都内4美術館合同の2018年開催企画展発表の中で、訪れたことがなかったのが「東京ステーションギャラリー」 気になる企画もあったのですが、知らない画家ばかりで、一歩、足が進みませんでした。そこにはいろいろな思惑が?! 館長さんに直接、お話しを伺ってみました。
企画の狙いどころが、他館とちょっと違うと感じさせられました。そして、もしかしたら人が来ることを拒んでいるのではないだろうか‥‥ そんなことを感じさせられ、館長さんに伺ってみました。
■人が来ることを拒んでませんか?
「よく言われるんです」(やっぱり・・・・(笑))
「しかしそんなことは決してありません。集客もねらわなくてはいけないですから・・・・」
「ただ、この館の特徴として、立地はとてもいいのですが、入り口が、東京駅の丸の内北口のドーム内から入るんです。そこに若冲展のような行列を作ってしまうと駅に迷惑をかけてしまうので、人が並ぶような企画ができないんです。」
なるほど・・・・ 行列を作ってはいけない。そんな制限を持った美術館があったのです。そのため、企画はニッチ狙い。玄人さん受けはすこぶるよいそうです。終わってしまいましたが、不染銑展のようなあまり知られていない画家にスポットを当てることも、東京ステーションギャラリーならではの役割と考えていらっしゃるようです。
■うずもれた作家にスポットを当てるのが使命?
来年は「横山崋山」に注目。今こそ、再評価の時! 辻惟雄先生によれば「第二の若冲」と言われているそうです。若冲のような行列ができてしまうと館としては、困ってしまうわけですが、自由奔放な画風が特徴である横山崋山。それは、蕭白、狩野派、岸駒、呉春のいいとこどりをして、画壇の潮流にすり寄ることなく独自路線を歩いたとのこと。(どこか東京ステーションギャラリーと似ている気が・・・(笑))
横山大観、横山操と関係あるのかしら? と思ってwiki phedhiaを見たら、関係はないようでした。主要作品を見たら、驚いたことに海外にかなりの数、渡っているのです。それなのに日本人は、その名を知りません。
最近、美術界における名前ってなんだろう・・・・ と思い始めてきました。日本ではあまり知られていないのに海外の人の方がよく知っている。そんな画家にスポットがあてられるようになっている傾向があるような・・・・ そろそろネームバリューにとらわれない「美」の価値について考える時期に来ているということでしょうか?
■建築とはマテリアル 美術作品もマテリアル?
隈健吾氏による初の展覧会。隈氏曰く「建築とは物質だ」 この言葉にピンときました。最近、感じていたこと。それは「美術作品も物質だ」ということ。(⇒〇本質のとらえ方の違い)
隈氏の言葉に共感したことや、美術作品の伝来について、あれこれ言われても物の本質には影響しないと考えてしまうこと。美術界の本質と、本質のとらえ方がどうもずれているようで、それが理解されないジレンマを感じていました。質疑応答は雑談でもよいというお話だったので、これまで美術を見て感じていたことをお話させていただきました。
「隈さんも理系の方ですから同じようなとらえ方なのかもしれませんね。でも哲学、宇宙といった深いところまで知っていらっしゃって、すごい方です。」「美術は答えがないところが面白くて、それそ議論することが美術の人間は好きなんです」そんなお話を伺わせていただきました。
物事のとらえ方、本質のとらえ方の違い。そんなことに気づかさせてくれるのが「美術の作品の力」であることを感じながら・・・・
■他とは違う切り口でとらえた企画
有名な絵本作家の「いわさきちひろ」 絵本作家として取り上げられます。ほのぼのとした絵本の挿絵。しかしこれまで画家として紹介されることはありませんでした。画家としての表現、すばやい線の表し方、色の広げ方など、これまでの文脈を刷新させるという意気込みを強く感じられました。
甘い画風というのが苦手なのですが、技法を紹介となると、途端に興味が引き付けられます。絵本の挿絵と思っていた絵にどんな絵画技術があるのかとても楽しみです。
同様な企画の構成は、シャガールなどにも見られ、有名、人気画家も、東京ステーションギャラリーの手にかかると、変化球で投げられら作家の新しい面が見えてきます。
■朝の鑑賞会
最近注目されている、ビジネスマンのアート鑑賞による効用。
『エグゼクティブは美術館に集う「能力」を覚醒する美術館』という書籍があり、その中で、「ニューヨークでは、ビジネスパーソンが早朝のMoMA(ニューヨーク近代美術館)に集まって美術鑑賞をしている」ということが紹介されています。
この話は、ニューヨークの話で日本ではまだ実現されていないと聞いていたのですが、東京駅隣接という立地を生かして、開館前、館長自らギャラリートークを行っていることを知りました。ニューヨークのビジネスマンのように、出勤前に美術鑑賞をして、新たなイマジネーションの活性化を図る・・・ そんなスタイルがここから発信されていたのでした。
合同発表会の最後に、静嘉堂文庫美術館の河野元昭館長と、東京ステーションギャラリーの冨田章館長がご挨拶されていました。
河野館長が「いつも攻めてますね‥‥ 高倉健ににはびっくりしちゃたけど」に対して冨田館長は「うちはちょっと違うことをしていかないと・・・・」そんなご挨拶を交わされ、業界でも攻めの企画と思われている様子が伺えました。
ちょっと玄人向けの企画で隙間を狙う美術館。その攻めの企画が響くかどうか、試してみるのも面白そうです。