コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■狩野元信:四季花鳥図屏風(高精細画)

サントリー美術館の「天下を治めた絵師 狩野元信」で、きらびやかな金屏風が展示されていました。その金屏風は、ガラスケースには入っていません。どうやらレプリカのようですが、じっくり観察をしてみました。
 
 
 

 サントリー美術館の4階から3階の階段を降りたところに展示された屏風は露出展示されていました。

 
それによって、本物ではないんだな・・・・と思って鑑賞してしまいます。が、レプリカとわかっていても、本物だと思って見てみることにしています。本物だとしたら、どこがおかしいのか・・・ を観察してみることに。これは、例のキャノンの高精細画像? と思いながらも、その解説は見ずにしばらく観察をしていました。
 
 

■レプリカを先入観なしに観察

〇描いたかのような着色

本物だと思って見ようと思ってもどうしても、複製品なんだと思って見てしまいます。複製品なのに着色の微妙な加減が表現されています。これ、本当に描いているみたい。プリントだと思っていましたが、もしかしたら本当に描いているのかも‥‥ 複製品の中には、実際に描いたものもあります。これはプリントではなく、描かれたものなんだ・・・・ と思いました。ところが、描いたものとしてみると絵具の凹凸、立体感が全くなく平坦な感じがするのです。見ていて次第に混乱してきました。プリントなのか、描いた模写なのか・・・・

 

〇金箔部分は?

これがキャノンの高精細画だとしたら金の部分は、金箔が貼られているはずです。ところがこの金箔の光の反射が、均一的で、本当の金が貼られているとしたらもう少し、微妙な反射をしそうなんだけど‥‥ これは金箔なんだろうか‥‥ この複製品は、キャノンの高精細画とは別の手法の複製品ではないか・・・  そんなことを思いながら、答え合わせをしました(笑) キャノンの複製品でした。 

global.canon

 

〇本物を展示できなかったのは?

もともとは白鳳美術館が所有している作品だそう。

白鳳美術館で5月に展示が行われていたようです。今回、借りることができなかったのはその関係でしょうか? 他館に貸し出をしているという話も目にしました(⇒狩野元信展 - the Salon of Vertigo) 過去にサントリーで展示されたこともあった模様(⇒日本美術 来年の期待は‘狩野元信展’と‘雪村展’!: いづつやの文化記号

 

国宝・重文の展示について
 ⇒国宝・重要文化財の公開に関する取扱要項の制定について:文部科学省
 ⇒国宝・重文の公開制限緩和へ 刀剣など「長期耐えうる」:朝日新聞デジタル

  

〇技術の向上?

キャノンの印刷の技術の再現が、描いたとしか思えないようなところまでリアルに表現されていると思いました。ただ、どうしても不自然だったのが、岩絵の具を使って描いたとしては、その凹凸感やざらつき感がないのです。しかしそれを差し引いても、着色のリアルさは、本物そっくり。(本物を知りませんが‥‥)
 
最初からこれはレプリカ・・・・ と思ってしまうとそのようにしか見なくなりますが、それを取り払ってじっくり観察すると、いろいろ想像力が働きます。
 
 

■作品の意味・位置づけ

作品を見ながら、この展示の意味が理解できていませんでした。このレプリカはどういう作られ方をしたのか・・・・ そちらにばかり意識が向いて、元信の作品としてどういう位置づけなのか・・・・
 

〇土佐派との関係

元信が水墨画を元に狩野派の基礎を作り、さらに、やまと絵の土佐派の手法も取り入れその地位を確固たるものにした。という歴史を振り返ってみて、やっとこの屏風の意味がわかってきました。
 
元信が積極的に大和絵の領域に進出したことを示す、大画面金碧画の一例ということだったのでした。 
 

〇特徴 

水墨画中心だった狩野派が金地に極彩色の屏風
〇右隻:春~夏の変化
  松・桜・紅梅・牡丹の花木
  大画面の孔雀をはじめとした鷺・雀・鶉などの鳥
〇左隻:秋から冬の移り変わり
  紅葉した楓が描かれ、その下に積雪した笹・岩
 
〇漢画手法・・・・宋-明の中国絵画に由来。
   鳥の種類や形態、その構成、
   松の幹・枝・岩の筆法など。
〇やまと絵の画法:地面や雲形への金箔の使用、
         松葉・桜花・梅花・楓葉の描法
〇地面・土坡・雲に金箔(雲の周囲には金泥を盛り上げる)、
 
〇1549年 74歳作
〇次代の桃山時代で隆盛を見る金碧(きんぺき)障屏画が含まれていたことは注目
〇鮮やかな金彩を始め多彩な色使いへと画風を転換。
〇金彩や鮮やかな色使いはライバルである大和絵の手法そのもの。
 
 
金箔で表現された雲の回りに金泥で盛り上げがあるらしい。再訪時、要チェック。 
 
山水画をやまと絵風にするというのも斬新だったらしい?
 
 

■感想

やまと絵の特徴なども、まだなんとなくしかわかっていないので、急にきらびやかな屏風になった意味が、会場では今一つ、理解に及びませんでした。
 
見たあとに歴史や周辺の状況などを知って見るとこの屏風の意味もよくわかます。後半の展示も、なんだか関連性がないし、一貫性もないし、よくわからない。肝入りの《酒童子絵巻》も、急に色鮮やかで、それまでの洗練された画風と随分、変わっちゃってるし‥‥ やまと絵に倣うなら、霞表現は「金」を使うと思うのですが、ブルーを使ってるし‥‥ 「脈絡がないなぁ」なんて思っていたのですが、その脈絡のなさが、まさに元信の特徴だったのだと理解ができました。
 
この屏風を含め、再度、時代とその要請によって描かれた絵だってことをもう一度かみしめつつ、鑑賞するのを楽しみに・・・・

 

 

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