コロコロのアート 見て歩記&調べ歩記

美術鑑賞を通して感じたこと、考えたこと、調べたことを、過去と繋げて追記したりして変化を楽しむブログ 一枚の絵を深堀したり・・・ 

■静嘉堂文庫美術館:曜変天目茶碗を見た!(かおりを飾る〜 珠玉の香合・香炉展にて)

静嘉堂文庫美術館では「 かおりを飾る〜 珠玉の香合・香炉展」が行われています。茶の湯において香りを楽しむ道具に香炉、香合があります。それらの展示とともに曜変天目茶碗」が展示されています。ここは、花より団子、香合より曜変天目。ということでまずは、曜変天目茶碗について紹介したいと思います。

 

 

■ブロガー内覧会 トークショー 

 会期が始まった翌日、ブロガー内覧会が行われました。茶の湯における香りについて、そしてそこで使われていた道具について解説がありました。

 

お茶と香りの関係って? そして「香合」って何? 「香炉」って? と思っている人にも配慮され、ナビゲーターのTakさんが、ゲストのお二人、陶磁研究家 由美氏と、静嘉堂文庫美術館学芸員 長谷川祥子に話を振っていきます。そして、誰もが心に思っているだろうあのこと。「香合や香炉と、曜変天目茶碗は、どういう関係なのか。もしかして人寄せパンダ的な意味あい?」と、直球を投げ込みました。

 

 

〇なぜ今、曜変天目

「今回のテーマは、香合と香炉なので関係ないと思われるかも しれませんが、あの周辺に展示されている青磁の香炉と同時期のものという関連性があり、お茶道具としては深くつながっている」とのこと。また歴史的にみて、曜変天目が珍重されていた時代、唐物の趣味がここから始まったとう歴史的意味がある」という解説がありました。

 

(あの話題に乗じて、展示したと思われてるかもしれませんが)以前から展示することは計画されていたそうです。静嘉堂の看板作品ともいえる曜変天目茶碗は、(出し惜しみするのではなく)機会があれば展示する方向で考えているので、今年だとお茶と関係のテーマの今回になりましたと解説がありました。(  )は勝手にこちらで追加しております(笑)

 

そして、曜変天目茶碗の定義については、見ればわかる、ということでした。

 

 

〇展示の高さについて

また、東博では高くて見えないという指摘があったこと。これまで低く展示することは、考えないではなかったけれど、実践することはなかったそう。

今や曜変天目ディスコで子供も知ってる曜変天目車いすの人も子供たちも見えるよう70cmの高さに。ちなみに東博では、静嘉堂でいつも展示するよりも5センチ高い95cmだったのだそうです。今回は通常よりも20cm下げています。

 

何で、あんなに高く飾ってしまったのか・・・ それは、借り物を低く飾ることはできないという意識が働いているのだそうです。低く中まで見えるように飾るのは所有館だからこそできる展示

 

そういう事情があったんですね。私も中が見えないという不満を持っていたのですが、それは「美術品を神格化して、ありがたいものとして奉るため」だと理解していました。見せてあげるけど、ちょっとだけよ…みたいな出し惜しみ(笑)

 

ところが、そんな野暮なことを考えているわけではなったのでした。

 

光についての話はなかったように思いましたが、私は会期が始まったと同時にリリースされた、饒舌館長のブログを見ていました。

 

 

東博とは一味違う曜変天目茶碗の展示

 

饒舌館長: 静嘉堂文庫美術館「珠玉の香合・香炉展」1より

東京国立博物館の展示は台が高く、曜変がよく見えなかったとか、照明が弱く輝きが感じられなかったというツイートが少なくなかったと聞きましたので、わが館では台をぐっと低くしました。昨日、最終点検をしたときに、やや暗いように思ったので、館長の独断と偏見で、目いっぱいルックスを上げるよう指示しました。今回は「曜変天目」の魅力を、十二分に楽しんでいただけるものと確信しております。

 

展示の高さを低くしてくれてる!
照明のルクスを目いっぱい、館長の独断と偏見で指示してある!
これは、訪れる前から期待大です!

 

光があたってない・・・ 高さが高すぎる・・・ 同じことを感じていました。それが静嘉堂の展示では改善されている! という情報を得ていたのでとても楽しみにしていました。展示前から、いろいろに照明のことなどを想像して、まだ見ぬ静嘉堂曜変天目に思いをはせていたのでした。

 

 

■ 私のおすすめポイント

〇茶碗の底をじっくり観察

なかなか底を見る機会のない曜変天目です。まずは、内部の底をじっくり見ておくことは必須でしょう。そして黒い星の部分が、側面と違うことがわかります。それはなぜなんだろうと考えてみたり…

 

〇腰を25cm下げてみる

東博静嘉堂の展示の高さが違います。東博で見た人、見てない人もいると思いますが、展示は25cmの高さの差(東博95㎝ 静嘉堂70㎝)があります。ということは、25cm腰を低くすると東博での見え方に近づきます。その状態で周回してみると、東博で見た状態が再現ができます。

 

〇腰をさらに下げて側面を周回してみる

腰を目いっぱい下げて、側面だけを見ると、側面に模様はありませんが微妙な変化が見られます。

 

 

 

〇同じ位置で上下に移動させてみる

この見方が曜変の変化が顕著に見えると思いました。

 

〇離れてみる(ガラスケースの光の違いを見る)

茶碗から離れてみるとまた、別の妖艶な光り方をしていました。

 

そして近くにある他のケースの照明と比べてみると…… かなり煌々とライトが照らされていることがわかると思います。 

 

手前が曜変天目茶碗のガラスケースの光。奥が他の作品の光。館長さんがこんなにもめいっぱいルクスを最後にあげたというのがわかります。

     [曜変天目のライト]  別のケース

         ↓       ↓  

                         

というのは、ちょっとごまかしがあって、手前の光は、撮影の角度の影響でとても強くこちら側に光が漏れています。また距離によっても、光の届き方は違います。

 

ということで、反対側のケースから見たのがこちら・・・

            曜変天目のケース 

                ↓     

          ↑ 別のケース

奥が曜変天目茶碗のケースですが、この距離感でも光が明るいことがわかります。

 

(夏休み、子供向けイベントもありますが、お子さんと一緒に美術鑑賞しながら、「光は距離の二乗に反比例」するなんて法則を学んだり・・・(笑)曜変天目の神秘に触れながら理科のお勉強。後述の茶碗の重さと重心など、科学も学べそうです。)

 

 

東博には東博の見せ方があった?

東博でも御覧になっている方は、会場の様子がどんな展示だったか思いだしてみては? 展示の高さ、置かれていた台はどんな台だったか、そんなことから、それぞれの展示では何を見せようとしていたかが見えてきた気がします。メインに見せたい部分が違ったのかも・・・と思わされました。

 

東博での曜変天目茶碗は下記のようなガラスケースとライティングで展示されていました。 

出典:東京国立博物館 - 1089ブログ

 

↑ こちらでも展示の様子がわかります。

 

上記のような台にのせられていて、台にはライトが仕込まれており、側面がよくわかるような展示でした。そのため側面を見やすくするために高さもさらに高くして、わかりやすく強調していたのかもしれないとか・・・・?

 

 

〇近づいて拡大してみる

今度は近づいて、単眼鏡などを使って模様を拡大して観察してみると、黒い星の中に粒子のようなものが見えたり、黒の周りがきらきら虹のように見えたりしています。これを模様としてでなく、反応、現象としてとらえてみるとまた面白さが増します。

 

また、静嘉堂で売られている絵葉書と、色や光り方を比べてみるのも面白いです。なんでこんなに色が違うんのでしょうか?

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〇物理の反応ととらえてみる

物理に興味があれば、この茶碗の生成過程を、「干渉」「選択吸着」という原理でとらえてみると、違う側面が見えてきました。

 

ということで、茶碗を科学的に見た詳細は、こちらに書いていますので、ご興味がありましたら、ご覧いただけましたら幸いです。(どこまでが物理で、化学が含まれているのかよくわかっておりませんが・・・)

 

  ⇒■(2017/06/18)  /  [06/17] 静嘉堂文庫美術館:

 

↓ こちらは、東博で見たときに考察したもの

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曜変天目のレプリカ…ではありませんが

会場に長江惣吉氏が制作した茶碗があります。重量・形状を同じように作ってあります。土も同じ土が使われているとのこと。しかし、同じ重さだとしても重心によって持った感じは違うというのは面白いです。

 

鉄の100㎏ 綿の100kg  どちらが重いかというクイズがありますが、同じ重さであっても素材によっても感じ方が違います。今回は素材も同じにしてありますが、道具はどこに重心を置くかによっても重さの感じ方が違うという解説がありました。山登りのリュック。荷物の重心をどこにおくかで、重さの感じ方が変わります。美しさの中には「機能美」というものもありそうです。

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曜変天目茶椀 大解剖

 

 

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曜変天目茶碗から聞こえる声?

曜変天目の原理は、「選択と吸着」という原理であるらしいと、いろいろ自分で調べた結果、理解しました。詳細については、こちらに詳しく記載しております。(⇒■(2017/06/18)  /  [06/17] 静嘉堂文庫美術館:)(長江氏の曜変茶碗の制作原理とは違うようですが)この原理は、とても示唆に富んでいると思いました。

 

物理の反応において、様々な物質がある中から何を選びとり、何を吸収して形成されたのか。ということなのですが、それは、人の生き方にも通じているようにも思えます。

 

曜変天目茶碗のまわりにある様々な物質を「情報」に置き換えると今、曜変天目茶碗がおかれた状況に似ていないでしょうか? 周りを飛び交う様々な情報から何を選択し、どれを自分の中に吸収して取り込むか。それをどう形にしていくかを問われているのではないかと思ったのでした。

 

時代によって曜変天目茶碗の価値も変化してきました。そんな茶碗を今の時代に、私たちが見て、さらにいろいろな騒動も加わりそれらの情報とどう向き合っていくか。それを自分で考えてみて下さいと語り掛ける声が聞こえた気がしました。

 

 

曜変天目茶碗の定義は何か・・・・・

   「見ればわかる」

 

自分の目で判断する。それも、一つの真理なのかもしれません。 ぜひ、一度、本物も見て確かめてみてはいかがでしょうか?

 

 

■アクセス

静嘉堂文庫美術館は、ちょっとアクセスが不便。バス便、そして歩いていくときのルートをこちらで紹介しています。また、美術館だけでなく、庭園散策もなかなか趣がありますのでぜひ・・・

 

2017-06-16 ■静嘉堂文庫美術館:アクセス(バス&徒歩)と庭園散策

2017-06-17 ■静嘉堂文庫美術館:庭園散策(岩崎家玉川廟)

 

 

■ワークショップもあります

どうせ行くなら、何か催しのある時にすると一粒で2度おいしい・・・ 7月1日に匂い香りづくり体験のワークショップがあります。

 

       詳細はこちら⇒静嘉堂文庫美術館 | お知らせ

 

子供向けイベントもあります。周辺の自然は理科の自由研究の素材にもなりそうです。夏休み、親子一緒にでかけるのもいいのではないでしょうか? また、親子でメディアリテラシーについて考えるチャンスかも?

 

 

*写真撮影、掲載につきましては、主催者の了解を得ております。

 

 

 

■関連

これまでいろいろ飛びかう情報の中からどんな情報を取り込み、それらから自分で考えてきた足跡です。

〇コロコロのアート内「曜変天目茶碗」

静嘉堂関連 

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〇動画

幻の名碗 曜変天目に挑む - YouTube

  →それぞれの陶工の曜変天目へのチャレンジ
   作成方法、原理のとらえ方も違います。
   作り方は一つではない?
   人為的な効果を加えるか、加えないか
   そのあたりでまず分かれそうです。

    

鑑定団「曜変天目茶碗」 - YouTube (4:15あたり)

    →曜変天目茶碗は数百個に1個(出典不明)  

   意外にも出現率は大きいことを知りました。

 

〇饒舌館長のブログ

饒舌館長: 静嘉堂「曜変天目」1

饒舌館長: 静嘉堂「曜変天目」2

饒舌館長: 静嘉堂「曜変天目」3

饒舌館長: 静嘉堂「曜変天目」4

饒舌館長: 静嘉堂「曜変天目」5

饒舌館長: 静嘉堂「曜変天目」6

饒舌館長: 静嘉堂「曜変天目」7