絵を次々に編み出した人。こんな絵を描いちゃう若冲ってやっぱりすごい! って思ってました。ところが、この屏風の正体がわかった瞬間、なんだ、若冲も人の子(笑)だったんだ。中国の絵を参考にして描いていたんじゃない!・・・って。

 

そして、この沈南蘋は、私、知ってるわ! サントリー美術館で行われた秋田蘭画の小田野直武展を調べている過程で登場した人。南蘋派の中心人物です。 

若冲や応挙と、小田野直武、沈南蘋・・・その前後関係や影響関係を表にまとめようと思って作成していたのですが、 https://tabelog.com/rvwr/000183099/diarydtl/145718/ 今、見ると沈南蘋はスルーされていました。やっぱり中国絵画はとっつきにくいと感じて後回しにしたことがわかります。

 

 

■明清絵画の岩は、あれだった!?

これは若冲の《菊花流水図》です。

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出典:菊花流水図:若冲動植綵絵 - 続 壺 齋 閑 話

下部のブルーの岩は、何でこんな色をしていて、こんな形なんだろう・・・って不思議に思っていました。でも、若冲の目にはそう映っているんだ‥‥って理解していたのです。ところが、これ ↓ を見たら、元ネタみつけ! って思いました。

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                ↑

やっぱりどんなに天才でも、何かを参考にしてそれを元にして、画風が確立するんだな・・・と思っていました。若冲は実は、中国の絵を参考にしていた‥‥  そんな話、あの若冲騒動の時、誰も語ってくれなかったじゃない! (若冲関連のテレビは、ほぼ見た見てました。書籍までは手が回ってませんでしたが、私はみつけちゃったぞ! みたいな(笑))

 

 

若冲の性表現と明清絵画

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若冲のこの絵の下の岩は男根を表しており、この絵に性表現が見られると語っていた研究者がいました。私はそうかなぁ・・・ なんかこじつけっぽいというか、新たな視点の提示ということで、無理無理にそういう解釈に持ち込んでいる感じがするなぁ・・・ 根拠がちょっと弱くない? って思いながら見ていました。

 

 

でも、この屏風を見た時は、それに見えなくはないかもって思わされて いました。f:id:korokoroblog:20171109134246p:plain

                ↑ 

 

そして、今回、これを見た瞬間、まさにあれだ! って思ったのでした。

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          ↑

そのものズバリに見えませんか?(笑)

 

板倉先生に伺ってみました。

若冲に対する評価はいろいろ変わっていて、変人とか、人とのかかわりを嫌う人とか、女性への興味がないことから・・・・ ところが最近になって、人の間に立っていろいろ尽力していたなど、とらえ方が代わってきているので、性的表現かどうかというと‥‥とのことで、先生と私、同じ解釈だ! って思いました。

 

そんなわけで明清絵画における性的表現も、あまりそういう見方はしていません‥‥ とのことでした。

  

そうでしたか‥‥ でも、アハ体験と同じで、一度、そのように見えてしまうと、それにしか見えなくなってしまうんです。みなさんはいかがでしょうか? そう見えてきませんか?

 

【追記】2017.12.02 「典雅と奇想」を見て

泉屋博古館分館で行われている明清絵画を見ました。こちらの展示は、明、清を網羅的に展示されています。奇岩の形態もさらにバリエーションがいっぱい。こうして一斉に並べてみると、アレに見えるっていう感覚は全くなくなりました。

 

たまたまそれを単独で見ると、それにしか見えない状態になってしまいますが、奇岩があふれると、そういうものなんだって見え方が変わります。板倉先生がおっしゃっていた「あまりそういう見方はしません」というのが理解できました。

 

 

 

 

■たらし込みは宗達オリジナル?

翌日から国宝展に行って、風神雷神図屏風を見る予定だったので、宗達がオリジナルと言われている「たらし込み」の技術は、本当に宗達のオリジナルなのか。中国にその技法はなかったのか。伺ってみました。

似た技法はあるとのこと。また、それと同じと思われる方法もあったそう。詳細を解説いただいたのですが、メモが取れず知識不足もあってあげていただいた例を留めることができませんでした。

 

では、宗達はそれを見ていたのか。自然発生的に同じ時期、同じようなことを思いついたということは、考えられないか? という疑問に対しては、この時代になると、交易もあり情報が入ってきていた。となると、見ていないということは考えにくいので、おそらく影響を受けているでしょうということでした。

 

 

■まとめ・感想

とっつきにくいと思っていた中国絵画、明清絵画ですが、改めてその影響力を見ていくと、これまで見てきた日本絵画の中に、そのエッセスがあることに気づかされます。すると日本絵画も面白くなるし、中国絵画も一人の画家を知ることで、その画業や功績、影響に触れ、広がっていくのを感じさせられます。

 

いつの時代も、どこの国においても、お手本となるものを、一度は、他に求めています。しかしそれをそのまま取り入れたりすることはせず、自分たちなりの解釈をして文化というものをそれぞれに作り上げてきた歴史があることがわかります。

 

 参考:■北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃

 

日本人は中国をお手本にしましたが、中国も日本の金碧画を参考にして、絹に金の糸を混ぜて光る絵を作成したらしいです。(中国は認めないようですが・・・)

お互い持ちつ持たれつなんだから、喧嘩なんてしてないで仲良くして、いいところをお互いにもらって、切磋琢磨していこうよ。そんなことを、明清絵画とそれを愛して模写した先人たちが語っているようでした。

 

 

■概要

〇展覧会名:あこがれの明清画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~

〇会場:静嘉堂文庫美術館

〇会期:2017年10月28日(土)~12月17日(日)

〇美術館HP:http://www.seikado.or.jp/

 

 

■参考

旅とアート、ときどきグルメ:「あこがれの明清絵画~日本が愛した中国絵画の名品たち~」静嘉堂文庫美術館

いぬのおなら

あこがれの明清絵画 ~ 日本が愛した中国絵画の名品たち ~ - この世はレースのようにやわらかい

あこがれの明清絵画~日本が愛した中国絵画の名品たち~内覧会&ギャラリートーク/静嘉堂文庫美術館 - アートをめぐる旅

あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち(静嘉堂文庫美術館) | Art Salon

静嘉堂文庫美術館「あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~」展:ぶんじんのおはなし:So-netブログ

あこがれの明清絵画 @静嘉堂文庫美術館 : Art & Bell by Tora

〇 美術の感想文を書いてみるっつ: 憧憬が新しい世界に導いてくれたの? あこがれの明清絵画~日本が愛した中国絵画の名品たち~ 静嘉堂美術館文庫 のブロガー内覧会に行ってきた!

 

■関連

                 エリアレポートに掲載 ←ここ

 ■あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~ ←関連

 

静嘉堂文庫美術館「あこがれの明清絵画」 | インターネットミュージアム

 

■脚注

*1:■中国書画精華ー日本人のまなざしー(2017.12.08追記)

東博 東洋館にて行われた中国書画展 2017.10.20 初見
少しは中国絵画も見るようになったし、わかるかな…と思って訪れましたがノックダウン。全然、わかりません。下記の解説の意味は分かるけども、登場する画家の名前が一切、わかりりません。 

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撮影したのは2枚だけ。
こういう雰囲気が好き。中国絵画はどうも強いという印象。琳派っぽい…と思ったけど、きっとこっちが先なんだろうな。

 

龍というモチーフは、自分の中でテーマになっているので、興味が惹かれます。さすが? でも友松の方がすごくない? 友松の名、中国まで轟いていたっていうし…

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(2017.10.20  この時に気になったもの この2つだけ…)

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